第3話 カクヨム攻略の糸口を見つけ出せ(投稿2日目の話)

 俺の名前は月本招(つきもとまねき)。

 もちろん偽名だ。



 2022年8月26日(金)の夜に俺は生まれて初めての小説の投稿を行った。

 結果は惨敗。

 24時間経ってもPVが0という現実だけが俺を支配していた。


 しかし……、3ヶ月かけて準備していたことを初日の失敗だけで諦めるという決断にはどうしても至らず、俺は半べそをかきながら第2話を投稿した。


 そして考える。

 たぶん、このまま同じことを繰り返していたのでは、いつまで経っても人に読んでもらえるような作品にはならない。


 俺が心を躍らせながら考えた話、キャラクター達。ぜひ日の目を見せてやりたい。それが親心ってもんだろう(親になったことはないのだけど…)。



 カクヨムには様々な導線が用意されている。初心者救済の代表格としてはやはり「自主企画」だろう。


 他にも応援、レビュー、レビューコメントに応援コメント。コンテストもそうだし、注目の作品やらランキングやら盛り沢山。


 しかし、初心者が飛び込むのはおそらくほとんどが「自主企画」になると思う。


 俺みたいな初心者からしたらコンテストなんて神々の戦いにしか見えない。

 ランキング? あぁ、うん……(察し)


 てなワケで、色々見て回った結果、カクヨム内には色んな導線があることはわかったけど、実際に今の自分でも効果がありそうなのは自主企画だろうということになって、今度は自主企画を細かくチェックしていった。


 ほとんどの諸氏がご存じの通り、自主企画とは「ユーザー発のイベントを開催できる機能」のことで、カクヨムに登録しているユーザーなら登録から1か月経てば誰でも開催することができる(たぶん)。


 だが、当時の俺はそんなことなどを知るはずもない。


「きっと、この自主企画を立てられていらっしゃる方は、神(プロ作家)や王族(ランキング上位)のような、選ばれた方々なのだろう」


と勝手に思い込み、俺みたいな生まれてこの方、人類の誰にも作品を読まれたことがないPV0の完全体のカクヨム童て…初心者が飛び込んでいいものかしばし悩んだが、飛び込まなければ何も変わらないと思い、意を決して気になった自主企画へ参加してみることにした。


 たしか、「★・PV欲しい人」みたいな企画だったと思う。



「そりゃ欲しいっスよ! だけど、★なんてそんな大層な勲章は俺にはまだ10年早い。でも、PVの1つくらいは俺にもくれたってよくないですか。てか、どうかお願いします! オイラにPVをお恵みください!」



 俺はそんな思いだった。初日の「俺の大傑作」は影も形もない。24時間でPV0と言う現実の中、淡い思いは木っ端みじんに打ち砕かれていた。


 自主企画への参加登録はした。

 第2話の投稿もした。


「さてと……今日はもうやることがないな。とりあえず、他の企画参加者の作品でも読んでみようか」


 俺はパニくったあまりに、この時まで他の作家さんの作品を読んでいなかったのだ。ランキング上位は覗いてみたりもしたが、心ここにあらずで、まともに読めてはいなかった。


「こういう時は、まずは主催者に挨拶だよな。主催者の作品はと……これか。うわ、★が3桁行ってるじゃん。やっぱり神か王族なのか…」


 星の数に圧倒されてビビりまくる俺。

 今でこそ自作品でも★3桁には届いているのだけど、当時の俺にとっては★3桁も4桁も同じように見えていたのであった。


 それでもとりあえず、第一話を読んでみる。


 やはり俺の作品と比べると圧倒的に表現が上手い。確かに惹きつけられるものがある。最近ほとんど本を読んでいなかったのでその感覚自体が怪しいものだが、まずは感じたことをコメントでもしていこう。


「えっと、コメントするには、応援ってのを押さないといけないのか。これでいいのかな」


 手探りで試してみる。

 応援を押すと、コメント欄が表示されたので、思ったことを書いていく。なるべく失礼がないように。

 

 最後に、(私は昨日登録したばかりの初心者です。右も左も分からない状態なので、もしよければ色々教えてください)と書き残した。書かれた方はいい迷惑だったと思うが、それくらい俺は何もわかっていなかったのだ。


