第5話 感情の名 色づいた人生

放課後、俺は白金を連れてある喫茶店へといった。


 「俺はコーヒー飲むけど、白金は?」


 「じゃあ私はカフェオレで。」


注文を済ませ、商品が来るまで少し待った。そして、商品が届き一息ついてから 本題に入った。


 「悪いな今日は付き合ってもらって。」


 「ううん、大丈夫だよ。私こそごめんね。あんなことになって、睦月君に迷惑かけて。怒ってるよね。」


 「別に怒ってないよ。」


 「でも、ここ最近目も合わせてくれなかったし、ちょっと避けてたし。」


 「それはごめん。でも、あんな事されたら流石に意識せざるを得なかったしこんな感情は初めてだったからどうしたらいいかわからなくて。」


 「え?」


 「今までこんなに俺に絡んでくれるのは親父や会社の人以外じゃ白金が初めてだし、こんな気持ちになったのも初めてだったからこれがどんな感情かわからなかった。」


 「それから何日も考えたよ、これがどんな感情かを。今日はその答えを伝えるために付いてきてもらったの。」


白金は何も言わずに真剣な面持ちでこちらを見ていた。


 「俺は白金・・いや、梓のことが好きだよ。梓と一緒にいると心地よかった。だから、俺の隣にいてほしい。こんなめんどくさい俺でよかったら付き合ってくれませんか?」


顔から火が出るほど恥ずかしかった。それでも、この気持ちを伝えるのが最優先だと思った。梓の方を見ると、大粒の涙を流していた。


 「も、もちろんだよ。よかった、嫌われてなくて心配だったんだよ。睦月君、これからもよろしくお願いします。」


俺は思わず梓を抱きしめた。


その後、俺は白金社長に交際の報告と挨拶をしに白金家に行った。


 「ようこそいらっしゃいませ、神無社長。」


 「お邪魔します。こちらをどうぞ、つまらないものですが。」


 「これはどうもありがとうございます。こちらへどうぞ。」


そして、白金社長の自室へと案内された。


 「して、今日はどのような要件ですか?」


 「はい私、娘さんの梓さんと交際を始めました。その報告にまいりました。」


 「!本当ですか。それはよかったです。」


白金社長はずいぶん喜んだ様子で俺の手を握った。


 「ある日を境に梓がいつも以上に元気になっていましたがそういうことでしたか。ですが、最初は断っていましたがなぜまた?」


 「私はあの日を境に娘さんから猛アプローチを受けました。今までの私なら鬱陶しく感じたでしょう。ですが、娘さんをいるときはそのように感じず心地よく感じました。そして、私隣は彼女がいいと思い、私は梓さんが好きなのだと自覚しました。そういう感じですかね。」


白金社長は優しいまなざしで俺の話を聞いてくれた。成り行きで梓を助けて白金社長ともつながったが、助けてよかったと心の底から思った。そして、社長と話し込んでいると梓が帰ってきた。


 「ただいまって睦月君。どうしているの?」


 「交際の報告と挨拶。」


 「梓、いい男捕まえたな。絶対手放すなよ。」


 「当たり前よ。せっかく実った恋だもの。意地でも離すもんですか」


 「ところで婚約の件はどうしますか?あの時は付き合ってなかったから断られましたが今は交際してますし、私としては大歓迎ですよ。」


 「ありがとうございます。ですが、やはり婚約はお断りさせてください。」


 「私はまだ梓さんのことあまりわかっていません。私自身のことも知ってもらいたいです。ですので、私たちのスピードで歩んでいきたいです。婚約はそれからでも遅くないと思いますし、私も手放す気はありませんので。」


白金社長はにっこり笑い


 「わかりました。でしたら、私が口を出すのは無粋ですね。梓・神無社長。いや、睦月君おめでとう。これからの2人で頑張りなさい。」


 「「はい。」」


その日の会社にて


 「社長、なにやら機嫌がいいですね。何かあったんですか?」


 「え?わかる?」


 「えぇ、他の社員もみんな気になってましたよ。」


そんなに顔に出てたことに恥ずかしく感じた。


 「実は彼女ができたんだ。」


 「おめでとうございます。お父様には報告したのですか?」


 「したよ。えらい泣いてた。『あの睦月に彼女なんて、幸せにしろよ。』って。」


 「容易に想像できます。それで彼女はどういう人なのですか?」


 「同じ学校のクラスメイトだよ。あの白根グループの社長令嬢。」


 「そうなんですか?楽しいですか?」


 「うん、とっても。」


それから何度かぶつかり合いながらも俺と梓は交際を続け、高校を卒業した後も続いていた。俺は会社の経営に集中するために大学へは行かなかった。梓は父の会社を継ぐため大学で経営学を一から学んでいる。たまに俺の家に来て勉強している。

そして、梓が大学を卒業して5年後に親の会社を継いで、各自順調に会社を成長させていった。


そして、1年後に俺たちは結婚した。今では双子の女の子が生まれ、家族4人で暮らしている。


 「睦月君、行くよー。」


 「「パパ―、行こう。」」

 

 「今行くよ。」

 

何事にも無難に生きてきて無色だったはずの俺の人生がたった1人の女の子との出会いでとても鮮やかに色づいた。

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色づくはずなかったのに ゆうさん @kjasdbfcluink

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