SS 冬のトイレ問題(大蕗寮バンクカウンセラー涙堂 泉視点)

 12月22日午後ごご9時。

 ビュオー、ビュオー。かぜおと

 ガンガン。金属きんぞくばんれる音。

 ガタン。ガタン。圧雪あっせつで、わだちやデコボコ状態じょうたい車道しゃどう

涙堂るいどう先生せんせい

 便座べんざ保温ほおんはそのままでいですからね」

 低温ていおん中温ちゅうおんあいだだったが、はだ感覚かんかく高温こうおんぎるとおもって、一度便座のヒーターをってしまった。

 人感じんかんセンサーきポータブルミニ暖房だんぼうもあるから、不要ふようだと勝手かって判断はんだんしてしまった。


 派遣はけんさき飾戸かざりど大蕗おおぶきりょう消灯しょうとう時刻じこくがやって来た。

 出会であって三時間の子どもたちはみがいて、明日あす作業服さぎょうふくとジャンプハーネス、作業ぐつ魔具まぐ準備じゅんびととのわっていた。

 先谷さきたに先生と手分てわけして、自分は玄関扉げんかんとびらまど施錠せじょう確認かくにん

 用心ようじんで、暖房のにせ暖炉だんろ台所だいどころをチェック。

 問題もんだいし。

「この寮に夜勤やきんはありません。

 夜間やかんちゅう管理かんりロボが警備けいび通信つうしん対応たいおうしてくれます。

 あっ、みず

 えっと、えっと、アリスー!!」

「はーい?」

 二階からパジャマ姿すがたのアリスがりてる。

「おとうさんから、このへん水落みずおとし、どうしてるかいたことある?」

「父は防空ぼうくうマンションから工房こうぼう通勤つうきんしてるので、工房は水落としして帰宅きたくしてますよ」

「トイレでよるきるよね?

 水落とししたら、水洗すいせん出来なくなって不便ふびんだね」

「六人いて、トイレをだれ使つかわないってことはいとおもいます。

 暖房、さないままですよね?

 氷点下ひょうてんか五度になったら、としましょう。

 それでもまよったら、凍結とうけつ予報よほう参考さんこうにしてみてください。

 あっ、涙堂先生。

 電気でんき毛布もうふ使つかいます?」

「へ?」

「電気カーペットみたいに、保温ほおんしてくれますよ。さむくて初日しょにちかられないと、キツイですよ」

「火の用心のほうが大事だいじだから」

「タイマー付きで一時間でOFFオフになるタイプです」

 どれ、どれ。

 一階の寝室しんしつのベッド。

 うん。冷蔵庫れいぞうこかんビールくらいキンキンにえてるね。

「せっかくだから、使わせてもらおうかな」

 ササッとシーツをめくって、電気毛布をいてくれる。

「先谷先生、涙堂先生。おやすみなさい」

 なーんだ。

 魔具さえなければ、普通ふつう北国きたぐにの子どもじゃないか。

「ごめんね、アリス。おやすみ」

「アリスちゃん、おやすみ」

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