第4話隣のとろろ

「これお母さんに、私といてくれる?」

「はい!」

 お隣さんからとろろを貰った舞と矢月はとろろを手にすると家へ入った。

「お母さん、これお隣さんから」

「あらあらっ。悪いわね。今度お礼とお返ししなくちゃね。倍返しで」

「お母さん、なんか怖い」

「冗談よ」

 言ってお母さんは笑った。

 小学生の舞と矢月は姉妹二人で話し合った。

「ねえ、そういえば山で自然薯がとれる場所があるんだってよ」

「それほんとう? じゃあそれを取ってお隣さんに返せば倍返し的な感じになるんじゃない? 自然薯ってお高いんでしょう?」

 矢月はテレビショッピングみたいに言った。

 そんなこんなで計画を練り、自然薯を探す旅に舞と矢月は山へ二人きりで出かけたのであった。

 山はうっそうと生い茂っていて、虫に刺されないように気を付けながら自然薯がある場所を探した。すると、「で、出た―お化けだ。とろろだ。とろろのお化けだー!」舞が言う。

 矢月は「きっと隣のとろろが痛い痛いって呪って出てきたんだわ。私たちに仕返しに来たんだわ。私たちは何も悪くない。悪いのはお隣さんよ」

 矢月が言うと、お化けが口を開いた。

「私はとろろのお化けではなくてとろろ妖精なの。あなたたちのとろろを思う気持ちが私に伝わって私がこうして出てきたってわけよ」

「でも、私たちが欲しいのは自然薯なの。ごめんね」

「とろろは総名称。自然薯も含まれているから安心して私が自然薯を与えてあげる」

「本当?」

「ええ、では授けるわね。じっとしてて」

「はい!」

 舞と矢月は返事をした。

「自然薯能力を二人に授ける!」

 お化けが言うと舞と矢月は光に包まれた。

「これであなたたちはとろろの能力者よ。あなたたちはとろろや自然薯を無限に出せるし、操ることも出来るの」

 舞は試しに念じると手から自然薯が出現した。

「う、うわあ」

 矢月も念じると手からとろろが出た。

「こ、これでお隣さんにお返しができるね。それに無人島に行っても飢えることもないし」

 無理やり笑う矢月。

「そうだね。そうだね。」

 舞もこくこくと頷く。

 舞が将来食料危機に悩む国民にとろろを分け与えるのは今は知る由もない。

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ホラー風連載 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann

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