第10話 暗号解読……?
ラリアットと卵焼きの切れ端を食らったその朝、まだ少し痛む頭を擦りながら
「次からは作ってくれる日は事前に言って」と言われてしまったが、彼も幼馴染を焦られたい訳では無い。
お弁当の件はすごく喜んでくれたし、次もきっとチャレンジする日はあるだろう。その時はラリアットを食らわないように気をつけよう。
そんなことを思いつつ、自分のを出すついでに
「……ん?」
二人分ということもあって少し重めのそれを地面に置いた瞬間、中からいくらかの紙切れが飛び出してくる。
すぐに片付けようと拾い上げてみるが、ビリビリに破かれたらしきその紙が例の手紙と同じ紙を使っていることに気が付いて手を止めた。
今ある分では文脈が見えない。他にも紙切れがあるだろうと、悪いとは思いながらゴミ袋を漁って追加で何枚か見つけ出す。
『楽』『つ』『み』『ま』『し』『の』『に』『次』『休』
それぞれの紙には一文字ずつ書かれていて、並べ替えなければ何を示しているのか分かりそうにない。
『次の休み』という四文字は固定でいいだろう。となれば残る文字は―――――――。
「あれ、もう二枚落ちてる」
ふと拾い忘れがあることに気が付いて確認してみると、これも同じ紙を使った大きめの切れ端だ。ただ。
『次の休み』『楽に始末』
どう考えても物騒な内容であることは間違いない。始末する対象はおそらく凛斗だろう。
やっぱりこの家には自分を殺したがっている人物がいる。再確認であってもショックな事実に頭を抱えた彼は、ここで気がついてしまった。
先程拾った一文字ずつの切れ端、それを並べ替えてみると……。
『次の休み』『楽に始末』
『次の休み』『楽』『に』『し』『ま』『つ』
同じ内容になるということに。
どうして二枚あるのかは分からないが、きっと何度も書きたくなるくらいに恨んでいるということだろう。
ついさっき、お弁当を見てあんなに喜んでくれていた
どちらが書いていたとしても、人間不信になりそうなくらい難しい問題だ。
「……とりあえず、指紋と一緒に
困惑を上手く隠せる気はしないため、ゴミ出しを終えたらすぐに自宅へと戻って足早に学校へと向かう。
背後で名前を呼ぶ声がした気もするが、今の彼に振り返る余裕はなかった。
================================
「休みの日にわざわざ来たんですね」
「休み?!」
「今日は祝日です、授業はありませんよ」
図書室にて
通りで待っても誰も来ないし、彷徨った末に見つけたのが彼女だけだったわけである。
「八雲はどうしてここに?」
「図書室は休みでも空いていますから。先生の手伝いですよ」
「いいように使われてない?」
「そんなことはありません。ちゃんと仕事としてやっていますから」
「お給料があるってこと?」
「ここにいる間は飴が食べ放題なんです」
「……騙されて可哀想に」
「ぶん殴りますよ」
拳を握り締める彼女を宥めつつ、気になったので「今は飴食べてないの?」と聞くと、彼女は僅かに膨らんだ右頬をツンツンとして見せた。
「食べてますよ」
「どんな飴?」
「これです」
美涼はそう言って口を開けると、べーっと出した舌の上に乗った飴を見せてくれる。
凛斗としてはパッケージを見せて欲しいという意味で言ったのだが、見たところ舐めると色が変わるハロウィン用の飴らしい。
何はともあれ、舌を出す女の子はものすごく破廉恥だ。悪いことをしている気分になるので、さっさと口を閉じてもらった。
「凛斗さんも食べますか」
「そんなの間接キスになっちゃうよ」
「誰が今食べてるのをあげると言ったんですか。新しいやつですよ、この変態」
「あ、ごめん。ちょっと変な想像してた」
「それをサラッと言えるあなたが怖いです」
呆れたように頭を押える彼女から飴をひとつ貰い、それを口へ放り込む凛斗。
想像より何倍も美味しいソレに、これなら働かされてもいいかもしれないと思う彼であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます