いつもの光景
寺田香平
第1話 ただの日常
いつも通りの朝。いつも通りの朝ごはんを食べて、今日も変わり映えのしない仕事のために電車に乗る。
だが、いつもの時間になっても電車は来ない。僕が違和感を覚えていると駅内放送が答えを教えてくれる。
「現在、〇〇駅で人身事故が起きましたので電車の運転を見合わせております。」
僕はその放送で、漠然と人が死んだことを知る。各種SNSで調べてみると死んだのは中学3年生のようだ。
理由は受験の辛さか、いじめか、はたまた痴情の縺れか。想像は膨らむばかり。
死というのは日本でありふれている。自殺者数は2万件を超えたらしい。他の死亡理由も含めればどれ程の人が死んでいるのか。
線路を見る。正直、億劫な仕事なんてしたくない。生きていても退屈だ。
線路の向こう側を見ると、遅れていた電車が来たようだ。
俺はその電車にタイミングを合わせて線路に飛び込む。
微かな悲鳴と浮遊感、電車が当たった熱さを感じる。
(また電車が止まっちゃうな。)
僕が最期に思ったのはそんなこと。
こんな死が僕らの日常だ。日常には死が溢れている。
いつもの光景 寺田香平 @whkj
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