第4話

「ちくわ…奥が深いなぁ…!」

俺は練り物特集が組まれた雑誌をパタンと閉じた。


辛うじてあるベッドの空間に身を横たえる。

寝転がった俺にゴミがバラバラ…と落ちてきた。

「はーぁ…」

こんなに早く帰ってきたことがないから…何をしていいかわからない…俺はなんとなくベッド周りのゴミを袋に入れる。

ペットボトルばっかりだな…

俺はそんな事を思う。







「お…おはようございます…!!」

「おはよー大城くん」

俺は肩でゼーゼーと息をしながら部長に挨拶をする。

やべー…いつの間にか寝落ちしていた…

奇跡的に5:30に目覚めた…

身体の震えが止まらない…


「どうしたの?体調悪い?無理しないでね〜」

「いえ…」

部長…これは精神的なものから来る震えです…!!


「ちーす」斎藤さんが俺の背後をするりと抜けて席に座った。

「お…おはようございます」

「おはよう〜斎藤さん」


ここは地下にあるので窓がない。

外の様子が見えないことに俺は少しソワソワしながら席に着く。

部長をちらりと見ると新聞紙を広げて鼻歌を歌っている…斎藤さんは小瓶を並べて爪をギコギコ磨いている。

…俺は何をしたらいいのかわからず…


「あ…あの…」

「なに〜?どうしたの?」新聞紙から顔を上げて部長がこちらにくるりと向いた。

「なにか…あの…掃除とか…用具入れなどはどこにありますか?」

「大城くんの机昨日用意したばかりだから…大丈夫じゃない?掃除しなくても〜」部長はあははと笑う。

「ま、もしどうしてもやりたかったらそこにあるよ〜」

俺は部長が指差した方を向く。

あれ?あんなところにロッカーがあったか?

ロッカーが4つ並んでいて左から『富山』『斎藤』『大城』『掃除用具』と書かれている。


「す…すいません…気づかなくて…」

「いいのいいの!今出たんだから〜」

「え?」

「まあ、事業開始時間までのんびりしようよ〜」部長は再び新聞に目を落とした。



俺はなんだか居心地の悪い気分で手で拳を作り膝の上に置いた。





キーンコーンカーンコーン…

キーンコーンカーンコーン…


「…よっし!」チャイムを合図に部長が新聞紙をパタンと畳み立ち上がった。

俺もそれに合わせ慌てて立ち上がる。

斎藤さんはノロノロと面倒くさそうに立ち上がった。



「おはようございます!今日も一日安心安全をモットーに頑張りましょう!!」部長が大きな声でそう言った。

斎藤さんがダルそうに「…はーい…チッ…」と言ったので

「はい!」と俺も返事をした。



「大城くん!さあ、まずは自分のロッカーを開けて着替えてくれ!」部長がキビキビとした動作で俺をロッカーまで誘う。

部長って…オンオフの差が激しいんだな…!


「着替え…ああ…そうですよね」

食品を扱うのにスーツではいけないよな…


俺がロッカーを開けるとそこには紺色の芋ジャーがかけられていた。

「大城くんはLLサイズでよかったかい!?君は背が高いからね!」部長はアハハと笑っている。

斎藤さんは「うぜー…」と呟きながらジャージを手に隣の部屋へ入って行った。そこは高さ1m程度しかない扉があって、斎藤さんは腰を屈めて中に消えていった。



「そっちは女子更衣室だから!男子禁制ね!!」

「あ…うちの部署専用ですか?」一人のために…贅沢だなぁ

「ん?会社の更衣室と一緒だよ?」

「え?」

「男子更衣室の扉もあるけど使う?」部長はもう一つある小さな扉を指差した。

扉には縦に『男子』とかかれている。


俺は少し悩んで…

「いえ、ここで着替えます」と言った。

なんとなく…前の部署の人にあったら気まずいな…と思ったからだ。

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大城!お前竹輪部署に異動な! mokumoku @mokumokumokumoku

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