どうやらうちのメイドがやらかしたらしい。

「みんな外出してるみたいだ」

 誰が今家にいるのか分かるように、リビングにはホワイトボードが置いてある。

 それを確認すると僕とゼラ以外のメンツは外出中となっていた。

 また、このホワイトボードは連絡事項がある際の掲示板としても使われている。

「あ、ゼラの荷物届いたんだ」

 ちょうどそこには梗夜きょうや君から僕宛てに書置きがあった。

 そこに書かれている通り、玄関に行くといくつかの段ボールが積んであった。

 恐らくこれがゼラの荷物だろう。

「ゼラ、荷物届いてるよ」

 ということで、早速ゼラにそのことを伝えに行った。

「じゃあ、運んでおいて」

「自分でやって」

「なんでよ!」

「半分鬼人の血が混ざってるゼラの方が力あるでしょ」

「え~~~~~」

「それに今は他に誰もいないから鉢合わせする心配もないし」

「ぶー」

 ゼラは不満を漏らしながら、段ボールを部屋に運んでいく。

 一応僕も少しは手伝う。

 なお、僕は段ボールを一度に1つしか運べないが、ゼラは3つ一気に運んでいく。

「やっぱ、僕より力持ちじゃん」

 これが種族の差というやつか。

 そんなこんなで、半分ほど運んだあたりで、家の電話が鳴った。

「はいはい、今出ますよっと」

 運び途中の段ボールを床に置き、受話器を取った。

「はい、唯野です」

『おー! 出てくれたか! 頼む助けてくれ!』

 受話器から聞こえたのは聞き覚えのない少年の声だった。

「すみません、誰ですか?」

『誰って、俺だよ俺! 分かるだろ?』

「いや、あの、僕に息子はいないんですが」

『オレオレ詐欺じゃないって! 同じクラスの河野だ!』

「河野……?」

 そんな人いたっけ?

 クラスの人たちの名前なんてほとんど覚えてないから、分かんないけど。

『なんで分かんないんだ!』

「逆にそっちはなんで僕のこと知ってるの?」

『うちの学校でお前を知らない方がおかしいだろ。あんな個性的なメンツ引き連れてたらいやでも目立つわ』

「それもそうだ。でも、電話番号まで知ってるのはおかしくない?」

『お前のところのメイドに聞いたんだよ』

 メイドって言うと、プリムラかメイさんだな。

 勝手に個人情報漏らされると困るんだけど。こうやって迷惑電話が来るから。

『それよりも早くうちのバイト先に来てくれ!』

「いきなり何言ってるの? 普通に嫌だけど。僕働きたくないし」

『違う違うそうじゃない。お前のところのメイドがうちの店で暴れてんだよ! どうにかしてくれ!』

 それを聞いて僕は頭を抱えた。

 あいつらまた何かやらかしたのか……。

 正直、行きたくないし面倒事に巻き込まれたくない。

 けど、うちの連中がよそ様に迷惑をかけているのだとしたら、流石にそれは止めに行かないとマズイ。

 店の場所を聞くと川越駅の東口近くにあるラーメン屋とのこと。

 ゼラに外出する旨を伝え、僕は急いで自転車に乗ってそのラーメン屋に向かった。

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