スク水白衣のロリっ子はロマンを求める

 工場の中にスク水に白衣を着た幼女が倒れている。

 何この状況……?

 誘拐とかじゃないよね? とりあえず、起こした方がいいかな。

「ねぇ、大丈夫? 起きて」

 軽く肩を揺すって幼女を起こす。

「ん、んん……」

「起きた? 何があったか覚えてる?」

「…………た」

「え?」

「お腹が減ったのじゃ……」

 その直後、ぐ~~~~~~~~~~っとお腹の音が鳴った。



 あ、これ、空腹で倒れてただけだ!



「なにか、食べれるのもあったっけ……」

 鞄の中を漁るとあった。プリムラの非常食。

 なんで、僕が持たされているのか分からないけど。いや、マジで。自分の食べる分くらい自分で持ち運んでほしい。

 でも、今日に限ってはそれに助けられた。

「はい、これでよければ」

「おお~!!! よいのか!?」

「僕のじゃないし、別にいいよ」

「おぬしはいい奴じゃな!」

 幼女は大きな瞳を輝かせて、僕が差し出したお弁当に食いついた。

 にしても、この幼女の喋り方がちょっと気になる。

 のじゃロリというやつかな?

 この見た目で高齢ってことはないとは思うけど……。

 パッと、頭にメイさんの顔が思い浮かんだ。

 あの人、『老化無効』の付与魔法を受けてるって、プリムラが言ってたんだよな~。

 老化って状態異常扱いなんだって思った。

 いや、今はそこ関係ないか。

 とりあえず、メイさんみたいな例もあるし、この人がめちゃくちゃ年上の可能性は十分ある。

 一応敬語とか使った方がいいのかな。

「うむ、実に美味じゃった」

「口に合ったみたいで、よかったです」

「ところで、おぬしは誰じゃ? 見たところ学生のようじゃが」

「僕は唯野憐太郎ただのれんたろうです。同じクラスで休んでいる子がいて、プリントを届けに来たんですけど、久井目白撫くいめしろなさんの家はここであっていますか? 先生から聞いた住所はここになってたんですけど」

「あ~~、そうじゃったのか。と言うことは、憐太郎れんたろう朱鳥あすかの代理じゃな」

 朱鳥あすか? ……ああ、委員長の名前か。普段あまり聞かないからピンとこなかった。

「そうですそうです。それで白撫しろなさんはどこに?」

「何を言っておるのじゃ? わしじゃよわし」

「へ?」

「わしが久井目白撫くいめしろなじゃ」

「まさかの同い年!?」

 てっきり超高年齢、もしくは見た目通りの幼女かと思ったのに。

 なんかキャラ付けが中途半端じゃない? 大丈夫?

「そうじゃよ。じゃから、敬語もさん付けもいらぬ」

「えっと、じゃあ、とりあえず、はいこれ。プリント」

「うむ、確かに受けとった」

「……あの、それで…………」

「ん? なんじゃ?」

「その格好は何!? なんで工場の中でスク水来てるのさ!!!」

「そんなもの決まっておるじゃろ。これが最もここに適した服装じゃからじゃ」

「TPO完全に無視してると思うけど?」

「全く、これだから最近の若者は」

「同い年じゃん」

「よいか? 一般的に服を着る時、下着、ズボン、シャツ、最低でも3枚着る必要がある。じゃが、スク水ならたった1枚で済む!」

「そこの効率求めてスク水着る人はいないよ」

「さらに、濡れても問題なし。汚れてもこの格好のままシャワーを浴びれる。つまり、いちいち着替えなくていいのじゃ」

「それでも着替えるし、洗濯しよ」

「そんなの時間の無駄じゃ。わしにはやりたいことがいっぱいあるんじゃからな」

「やりたいこと? あ~、エッチな話?」

「おぬし、スク水しか見えておらぬのか?」

「ごめんなさい。冗談です」


 ここには見たこともないメカで溢れている、そしているのは彼女1人だけ。それはつまり。

「君、エンジニアなんでしょ?」

「そうじゃ。ここにあるものは全部わしの作品じゃ」

「やっぱりそうなんだ。じゃあ、あそこにある大きな筒みたいなのも?」

「あれは魔力をエネルギーとした、超電磁砲じゃ」

「それって……っ!」

「レールガンじゃ」

「おお~!!! じゃあじゃあ、このペンライトみたいなのは?」

「それは自分の方に向けずに、ボタンを押してみるのじゃ」

「こ、これは……!」

「レーザーソードじゃ」

「おおおおおお!!!!!!!」

「そして、これじゃ!」

 白撫しろなはこの工場内で最も巨大な物体の前に立つ。30メートルはあろうそれには布が被さっており、なんなのかは分からない。

 けど、この流れからして大体の察しは付く。

「見よ! これがわしの夢じゃ!」

 バッと布を剥ぎ取る。

「で、出た! 巨大ロボ!」

 それはまさに1/1スケールのガン〇ムを彷彿とさせる、全男子の憧れ。

「へ、変形は!? が、合体はするの!?」

「もちろん、それも構想しておる。じゃが、これはまだ未完成なのじゃ」

「完成は!? 完成はいつするの!?」

「まだまだ時間がかかりそうなのじゃ。じゃから、言ったじゃろ? わしには時間が惜しいと」

「それじゃあ、スク水でもしょうがないね!」

「じゃろ?」

 白撫しろなは嬉しそうに笑っていた。

「でも、なんでこんな武器みたいなのばかり作ってるの? 魔族との戦争に使うため?」

「そんな下らないことのためにわしは物を作ったりせんわ」

「下らないって。じゃあ、何のために……」

「そんなもの決まっておろう」

 白撫しろなは白衣をはためかせ、巨大ロボを見上げる。




「ロマンじゃ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る