【11月25日書籍発売記念SS】
『花茶が開くのを待ちながら』
――
ある日の昼下がり、池のほとりに建つ
「ねえ佳蓮、知ってた?
瞬間、佳蓮の大きな瞳がカッと見開く。
「なんですって?! どういうことですのお兄様!」
「だから香織の書物が作られて、建安の
「まああああ!」
佳蓮が顔を輝かせた。
「素敵ですわ! 香織のお料理指南書ですか? 買います! あたくしぜったい買いに走ります! お兄様、外出許可をくださいませ!」
食い気味の佳蓮に亮賢は苦笑する。
「落ち着いて佳蓮。外出許可はもちろん出すよ。だけどさ、買いに走らなくても印刷所から王城へ運んでもらえるよ? あと発売される書物は料理指南書というわけでもないみたいだよ」
「お料理指南書じゃないなら、なんですの?」
「さあ? そう言われてみると気になるなあ」
佳蓮がハッとする。
「もしかして! 香織に憧れる殿方からの熱望により香織の絵姿を集めた画集とか?! そんな破廉恥なこと許せませんわっ、ていうかわたくしだけに売ってほしいですわ!」
「今ちょっとおかしな発言が出てきたような……いや、画集じゃなかったよ」
「ええ?! ではもしかしてもしかすると香織の私的生活の暴露本とか?! いやあああ! 香織の私的生活情報なんて他の方々に漏らしたくないですわ! わたくしですら部分的にしか知らないというのに……!」
「部分的に知ってるんだ……ま、暴露本でもないけどね」
「ではなんなのです?!」
「それは買ってからのお楽しみじゃないかなあ」
「たしかにそうですわね! まずは書堂へ行かなくては!」
「だから印刷所から届けてもらうって……あ、ちなみに余や佳蓮のことは書かれていないらしい」
「それはちょっぴり寂しいですわね……」
「うん……」
亮賢と佳蓮はしみじみと白磁の茶器をのぞく。
「お、開いた」
「ですわね! 今日の花茶はいつもより綺麗に開きましたわ」
「それは
「え? その書物、香織が書いているのですか?」
「うん? そういえば……誰が書いてるんだっけ??」
二人は顔を見合わせたが、何気なく茶器に口をつけ目を見開く。
「「美味しーい!」」
温かな陽射しが降りそそぐ昼下がり、王と王女は舌にも目にも楽しい花茶をゆっくり堪能しましたとさ。
(おわり)
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読者様へ
いつも応援ありがとうございますm(__)m
来月の書籍発売記念SS、いかがでしたでしょうか。
亮賢も言っていたように、来月発売予定の書籍には残念ながら亮賢と佳蓮は出てきません。(^^;
二人が出てくる物語が本になる日は来るのか……それは!
こちらの売上にかかっております!
『転生厨師の彩食記 ~異世界おそうざい食堂へようこそ!~』上巻
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※上巻はAmazonなどで予約が開始しております。
メディアワークス文庫様のXで告知もしていただいておりますので、よろしければチェックしてみてくださいませ(*´艸`*)
※下巻は12月25日発売予定です。
近況ノートでもお知らせしましたが、コミカライズも決定しております。
また、改稿によりweb版とは違うストーリー展開もあり、web版を読んでくださった方にも初めての方にも楽しんでいただける内容となっております!
そして! なんといっても藤小豆先生のイラストで、香織や耀藍はもちろん物語世界がとても美しく再現されております!
ぜひぜひ、お手に取ってくださいませ♪
今後とも『異世界おそうざい食堂へようこそ!』改め『転生厨師の彩食記 ~異世界おそうざい食堂へようこそ!~』をよろしくお願いしますm(__)m
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