燕時VS.アイズ
――時は少し遡る。
「で、話ってなに?」
「今回はこのまま引いてくれないかい?」
燕時とアイズはリビングのテーブルで向かい合いながらお茶をしていた。
アイズと会って意識を失ったゼラは燕時が部屋に運び、そのまま眠ったままだ。
だから、この場には2人だけ。
「あの女に手を出さずにこのまま帰れって?」
「君のことは知っている。過去にゼラちゃんに何をしたのかも、そのしがらみも全部」
「知っていて、その発言?」
「タダでとは言わないさ。その時が来たら、君たちにふさわしい舞台をボクが用意しよう」
「ふ~ん、ふさわしい舞台ね。あの女へ嫌がらせできるなら、それもいいかもね」
「それじゃ――」
ガンッ!
「乗るわけないでしょ、そんな話!」
アイズは机の上に足を叩きつける。
「…………」
そのせいで床に散らばったカップを燕時は拾う。
「困るねぇ~。ここはボクが留守を任された場所なんだ。荒事は避けたい」
「だったら、守ってみなさい!」
アイズは右拳を振るう。
「仕方ない。相手をしよう」
燕時はその右拳を払い、彼女の腹部に手のひらを当てる。
「風遁“
当てた手のひらから突風が吹く。
「うっ……!」
たまらずアイズは吹き飛ばされ、窓ガラスを割り、外に追い出される。
「室内はダメ。表でやるよ」
「こっ……の!」
アイズは空中で体勢を立て直し、地面に足がついた瞬間に蹴って燕時との距離を詰める。
対する燕時は割った窓ガラスから外に出てアイズを迎え撃つ。
「…………っち、やっぱり近接戦闘じゃ勝ち目はないわね」
数手交えたが、アイズの攻撃はことごとく防がれていた。
「どうしてこう魔女ってのは、こう近接格闘を好むのかね。戦闘民族なの?」
「違うわ。だって、魔法を使ったらすぐに決着がついちゃうじゃない」
「戦闘をすぐに終わらせたくないって発想がもう既に脳筋じゃないのかな。全く宇宙人の考えることは分からないね、っと」
燕時は右手で3本のクナイを投げつけた。
「失礼ね。魔界生まれの魔界育ちよ」
だが、アイズが左手を振ると、2本のクナイが空中で方向を変えた。
1本はクナイ同士でぶつかり合い落下。もう1本は燕時に向かって返ってくる。
燕時はそれをすかさず左手に握っていたクナイで払い落とす。
「なんだい今のは? 魔法? テレキネシス的な?」
「いちいちネタバレするほど私は馬鹿じゃないの。自分で確かめてみたら?」
「なら、そうさせてもらおうかな」
燕時は巻物を口に加え、印を結ぶ。
それに合わせて上空には黒雲が立ち込める。
「雷遁“
術の名を口にした瞬間、黒雲から白い雷撃がアイズの頭上めがけて降り注ぐ。
「それじゃあ、ダメ」
アイズが右手を振ると、雷撃は直角に角度を変え、またしても燕時の元に返る。
「水遁“
しかし、燕時は動揺せず、すぐさま水による盾を生成し、雷撃を防ぐ。
「さらにお返しだ」
すると今度は雷撃を纏った水の盾をそのままアイズへと飛ばす。
「それも、ダメ」
だが、またもアイズの手の動きに合わせて、雷を含んだ水が方向転換し燕時めがけて返ってくる。
「しつこいねぇ~」
仕方なく燕時は飛んで避ける。
しかし、その水はそのまま通り過ぎることはなく、さらに方向転換し燕時を追尾する。
「あぁ、もうしょうがないなぁ。“解”!」
その言葉と共に、燕時が忍術で生み出した雷と水ははじけ飛んだ。
「う~ん、これは物質操作系の魔法……じゃないね」
「へ~、もう気づいたの」
「手の動きに合わせて操作してるように見せていたけど、そうじゃない。最後の方向転換の時、君は手を動かしてなかったからね。となれば、今のはボクの忍術が勝手に動いたってことかな」
「ええ、今あなたが想像している通りよ。私の魔法は物質に魂を宿す、
「物質、ねぇ。さっきの見る感じ、忍術や魔法にも魂を与えられそうだ」
「どうでしょうね? 流石に弱点まで馬鹿正直に教えたりはしないわ。でも、こういうことは出来るわよ。“
アイズが指を指すと、燕時の服が彼の体を拘束した。
「キッツ……!」
仕方なく燕時は自分の服を破り、脱ぎ捨てる。
「そんなにボクの裸が見たかったのかい? それなら今晩……は先客があるし、明日……は三丁目の千代美さんだし……えっと……来月とかどう?」
「黙りなさい、変態」
手帳を確認する燕時に対し、冷ややかな目で睨みつけるアイズ。
「ごめん……でも、みんな大切な人たちなんだ……」
「その反応止めて。私が嫉妬してるみたいになるから」
「10月20日ならどう? 空いてる?」
「…………」
「ごふっ!」
急に物置小屋が飛んできて燕時に吹き飛ばす。
「そのまま潰して」
アイズの命令に従うように物置小屋は燕時の上にのしかかる。
「ギブギブ!」
「そのまま死ねばいい」
「悪ふざけが過ぎた! 謝る! 謝るから! ごめんって! ホントごめん……なーんて」
「っ!」
燕時がニヤリと笑うと、その姿が煙となって消えた。
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