12月13日

SS ルナは型落ち(在庫限り)で良いのに(石橋 月親視点)

 あに石橋いしばし 日親そるちかアンドいもうと月親るなちか

 ルナたちは双子ふたご

 幼稚園ようちえんくみも、小学校しょうがっこう学級がっきゅうも、魔習まならいのいえも、いままでおな編成へんせいだった。

 でも、双子でも、同じところは本当ほんとうすくない。

 家でもそとでも別々べつべつ行動こうどうしてるもん。

 それに。いつだって、日親そるちかのほうがなんでも上手じょうずにやってみせる。

 ルナはおまけあつかい。

 そして、今日きょうも日親の魔具まぐえのおまけでわたしも買い替える


 ルナたちは小学校入学にゅうがくのときと、小学三年生になるときに魔具を買っている。

 魔具っていうのは、成長せいちょうわせて買い替えが必要ひつよう

 ルナたちは小学高学年こうがくねんになったら、かならず魔具の買い替えをしなくちゃいけなかった。

 二年に一度のペースで買い替え。でも、中古ちゅうこ我慢がまんするおおいのに。

 敷星しきぼしインシデントのせいで、みんな、二年に一度「新品しんぴん」を買うことにしたみたい。

 催事場さいじじょうがすっごくんでる。


「御前は日親のいろちがいでいだろ。ママと一緒いっしょにベンチでやすんでなさい」ってパパにわれちゃった。

 こういうとき、ものすごくパパってはりきる。自分じぶん最新さいしん魔具のきき出来でき自信じしんがあるからってひどいよ。

 ルナたちに、パパの趣味しゅみしつけて来る。

「パパ、勝手かってめないで。

 あっちで月親の魔具をさがしてみよう」とママはルナに言ってくれる。

 パパが不機嫌ふきげんになるのわかっているのに。

「双子なんだから、コーディネートはまかせろよ」

「パパ。

 月親は日親のコピーじゃないのよ。月親をちゃんと一人の人間にんげんとして見て」

 パパは何も言いかえせず、ムスッとしたまま日親をれて、新作しんさく展示てんじスペースへの案内図あんないず確認かくにんしている。

 ルナは型落かたおちで良い。


 おかしいな。パパが催事場の出入り口へもどって来た。

 こういうとき、パパは展示品てんじひんをじっくり見てまわる。でも、今日はあさから端末たんまつとにらめっこ状態じょうたい。何かを検索けんさくしているみたい。

 そして、何故なぜかルナにはなしかけて来た。

「すごいじゃないか、御前おまえ!」

「パパ、何?」

大蕗寮おおぶきりょうまったんだ。

 寮メンバーには、あの魔具まぐがい患者かんじゃ名前なまえもあったぞ。御前、しっかり魔具害患者を介助かいじょしてやれよ。

 ものすごい経験けいけんをしたって評価ひょうかされるぞ……なんだ、そのかおは?

 パパは御前のためをおもって、調しらべてやったのに。感謝かんしゃ気持きもちはいのか?」


 パパが「ルナが大蕗寮」だってってて、ちょっとだけうれしかった。でも、のこりの言葉ことばいて、ショックしか無かった。

 出来がわるい双子の妹のほうも「魔具害患者の介助」で経験評価されるって……。


「ルナ、かえる」

「日親のおまけでせっかく連れて来てやったのに、買わなくて良いんだな。

 そんなに帰りたきゃ、あるいて帰れ!」

「月親、ママと帰ろう」

 ママはパパからルナをまもるようにいてくれる。

「ママ?」

「パパはおりの日親とずーっと一緒にいれば良いわ。日親もそれで良いんでしょ?」

「……俺もママと帰る」

「日親まで、何で?」

 パパは日親にうとまれて、うろたえている。

「魔具害患者を差別さべつしちゃいけないって学校で習ったよ。

 それに、習わなくても、だれかを差別しちゃいけない」

 日親はパパにはっきり意見いけんする。

「……悪かったって。ちょっと、日親のためにはりぎたよ」

 パパはヘラヘラして、すぐ、何でも、誤魔化ごまかそうとする。

「そうじゃないでしょ。魔具害患者だけじゃなくて、月親も差別してるでしょ?

 日親にたいする偏見へんけんもそうでしょ?

 もう、小学校高学年なんだから、自分で魔具くらいえらべるわ」

 ママがパパをにらみつける。

「おい」

予定よてい変更へんこう。ママはパパとブラブラしてくるから、三十分後にここへ集合しゅうごうね」

 ママはパパをぐいぐいっぱって連れて行って、ショッピングモールの人混ひとごみにのまれていった。


「パパはさ。ルナとどうせっして良いかわからないんだよ。

 俺とはおとこ同士どうしって関係かんけいせいがある。双子にきらわれたくないから、『たよれるおとうさんぞう』にしがみついてるだけ。

 パパもよわいんだよ」

「うん……」


 そんなことはどうでも良い。

 催事場のすみっこにかんする情報じょうほう案内あんないかたち(在庫ざいこかぎり)コーナーはれです」が催事場の出入り口にデカデカとかかげてある。

 売り切れってどういうこと?

 皆、中古ちゅうこ故障こしょう事故じここわくて、買えないからって……。

 在庫が豊富ほうふな「型落ち」はたくさんあるけれど。

「型落ち(在庫限り)」は廉価れんかで、容量ようりょう機能きのうすくなくて、使つかいやすいのに……。

 新品とか型落ちでも、「在庫せ」ちなんていやだもん。


 それに、こんなかずあったら、められない。

 無理むり無理むり

「おての型落ち(在庫限り)は、もう在庫無いね。

 せっかく事前じぜんに『ぎんとおししゃせい2030秋冬あきふゆモデル孔雀尾ピーコックテイルWホワイト』ってめて来たのに、選びなおさなきゃね」

 ルナは優柔ゆうじゅう不断ふだんなんだよ。

 日親がいないと、やっぱり駄目だめみたい。

「日親、手伝てつだって!」

「もう、小五なんだから、選べるだろ。

 じゃあね!」

 日親が行ってしまう。

 どうしよう……。


 魔具こと魔術まじゅつ道具どうぐは三十cmセンチメートル前後ぜんご

 製造せいぞう会社がいしゃによって一~三cm程度ていどちがいはある。

 ソプラノリコーダーくらいのながさかな。

 にぎって使つかうけれど、手にわせたグリップがついているわけじゃ無い。

 いわゆるファンタジーの魔法まほう使つかいが手にしているみじかつえみたいなアイテムだ。

 でも、先端せんたんえだのようにほそくなっている木製こくせいづえれてしまうので、材質ざいしつとしてみとめられていない。

 筒状つつじょう棒状ぼうじょう角柱状かくちゅうじょう

 デザイン性がたかいものもある。

 未確認みかくにん疑似ぎじ生物せいぶつ兵器へいき【ウミック】にけて、魔術(魔弾まだん)をはなって、消失しょうしつさせなければならない。

 魔弾や魔銃まじゅう日本にほん禁止きんし用語ようご

 銃刀じゅうとう規制きせいのある日本では「魔弾まだん道具どうぐ」ということも問題もんだいがあるので、「魔術まじゅつ道具どうぐ」か「魔具まぐ」とばれている。


 ルナは今までと同じぎんとおし社製をかんがえている。

 三十分でどれかに決めないとな……。

 また、パパが勝手かってに決めかねないよね。

 こまったな。

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