同棲生活を始めてもラブコメ展開になるとは限らない
「はぁはぁはぁはぁ、もう無理。もうマジで動けない、キッツ……」
その日の夜。疲れ果てた僕はベッドに倒れこんだ。
魔王の魔力による覚醒状態を解くために日が沈むまで魔力を放出し続けて、何とか元に戻れた。んだけど、これが想像以上に疲労感があった。
しかもそれだけじゃない。オッドゲイルさんと戦った時、普段鍛えていなかったため、あの覚醒モードでの動きに体がついて行かず、無理に動かしたために、全身バキバキの重症だ。明日とか絶対学校にいけない。明後日も多分行けない。後多分、今後ずっといけない。
「あ~………このまま…………眠む…………」
「寝るな」
ゴンッ!
「いって!!! その鎌の柄の部分で頭を叩かないで! 地味に痛いから!」
「おぉ、起きた」
「起こしてもいいからせめて優しく起こしてくださいお願いします」
「こんな感じか?」
「それエロ漫画!!!!!!!」
プリムラが見せてきたのは幼馴染の女の子が朝、寝ている男の子にエッチないたずらをしようとしているシーンだった。
「何でもってんの!?!?!?!?!」
「委員長が貸してくれた」
「淫乱風紀委員!!!!!!!!」
「だが、R17だ」
「じゃ、大丈夫だね。……とはならないんだよ! 返してきなさい」
「しかし、委員長がこれを読めば今後の生活に役立つと」
「夜のお供くらいの役にしかたたないよ。少なくても恋愛と言う意味では何一つ参考に出来る要素がない」
「いや、別にこれで恋愛を学ぼうとは思っていない」
「じゃあ、なにさ」
「分からんが、委員長に今日から
「へぇ~、これから僕の家で暮らすんだ。にしても、それでそんな漫画渡す委員長はやっぱどうかして…………え? 今なんて言った?」
「だから、今日からここに住むと」
「はあ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
「私は教育係だから。当然だ」
「因果関係がミスマッチ!」
「君の家は沢山部屋があるだろう? 1つ貰った」
「あ、話進めるんすね?」
なんかモヤモヤするけど、聞いたところで教えてはくれないだろう。
「まぁ、うちは元々シェアハウスとして建てられた家だからね。普通の家庭よりは部屋数だけは多いね」
なんでも両親が2人で住む部屋を探している時に、幼馴染みが仮住まいとしてここを紹介してくれたらしい。そして、その後、両親が結婚したことを気に新婚祝いだと言ってこの家をくれたらしい。
僕はその人に会ったことないけど、とんでもないお金持ちらしい。
「私に用がある時は2階の一番東にある部屋を訪れるといい」
「なにそのゲームのNPCみたいなセリフ。アイテムくれるの?」
にしても、四六時中この人が近くにいるってことだよね。普通に嫌なんだけど。絶対魔王にするとか言って、魔法の修行とか勉強とかさせる気なんだ。
最低だ! 勉強させようとするのは悪い文化!
「同居する強みは何といっても徹夜で勉強させられるところだな」
「やっぱりね!!!!!!」
「じゃ、早速、勉強会を始めようか。将来、魔族のトップに立つ男がバカでしたでは話にならない」
「いやだね。僕は勉強なんかしない。そんなのしたって意味ないし。僕の体はね、勉強できないようにできてるの。どんだけ頑張っても、どうせいい大学に受からないし、就職とか絶対落とされるもん。君使えないねって。というか、僕ごときに出来る仕事とかこの世に存在しないもんね」
「心配いらない。お前は将来、魔王になるんだ。就活なんてしなくていい」
「もっと無理だよ!」
「ま、今、将来何になりたいだとかは別にどうでもいい。だが、勉強会だけは受けておけ。知らない。ただそれだけで命取りになる。お前はそういう世界にもういるんだという自覚を持った方がいい」
「っう……」
それはさっき
確かに魔王候補とかについて何も知らなくて、あの時、プリムラが間に合わなかったら僕は確実に殺されていた。
僕は自分がダメで何もできない人間であることを自覚している。でも、だからと言って死にたいわけじゃない。
生きてしたいことは当然ある。
「話を聞くくらいなら……まぁ……」
「それでいい。じゃ、そこに座れ」
プリムラは折り畳みの小さなテーブルを広げ、僕らは向き合って座る。
「いきなり全てを話してもついていけないだろうから、今日はお前の持つ魔力について話そう」
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