監獄
阿藤拓人
監獄
私の世界に他人はいらない。入ってくるな。出て行け。
おまえらのせいで私は今日も劣等感に苛まれる。
満足してるんだよ私は。
一人だけど、何一つやりたいことなんてないけど、熱意を持ってやるなんてないけど。
満足してるんだよ私は。
おまえらみんな死ね。
おまえらの幸せそうな顔が私を狂わせる。おまえらの満足そうな顔で私はぶれる。
おまえらのせいで私は満足できなくなる。
満足してるはずなんだよ私は。
おまえらさえいなければ。
「幸せは人それぞれ」なんて言葉嘘だ。
「リア充」とか「青春」とか「学歴」とか「ルックス」だとかもうこりごりなんだよ。
それが幸せだと謳ってるだよこの世界は。それが幸せでそうじゃないやつは不幸せなんだと教えられてきたんだよ私は。
私は現状維持がいい。
変化なんて望んでいない。
世界なんて怠惰と停滞で満ちていればいい。
どいつもこいつもがんばれがんばれとうるさい。
努力なんてしたくない。がんばりたくなんてない。
私を狂わせないでくれ。
才能があればよかったのに。努力すればすぐ結果がでるそんな生き物だったらよかったのに。
才能があっても努力してる?がんばってる?
なにふざけたこといってるんだこいつらは。
すぐ結果がでれば誰だってがんばれるんだよ。馬鹿が。そんな当たり前のことでそんな誇った顔できる人生が送りたかったよ。
才能があるからこその苦悩もある?
知らねぇよ阿呆が。才能があろうがなかろうが誰だって苦悩の一つや二つあるんだよ。
誰だって苦悩持ってるんだったら、才能があったほうお得じゃねぇかよ。
そんなくそみたいなことで私辛いんですみたいな顔できるイージーモードな人生がよかったよ私は。
・・・あぁなんで私はこんな風にしか考えられないんだよ。
ごめんなさい。あなたたちは悪くないのに。思っちゃうんです。
悩みも苦悩も人それぞれなんてことわかってるんです。
人によって耐えられる苦悩に違いがあるなんてことわかってるんです。
でもこう思っちゃう。こう考えちゃう。
醜い感情は止められない。
私は二人いるんです。
私はこんなこと考えたくないのに考えてしまう。
そんなことないと必死に否定してもそうだと言う感情が消えない。
私は二人いるんです。
やりたいことなんてない。いまの怠惰と停滞に満ちたこの生活に満足してるはずなのに、がんばってるやつを見ると、ぽっかり胸に穴が開く。
私は私で幸せなはずなのに、男女で話してるやつを見ると、胸に穴が開く。
あぁ私はそんなの見たくない。そんなの見てこんな虚無感を感じたくない。
他人なんて気にしない。そんな強さがほしい。
でも私は気にしてしまう。
他人の目を気にしろと。世界が私にそう教えこんでくる。
そういう風に教育されたんだもの。
学校なんてそうじゃないか。劣等感を植え付ける。
私はあそこで幸せのモデルケースを植え付けられた。
野球選手が他の野球選手に劣等感を抱くのは意味のあることなんだよ。
だってそれは力になり得るものだから。
でも私みたいななんにもしたくないのに、成功者面したやつのせいで私は胸に穴が開く。
それが良いことで、私はゴミかすだとそう言われた気がする。
本当は他人の目なんて気にしたくないのに。
こんな私だってたまに他人と話す。
うれしくなるときだってあるんだこんな私でも。楽しくなるときだってある。
幸せのモデルケースに近づけるんだって、うれしくなる。
でも駄目なんだよ。
私の楽しかったはずなのに。最後にはくそみたいな気持ちになる。
私の発言はおかしくなかったか、不快なさせなかったかそんなことを一人で考えてしまう。
こんなこと考えたくないのに、もう一人の私はそう考える。
他人と関わると楽しくても最終的にこうなる。
私は弱い人間だ。
がんばりたくなんてない。停滞していたい。でも他人の目が気になる。
今のままが幸せだ。だけど幸せのモデルケースに憧れる。
世間体もこんなくだらない価値観もすべてぶっ壊してくれるそんな出会いがしたい。
自分から動く勇気なんて持ってないけど。
私この先ずっと他人を意識せざる負えないこの監獄のような世界で生きていくのだろか。
誰か助けてくれ。誰とも関わりたくないけど。
他人は怖いんだ。
誰かから認められたい。
そして誰かから認めてもらったと心の底から信じたい。
停滞を望んでるくせにそう考えてしまうのだ。
監獄 阿藤拓人 @tekub
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます