最終局面、結末
魔法士との戦闘は、如何にヒットアンドアウェイな状況を潰せるかどうか。
近接戦が得意な自分達が如何に懐に潜れるかが幕を下ろす鍵。
だからアルヴィンはすぐさまセシルの足元を飛ばした。
地面へ氷の柱を生ませることによって、高低差という距離を埋めにかかる。
「クソがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
巨大な火の柱がセシルへと降り掛かる。
セシルは大剣をシリカが生成した柱へとぶん投げ、刺さったところを足場とするように跳躍。透き通った建造物はすぐに火の波へと飲まれた。
しかし、そこでは終わらない。セシルは更に跳躍し、二人のいる土の足場へと降り立った。
「さぁさぁ、お膝元!」
「だから?」
シリカは眼前に迫ったセシルを見て不遜に見据える。
「魔法士だからといって、距離を詰れば勝ちは安直すぎるだろう? なんのために飛んで火に入る夏の虫という言葉があると思っているんだ?」
セシルはまず先にシリカへと拳を向けた。
今の一瞬に無詠唱を所得したからといって、今まで所得して扱い続けていたシリカの方が充分に脅威だと判断したのだろう。
しかし、それよりも先に、
「
何度でも使用できるシリカの脅威が、セシルの空間を閉じ込めた。
そして、
「
その内側を、アルヴィンの脅威が取り囲んだ。
「チッ」
これにより、被害はアルヴィンの作り上げた城にだけ影響する。
崩れた空間から白い手がシリカの襟首へと伸びた。反射的に払ったシリカだが、その頬へアルヴィンの肘が突き刺さる。
体が傾く。その瞬間にセシルの蹴りが腹部へと叩き込まれた。
(クソッ……息ぴったりの
殴打の嵐。
魔法を扱う隙すら与えてくれない雨が、徐々にシリカの意識を奪っていく。
「団長!」
そして、ここでようやくユーリの放った圧縮した風の弾丸がセシルの脳天へと直撃する。
アルヴィンと合わせることにだけ集中していたセシルはよろけ、殴打の参戦から離脱した。
だが、それと同時にアルヴィンの拳がシリカのこめかみにへとめり込み、セシル同様に膝から崩れ落ちる。
故に、土塊で作られた柱の上という狭いフィールドに残ったのは───
「さぁ、終わらせよう」
「クソ
……あぁ、分かっている。
元より、この
自分の独りよがりで傍迷惑な
「それでも、私は」
狭い空間。圧倒的な
相手は
勝てる見込みも道理も、もはやどこにも見当たらない。
しかし、ここで折れてしまえば……この認められたという結果に泥を塗る行為だ。
「ここで、才能者に挑まなきゃッッッ!!!」
この自己満足は、きっと悪いことなのだろう。
間違いなく、どうしようもなく、幕を下ろしたところで己は多くの罰を受けることになる。
元より承知の上、覚悟の上だ。自分だって根っからの悪人ではない、罪悪感も罪の意識だって存在している。
しかし、せっかく引き起こしてここまで
「最後まで挑む権利ぐらいは、持たせてもらうからッッッ!!!」
ユーリはアルヴィンにへと指を向けた。
放たれるのは視認できない風の弾丸。無論、射線が分かっている以上、アルヴィンは避けるように地を駆ける。
この瞬間、アルヴィンの左右から火の塊が浮かび上がった。
ただ浮かんでいるだけ。放たれているわけではない。
「…………」
とはいえ、それが脅威ではないと認識するのは愚かだ。その証拠にすぐさま小さな風が肌を撫で、直後にアルヴィン飲み込むような火の濁流が視界を焼いた。
「やっ、た?」
包み込まれる火のを見て、思わずユーリは言葉が漏れてしまう。
アルヴィンの姿は見当たらない。いつまで立っても出てくる気配はない。
やりすぎた? もしかして死んじゃった? 勝つことに意識が向きすぎて、私は───
「……ははっ」
だが、そのあと。
ユーリの口から乾いた笑いが零れ出た。
一瞬だけ湧いた焦燥。殺してしまったかもという不安。
それらが全て消え去るような……背後からの足音。
もう、己には魔法を撃てるほどの魔力なんて残っていない。恐らく、傀儡にしている生徒達も今頃元に戻っているだろう。
だから、本当にこれが幕引き。
「……結局、私はアル坊には勝てなかったね」
「いいや」
ゴッッッッ!!! と。
ユーリの頭に重たい衝撃が走った。
この幕引きの仕方は、どこかいつぞやの『神隠し』の時と同じ。
まぁ、それをユーリが知る由もない───
「勝ってたよ、もう少し違うやり方があれば」
───しかし、結果は同じ。
今この瞬間、最後まで戦場に立っている人間はその時と変わらなかった。
ユーリが憧れ、妬み、恨み、強さを与えてくれた存在。
そんな
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