最終話
その後、事件の場に居合わせた私も、警察の事情聴取を受けた。
何を訊かれても、答えようがなかった。
なぜあんなことになったのか見当もつかない。
想像することさえ困難だった。
ただ、カルメンは私よりマイクを選んだ。
そういうことなんだろう。
自分に言い聞かせるだけで精一杯だった。
後で刑事から伝え聞いたカルロスの供述によれば、カルメンはマイクと2人でニューヨークへ行くと言い張り、彼がいくら反対しても耳を貸さず、ついにはあの凶行に及んでしまったとのことだった。
片田舎のちっぽけな事件は、元英雄の犯行というだけでたちまち国中へ広がり、各紙とも様々な見出しで面白おかしく書き立てた。
牧場の経営は当面アンセルモが引き継ぎ、マリアはアンダルシアの親戚へ預けられることになった。
私は彼らにさよならを言って、その地を去った。
ほんの数日滞在しただけのはずが、日本を出る時にも感じなかった切なさが胸を締めつける。
実に寂しい別れだった。
最後に、マリアはしゃくり上げながら一輪の紅い薔薇をくれた。
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バルセロナの港は相変わらず穏やかだった。
柔らかな陽射しが頭上から降り注いでいる。
それでも、私の胸は着いた時と同じように重く沈んでいた。
一つだけ違うのは、そろそろ夏が終わり、ひんやりした秋風が吹き始めていることぐらいだ。
私は最後の煙草に火をつけ、色とりどりのテープが乱れ舞い、出航のドラが鳴る中、一人デッキを去り、船室へと降りて行った。
バルセロナの熱い風 令狐冲三 @houshyo
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