第2話酷い友人

賑わいをみせる食堂の窓際の二人掛けの席で、友人と昼食を摂る私。

正面の椅子に腰掛ける友人はカレーを口に運びながら、私の恋愛について耳を傾けている。

「そんな男子やついないってー、少女マンガの読み過ぎ〜ちぃちゃん!」

「分かんないじゃん、そんなの……」

私は自身の恋愛観を否定され、唇を尖らせて拗ねる。

「ちぃちゃんの周りにそんなやつが過去にいたぁ?居ないっしょ、そんな男子やつ。ウケるぅ〜あははっ」

銀のスプーンを持ってない右手のひとさし指で私を差しながら現実を突きつけてきた志井菜は、笑い声をあげた。

「うぅっ……酷い、保乃歌」

呻き声を漏らした私。

「そんな現実味のない夢をみるのは、中学までだよ〜ちぃちゃんっ!」

友人をからかい上機嫌な志井菜に恨めしい眼差しを向けながら、唐揚げを箸で摘んで口に運ぶ私。

唐揚げの咀嚼を終え、憎々しげに呟く。

「リア充め……」

「待ってるだけじゃ幸せは来ないよ〜ちぃちゃん。当たって砕けるくらいの勢いで攻めないとぅ〜」

「両想いだったから付き合えてるくせして。えらそうにぃ〜保乃歌ぁぁー」

彼女の煽りにムカつく。

「多村ぁ〜それ寄越せよぅー」

「駄目だっての、カイトっ!」

離れた席から多村悠人の声が聞こえて、彼が友人らとじゃれ合う方に顔を向けた。

「どったのー、ちぃちゃん。えっちしたい男子やつ居たー?」

「そんなのしたくないし、居ないからーッ!人前でそんなこと言わないッ保乃歌!」

彼女から出たえっちという言葉に咽せて、否定してから叱る私。

志井菜の背後の席に座る男子が、振り返っていた。

彼に気付かずに志井菜はカレーを頬張り続けていた。


志井菜保乃歌かのじょは、一般の女性と感覚がズレてる気がする。


昼食を摂り終えた私達が教室に戻ったのは、昼休みが終わる十五分前だった。


多村悠人となんて……ね。

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ツミなキミにときめいちゃう 闇野ゆかい @kouyann

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