銀河

草森ゆき

銀河

 泥を抱いた女が歩いてきた。産んだばかりの子供だと教えてくれたが、ぼたぼたと地面に落ちる黄土色の泥だった。私は触らせて欲しいと頼み、女は笑顔で快諾した。指先を沈めると生温かった。良かったねえ、と本当に嬉しそうな声で女が泥へと話し掛けた。途端に指へと絡まる泥が動いた。ぐるぐると、指先に纏わりついて確かに笑った。でも泥は落ち続けているしどんどん減った。女は地面に落ちた分を拾い集めはせず、掌で泥の表面を撫ぜた。退嬰だった。私は慌てて指先を引き抜き、ありがとうございましたと頭を下げた。

 最後に尋ねてみた。これからどこにいくんですかお子さんと。私の問いに女はしばし考えて、果てかなあと平坦な声で教えてくれた。

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銀河 草森ゆき @kusakuitai

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