第55話 【名門!カクヨム学園】その2~周りを巻き込む力~

 俺の名前は月本招(つきもとまねき)。

 もちろん偽名だ。

 

 

 前回突然始まった、エッセイの中で書く架空の学園モノ。

 ……うん、自分で書いていてもよく分からないのだが、とりあえず続きを見てもらおう。

 

 

 ―――――

 ヒカリは制服の内ポケットから赤い縁のメガネを出してスッと掛けてみせた。

 

 あぁ、そう言えばコイツってば形から入るタイプだったっけ。Twitterもフォロワー数が多い方が誘導しやすいからって言って、カクヨム学園に入る前からコツコツとやっていたみたいだけど、肝心の宣伝が下手すぎて全然誘導できていないって言う……。



「月本」


「うん?」


「アンタまた良からぬことを考えてんじゃないでしょうね?」


「い、いや、そんなことないって。で、まずは基本的なおさらいだっけか?」


 俺が尋ねると、ヒカリはメガネを人差し指の腹でくいと持ち上げた。



「そう。けど、その前に質問。アンタならカクヨム学園の中で読みたい作品を見つけようと思った時にどうやって探す?」


「そりゃまぁ、読みたいジャンルのランキング上位から気になったタイトル&キャッチコピーの作品をクリックして、紹介文を読んで面白そうだなと思ったら本文に行く……って感じかな」


「すっごい普通」


「……別にいいだろ」


 何だか思考が凡人だと言われているような気がして、俺はちょっとムッとする。しかし、ヒカリはそんな俺を気にする素振りも見せずに、中央廊下の巨大デジタルサイネージを見つめていた。



「アレなんだよねぇ」


「アレ?」


「あのデジタルサイネージ。カクヨム学園のホームページで言えば、トップページのファーストビュー。一番目立つところに掲載されるだけでPVがじゃんじゃん増える。ここの執筆科の生徒の誰もが載りたいって思っている場所」


「……あぁ、そうだな」


 そりゃ、あそこに載ることができればPVが増えることくらい俺にだってわかる。だけど、それが上手くいかないからこんなに苦戦しているってのに。



「なぁ、そんなことくらい誰でも知ってるって」


「まぁそうかもね。でも、アンタがさっき言った作品の探し方って、どっちかって言うと読み専寄りのルートだよ」


「え?」


「作家ならもっと色々な導線が張り巡らされるからね。例えば読み返し」


 読み返しは有名な手法だ。やり方は簡単。

 まずは自分から作品を読みに行って、読んだら応援を残して、★レビューもつけるとさらに読み返しが期待できるって聞いた気がする。

 

 その内容をヒカリに伝えると、ハァとため息を吐かれてしまった。何か間違ったことを言っただろうか?



「それじゃ全然ダメだよ。それにもしも、めちゃくちゃ文章が短いショートショートとかを連続で読んだりして、短時間でレビューを付けちゃったりしたら、相手によっては星爆って思われちゃうかも」


 ヒカリがさらっと怖いことを言う。星爆とは、読み返しを期待して、読んでもないのに★レビューを付けまくる行為のことだ。これも、星剥がしと同様に学園側が校則違反としており、常習犯は退学になる可能性もあるらしい。



「はぁ? なんで?」


「応援や★レビューって、言っちゃえば別に読んでなくてもできるからだよ。まぁ、数分間に何作品も★レビューをつけてない限りはそこまで思われないかもしれないけど、『この人って、読み返しに期待して読んでもないのに応援とか★レビューをつけているんじゃないの?』って思う人も中にはいるかもってこと」


「いやいや、俺はちゃんと読んでるって」


「でも、それは相手にはわからないでしょ? だから、もし読み返しを期待したいなら〈コメント〉は必須。それだけで相手との距離感が全っ然変わるんだから」


「コメントかぁ。あれって結構ムズいんだよな。逆に変なこと書いて気を悪くさせちゃったりもするかもだし。でも、必須ってことはないだろ?」


 実は俺も入学してすぐの頃に、読んだらちゃんとコメントを書いた方がいいとクラスメイトに聞いて、読んだ作品には毎回のようにコメント書いていたのだが、やたらとあっさりしたコメントが作者から返ってきて、それからどうも苦手意識があった。



「いや、本気で相手と打ち解けたいなら必須だね。それにコメントは作者以外からのアクセスだって見込めるんだよ」


「作者以外?」


「そう。そのコメントを見た別の生徒が『面白いコメントを書く人だな。どんな作品を書いているんだろう?』って興味を持ってくれることがあるの」


「そんなことあるぅ?」


「全然あるよ。じゃあ例えばさ、同じ作品にアンタと別の誰かがよくコメントを書いていたとする。それって、同じ作品に反応しているってことだよね?」


「そりゃそうだな」


「なら、その人ってアンタと趣味が合う可能性って高そうじゃない?」


「う~ん、まぁ確かに」


「そう思ってる人って実は結構いるはずだよ。だから、逆に声を掛けないともったいないってアタシなんかは思っちゃう。コメントは作者との1対1じゃなくて、その作品が好きで集まってきている人たちとも交流が図れるきっかけになるの。


