After Story

「一体全体どういうことなのですかっ!? 百歩譲ってデルタはともかく、魔王様もだなんて」


 ワクチン接種の後は、なるべく安静にしていなきゃいけないんだぜ。


 なのに、その後、おれと魔王様は執務官である半牛魔族にこってり絞られていた。


 彼が言うには、おれたちがつきあうのは秘密裏にしてくれ、なるべく公の場でいちゃつかないでくれ、という約束の元でおつきあいを始めたというのに、さっそくみんなの前で口づけをしてしまった。


 もぉ〜、怒っちゃうぞぉ〜。と、いうやつである。


「す、すまなかった。つい、頭に血がのぼってしまったのだよ」


 しなだれる魔王様なんて、見ていられるもんかっ!!


「執務官はさぁ、恋したことがある?」

「なにをまったく。これは下々の話ではなくだなぁ――」


 おれは執務官の言葉を遮るように、魔王様の両耳を塞いだ。


「口づけ以上のことをしたことがあるかって聞いてるんだ!」

「なっ!? そ、それではそなたはどうなんだ!?」

「おれかい? おれは魔王様一筋だから、なぁ〜んもしてません。けどな。誰かを愛おしく感じるってのは、体の奥から生きてるって感じられる瞬間なのよ。その場の雰囲気とか、そういうのまでどぉ〜でもいいことになっちまうのよ」

「つまり?」


 よしきた、とばかりに、おれは魔王様から手を離し、執務官に言ってやった。


「恋をしろ、執務官。そうしたら、おれたちの気持ちもわかるってもんよ。ね? いいっすよね? 魔王様」

「うん? 途中話が聞こえなかったのだが、デルタがそう言うのならば、そうしてくれてかまわない」


 魔王様はすっかりおれの虜だな。


 だが、現実はそう甘いものではなく。なんと、執務官が恋をした相手は、よりによって蓮華なのだった。もうさ、恋した途端に玉砕とかありえないっしょ。


 ま、そんな感じで今日もお疲れさん。


 おしまい

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【BL】エリート魔族が魔王様に片想い!!! 元勇者から魔王城奪還なるか!? 魔王様、大好きだぁーっ!! 春川晴人 @haru-to

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