第2話超能力犬。
「犬などは居ぬな」
犬嫌いの健四郎は廃墟に入り、肝試しを一人行っていた。
何故そんな事をしようと考えたというのは、健四郎がまだ青春時代を過ごしている思春期まっただ中だという事以外に理由は思いつかない。
廃墟の中はジメジメしていて埃っぽく、雑菌が繁殖しているような生乾きの臭いが辺りから漂っていた。
「っ!!!」
健四郎は目を見開いた。あまりに急な事だったからだ。
犬が目の前に飛び出してきたのだ。犬種はチワワだった。
犬嫌いの健四郎だが、チワワなら何とか耐えることが出来た。しかし、吠えられたり、向かってこられたらと考えたら背筋が凍る思いを感じ、廃墟探索を諦めかけようとしたその時、チワワが喋った。
「我が願いをかなえてやろう」
チワワが喋った!?
健四郎はこれが現実の事とは到底思えなくて、夢かと疑いほっぺをつねり、股間を触り、夢ではないと確信した。
「願いをかなえて下さるのですか?」
「そうだ。我は超能力を授かった犬である。ちなみに貴様が先ほど考えていた犬は居ぬなどというダジャレは我にはお見通しである」
「思考が読まれていた!?」
驚愕に打ちひしがれた健四郎。しかし、まだこれが現実とは到底思えなかったからつい、「チワワさん、チクワを下さい」などとダジャレを言ってしまった。
「なるほど。了解だ」
言うとチワワは消え、そこには一つのチクワが置かれていた。
「えっ、嘘でしょ。願い、もしかして一つだけ? 叶えて終わり?」
健四郎は自分のダジャレ思考を恨んだ。まさか本当に願いをかなえてくれるとは思ってもみなかったし、少し悪ふざけの軽い気持ちで願いを言ったからである。
健四郎はチクワを手に取りそれを食べた。
「美味い。美味いよ……。今まで食べたどんなチクワよりもおいしいよ。チワワさん」
健四郎は涙を流しながらつぶやき、家路へと帰った。
以来健四郎は自分の浅はかな願いを後悔し、悪夢にうなされ続けている。
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