第3話時間

「時間を繰り返している」

 気づいたのは今さっき、バナナを食べて出かけようと玄関を出たのだが、気づいたら食べていないバナナの場面にいたからだ。

「時間が繰り返すのがついに自分にもやってきた」

 何回かアニメなどでそういう光景は見たことがあったがまさか自分の身に同じことが起こるとは……しかし、いつかは抜け出せるだろう。雨がやがてやむように。

 しかし何度玄関を出てもバナナを食べる場面からやりなおし、バナナを俺は食べた。いい加減バナナにも飽きただろうと思いたいが、実は空腹の状態に戻っているので何度食べてもバナナはうまく感じた。かれこれ50回以上である。玄関をくぐった時点でループが繰り返されるらしいことだけはわかった。体の状態も元のままだ。トイレに行って玄関を出てループしてもトイレに行く前の体の状態である。しかし幸いな事に脳細胞だけは戻っていないらしく、記憶は維持できているという事は不幸中の幸いである。もし脳細胞まで、記憶まで戻っていたらループしていること自体、きづかないだろうから。そうして俺のループ生活が始まった。玄関を出るまでの間、バナナにチョコをつけたり、創作をして無限の時間を楽しみつつ、今後がどうなるかが不安で仕方がない。家にずっといてもまた日が過ぎればバナナ状態に戻るからだ。玄関がタイムワープの入り口になっているのかもしれない。と思い、バナナを玄関の外に投げ込んだがバナナはそのまま外へと出た。今度はバナナを頭にかぶせたまま玄関を出てみようと思った。次は家に出前を頼んでみよう、わくわくすると同時に一手一手が失われつつある恐怖を感じる俺であった。

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