 10分くらいかけて、俺は初コメントを書き終えた。

 なんだこれ。数行書くだけなのにめっちゃ緊張するな。ふぅ。


 さてと次は、同じ自主企画に参加している人の作品でも読みに行こう。


 気になったタイトルを開く。★が主催者よりも多かったのでビビるが、そうも言っていられない。俺はまた第一話を読み込んでコメントを残した。


 その後も、5つくらいの作品の第一話~1万字くらいを目安に読んではコメントを書いていった。


 疲れる。何だかんだで3時間くらいは経っていた気がする。

 俺が普段本をあまり読まないからかもしれないが、人の文章を読むってのは結構疲れるものだとこの時に思った。


 読みやすい、読みづらいが人によってはっきりしていて、主語や目的語、述語など、他にも作品内の専門用語がわかりやすい作品はあまり読んでいてもストレスを感じないが、逆だと俺には何が書いてあるのかよくわからなくて、何度も戻って見直すことも度々あった。


 もう一つ感じたことはセリフ。


 特に複数の登場人物が一斉に話し出すと、誰が話しているセリフなのかがわからなくなってくる作品もたまに見かける。上手い人に言わせればキャラの口癖、言葉遣いなどで回避できるらしいが、俺なんかは、「まぁ読んでればわかるでしょ」くらいで書いていてしまっていたので、この辺りも気を付ける必要がありそうだと振り返る。


「ふぉー、これってめちゃくちゃ勉強になるじゃん。なるほどね、これからはまずは自分が読みやすい文章を書いていく方がよさそうだな」


 でも、同時にこんなことも思った。


「読みづらい文章で書かれた作品や盛り上がりに欠けるような作品でも★が多かったり、面白くて読みやすい文章で書かれた作品の★が少なかったりするのは何でだろう? そこはあまり関係ないのか?」


 いや、関係はある。

 それは単にどれだけ話数を重ねている(一気読みなど)とか、導線が貼れている(人の目に触れる機会、単純接触回数)とかによるものも大きく関係しているはずだ。


 もちろん、面白ければ評価はされるはずだが、そもそも読んでもらえなければ評価される回数が激減してしまう。


 つまり、どれだけ面白くても読まれなければ何の評価もされない。

 当たり前だけど、これがカクヨム内の絶対の掟なのだ。

 2日目にしてようやくその事実に気づく。


 そうこうしながら、それからも色んな作品に目を通しては応援やコメントをしていると、ふと俺のダッシュボードの上部にあるベルのアイコンに赤いポッチがついているのが視界に入った。


「ん? 何だこれ?」


 俺は何の気なくアイコンを押下した。


「あぁこれ、お知らせかぁ。ふ~ん、こんな機能があるのね。……って、え! ……これって……」


 そこには『作品に★レビュー』の文字と俺の作品名が。


「これって……誰かが俺の話を読んでくれたってことだよな。★ってことは評価してくれたってこと……なのか?」


 ダッシュボードを見てみると、★は2、PVはいつの間にか9になっていた。


「……そうか、読み返しにきてくれたのか。応援やコメントのログで導線が貼られて、そのお返しに読みに来てくれたってことなんだ。それにしても、俺はレビューの仕方も分かっていないから、まだ誰にも★を付けたことがなかったのに、こうやって普通につけてくれる人がいるんだな……」


 俺は妙に納得し、またもちろん感動に酔いしれていた。

 最近久しく味わったことがない感動だった。


「……少しわかってきた気がする。こっちが読んで足跡を残して行けば、一定数の人は読み返しに来てくれるってわけだ。コメントを付ければさらにその確率は上がる。レビューはまだよくわからないから、色々見て回るか」


 こうして俺の2日目の夜は過ぎて行った。

 その日はうれし涙で枕を濡らした……気がする。



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ここまでお読みいただきありがとうございます(≧▽≦)

もし、月本にこんなことを書いて欲しいなどのリクエストがありましたら気軽にコメントください。


ご質問・ご感想もお待ちしていますー!



↓が月本の作品です。よかったら読んでみてください(,,>᎑<,,)


★長編メイン作品

ボクたちの転生狂想曲~呪われた少年と不思議なネコ~

https://kakuyomu.jp/works/16817139558143902273


★短編コメディ

その塾、動物の楽園につき

https://kakuyomu.jp/works/16817330650595141827


★短編ラブコメ

逆転レベルアップ~最弱使い魔とゲームの世界で冒険したら~

https://kakuyomu.jp/works/16817139559074788702

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