9話 岸野空爆(中編)

 21時31分ニヒトサンヒト

 十歳ととせ空軍くうぐん基地きちから岸野きしのまでの跳躍ちょうやくちゅう通信つうしん最高さいこう安定あんていしたまま。

 んでいる自分じぶんしたひろがった、「計画けいかく停電ていでんされた岸野きしの」を見下みおろす。

 岸野市中央ちゅうおうには、岸野空港くうこう国内線こくないせんターミナルと、国際こくさい線ターミナル、十六もの滑走路かっそうろと、誘導路ゆうどうとう

 北日本きたにほんそら玄関げんかんささえていた。

 みなみ半球はんきゅうへの難民なんみん救済きゅうさいチャーター便びんすべ旅立たびだってしまった。

 もちろん、もう飛行機ひこうき離着陸りちゃくりくれはい。

 管制塔かんせいとうだけがあか点滅てんめつしているけれど、非常ひじょう電源でんげんひからせているんだろう。


 この巨大きょだい空港の敷地しきちかこむように、ドーナツリングがた要塞ようさい都市としきずかれた。

 一昔前ひとむかしまえまであったゴルフじょう住宅街じゅうたくがいきゅう自衛隊じえいたい施設しせつ防空ぼうくう再開発さいかいはつで無くなった。

 あたらしく用意よういされたのは最新さいしんがた防空ぼうくう団地だんちぐん地下ちか避難所ひなんじょ

 <現在げんざい国籍こくせき不明ふめい航空機こうくうき南北なんぼく硝海道しょうかいどう境界きょうかいきゅう夕張ゆうばり山地さんち上空じょうくう飛行中ひこうちゅう。岸野にけておおきく旋回せんかい

 あと十分もすれば、人道じんどう兵器へいきの【ウミック】がそそいでくる。


 呪文じゅもんをきちんとこえにして、魔銃まじゅう感受かんじゅするまでに若干じゃっかんのタイムラグはかんじていた。

【ラダー】と融合ゆうごうした今、声にはっする必要ひつようが無くなったのかもしれない。

 でも、こころなかねんじるよりも、声にすほうが威力いりょくが大きい。

 言霊ことばとなって、てき貫通かんつうし、破壊はかいする。いつもの魔習まならいとやること、いっしょ。



 <あー、あー、もしもし>

 だれ

 <日本にほん内閣ないかく総理そうり大臣だいじん組木くみきです。きみがラダー融合ゆうごうへいかな?

 ……もしもし?

 これ、こわれてるんじゃないか?>

学校がっこう警察けいさつに、らない人としゃべっちゃいけないって言われてるので」

 <うんうん、防犯ぼうはん教室きょうしつかな?大事だいじなことだね。

 君はとてもたたかってくれるだ。

 なにしいものはあるかい?ご褒美ほうびに、おじさんがなんでも一つってあげよう>

「知らない人からものをもらっちゃいけないって言われてるので。ごめんなさい。でも、お気遣きづかいありがとうございます。

 何か欲しいものがあれば、ちちに買ってもらいます」

「総理大臣はってるだろう」とっこまれたら、わりだな。

 <おじさんに何か出来できることはあるかな?>

「無いよ」っていそうになった。

 なんで、小学生しょうがくせいが総理とお喋りしてるんだろう。

大丈夫だいじょうぶ」って言うのも、この状況じょうきょうではへんだよね。

 <迷惑めいわくだったね。作戦さくせん邪魔じゃまをして、ごめんね>

「岸野の、地下の人命じんめい救助きゅうじょをおねがいします」

 <それだけは約束やくそく出来ない。

 地上ちじょうの人命救助を最優先さいゆうせんする。君は日本の唯一無二ゆいいつむに兵器へいきだ。君をうしなわけにはいかない>


 <気持きもちはとどいたんじゃないかな?>

 総理の通信にりこんでも、どうじない軍人ぐんじん。日本国防こくぼう空軍北部方面ほくぶほうめん部隊長ぶたいちょう桑原くわばら大佐たいさ

 日本の今はこの軍人のなかにある。

 おもてのエネルギーがあれば、うらのエネルギーもある。

 みんなたいしてにしていない魔油まゆ

 第三次だいさんじ世界大戦せかいたいせんも。ドイツのようにつぶされずに、日本がのこれたのは、【ラダー】によって【ウミック】から搾油さくゆした魔油様様さまさま

「そうだと、いですね」

 わたしは無難ぶなんにそうおうじるしか無かった。


 たった一人の軍事ぐんじ行動こうどうまくける。

 感じる。

【ラダー】と融合したはだ泡立あわだつ。

 米国べいこくゴールドシーズンしゃせい魔具まぐびた頭皮とうひ。そこからのびた灰色はいいろかみも、不可思議ふかしぎ波打なみうっている。

【ウミック】の襲来を全身が感知した。


【【【バリンバリンバリン】】】


 いたことの無い、おとのような機械きかいおんのような異音いおん空域くういきひびわたった。

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