つまりこう言うこと。『コメントには周りを巻き込む力が宿っている』。


だから人気作家がレビューコメントなんて書こうものなら、『あの人がお勧めする作品ってどんなのだろう?』って、PVが一気に増えたりすることもあるし」


 言われて妙に納得してしまった。つまり、コメントは作者に対するメッセージであると同時に同じ作品を楽しんでいる他の読者に対するメッセージにもなり得る訳だ。



「1つのコメントが作者以外の人にも見てもらえているのか。それなら労力に見合う価値はあるな」


「コラコラ、そこ。労力とか言うんじゃないよ。一番は作品を読んで伝えたいと思った気持ちをコメントにすることが大事なんだよ。そう言うのって作者にだって伝わるんだから。アンタだって、ちゃんと読んでくれているコメントとそうじゃないコメントくらいは区別つくでしょ?」


「あぁ、確かにたまにあるな。テンプレみたいなコメント」


「それだったら実は書かない方がマシなんだよ。よくあるのが自主企画の読み合いとかだね。『自主企画から来ました。これから読ませてもらいます』とか書かれても、モロにテンプレだし、どう返したらいいかわからないでしょ? それって当然作者にも刺さらないし、他の人からしても、適当なコメント書いてる人がいるなーって思われちゃう」


 だんだんとヒカリの言わんとしていることがわかってきた。単に応援やレビューだけじゃ目に留まらない。こちらの気持ちも伝えられない。それができるのがコメントであって、ワンクリックで済む応援などに比べて伝える効果がプラスにもマイナスにも大きく働くってことか。



「よし! じゃあ俺もどんどんコメントを書いていくか」


 俺が拳を握って言葉に力を込めると、それを諫めるようにヒカリが言う。



「あ、盛り上がっているところ悪いけど、ちょっとだけ補足だよ。もし読み返しを期待してコメントを書くのなら、作者がどれだけコメントに対して反応しているか。それと、余力があればどれくらいの人をフォローしているかとプロフィール欄も見てみるといいよ」


「その作者がどれくらい人と日常的に接しているかを確認するってこと?」


「そういうことだね。ほら、よく周りを見てみなよ」


 ヒカリに言われて俺は中央廊下を通り過ぎる生徒を視界に映す。5~6人のグループで楽しそうに話している生徒もいれば、誰とも目を合わせないで廊下の端っこを静かに歩いていく生徒もそこには存在している。



「あぁ、確かにこれだけ多くの生徒がいれば、人付き合いの上手いヤツも下手なヤツも入り乱れているよな」


「まぁそういうこと。人付き合いが苦手でも面白い作品を書いて、それが読み専の生徒たちの間で拡散されてバズることだってあるから一概には言えないけど、コメントをきっかけに仲良くなりたいと思うなら、自分が絡みやすそうと思った作者が書いた作品にコメントを残していく方が間違いなく効率はいい」


「じゃあ、俺ももしかしたら誰かに見られているかもしれないってことだ」


「まぁ、アンタみたいな小者を見ている人がどれだけいるかはわからないけど、可能性はあるかもね」


「だから、その謎の上から目線はやめろっての……」


 コメントが大事なのはわかったんだけど、俺はなぜか腹落ちしない。果たしてコメントだけでランキング上位になんて行けるのだろうか? 言っちゃ悪いが、あそこで5~6人で話しているグループのメンバーの中に上位ランカーの姿は見えない。なら、上位ランカーたちは普段はどこにいる? そして一体彼らは何をしている?



「月本」


「なんだよ?」


「いや、納得いかないって顔してると思って」


「……まぁな」


「ハァ、まぁわかるよ。ていうか、今話したのはいわば土台作りの戦略だし」


「土台作り? なんでそんな回りくどいことを?」


 これだけ説明を聞かされたあとで、実は土台作りでした、なんていわれても、あぁそうですかなんて納得できるもんじゃない。ここぞとばかりに疑いの目を向けると、ヒカリは俺の考えを見透かしたように言葉を返す。



「あー、違うんだよなぁ。逆だよ逆。アンタ、さっき『俺とアイツらとじゃ元々持っている才能が違う』って言ってたよね?」


「確かに言ったな」


「もちろん、才能もあると思う。だけど、『上位ランカー=才能の集まり』じゃない」


「どゆこと?」


「つまりね、上位に行くためには戦略が絡んでいる場合が大半ってこと。カクヨム学園の、ことランキングにおいては、『戦略>才能』と言う現象は日常的に起こっているの」


「それって、戦略が才能を凌駕するってこと?」


「そういうこと。もちろん最終的に書籍化されて売れるかどうかってところになれば才能や運の方が重要になってくるはずだけど、この学園のランキングに限って言えば戦略が上位に行くための最重要項目であると言い切れるね」


 ヒカリは少女漫画の主人公ばりのキラキラした目でドヤ顔を決めている。



「いやぁ、さすがにそれはどうかなと思うけど」


「てか、アンタって意外と頭が固いよね。じゃあ次は戦略について教えてあげる。月本。アンタ、今の作品を捨てる気はある?」


「はぁ?」


 ヒカリが突然恐ろしいことを言い出した。言葉とは裏腹に、その表情は明らかに今のこの時を楽しんでいるように見えた。



→→次回へ続く

―――――

★月本のひとり言

やっば。物語形式にしたら説明が全然進まないでやがんの(;・∀・)

これってまさかの長編になるのか。。軽い思い付きで始めたのににに=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


ここまでお読みいただきありがとうございます(≧▽≦)

もし、月本にこんなことを書いて欲しいなどのリクエストがありましたら気軽にコメントください。


ご質問・ご感想もお待ちしています!



↓が月本のメイン作品です。よかったら読んでみてください(,,>᎑<,,)


ファンタスティックアベンジャー~呪われた人生に復讐するために、時空を超えて集う者~

https://kakuyomu.jp/works/16817139558143902273

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