最終話『最初で最後の初デート』



「菜乃葉、いつまでそっち向いてんの」

 悠人と二回目のキスを終えると菜乃葉は羞恥心に耐えられず悠人から一定の距離をとり顔を背けていた。その様子に痺れを切らした悠人はムスッとした表情でしかし顔は赤く染めながら菜乃葉へ声をかけてくる。

「えっ、だ、だって……」

 悠人の言葉で顔を赤らめる菜乃葉は「なんか恥ずかしい」と声に出して悠人へ意思表示をする。すると突然悠人はその事にはもう触れず急に何かを思い出したのか「そういえば」と声を上げる。悠人の赤く染められていた頬はいつの間にか元に戻っていた。

「スマホ大丈夫? 失くしたなら警察に届けた方がいいんじゃない?」

「あっ!」

 その言葉で菜乃葉はスマホ紛失の件を思い出す。すっかり忘れていた菜乃葉はその言葉で全てを思い出した。しかし同時に一つの疑問が浮かび出す。

(あれ?)

「どうしてスマホ失くした事知ってるの?」

 悠人にはスマホで連絡が取れていないのだ。失くした事はまだ悠人には伝えられていない筈である。すると悠人は表情を変えずそのまま答え始める。

「菜乃葉の友達っていう人に聞いた。名前は知らない」

 菜乃葉が思い浮かぶ友達はあすかしか思い当たらない。ということは、悠人は大田高まで来ていたのだろうか。菜乃葉は驚いた表情で悠人へ問い掛ける。

「あすかに!? そうだったんだ。え、もしかして大田高まで来てくれたの?」

 そう尋ねると悠人は「うん」と菜乃葉の問い掛けに頷く。

(悠人くん、来てくれてたんだ……優しい)

 菜乃葉は悠人が遠回りになる大田高まで来てくれた事に再び顔を赤く染めると悠人へ素直な感謝の気持ちを伝える。悠人のその行動がとても嬉しかったのだ。悠人はその感謝に「別に」と答えるとすぐにスマホ紛失の件へと話を戻す。

「それより警察行くなら一緒に行くけど」

 その言葉に菜乃葉は両手を目の前で振りながら遠慮の言葉を出した。

「あ、ううん大丈夫。実は……思い出したの」

 菜乃葉は悠人へ気持ちを伝えた事で今朝の出来事を全て思い出していた。スマホは間違いなく、自室の机の上にあるだろう。

「朝、バタバタしててよくよく考えたら家に置いてきたみたい……心配かけてごめんね」

 菜乃葉は急激に申し訳なさと恥ずかしさが込み上げてくる。そして頭を下げるとそのまま悠人に謝罪した。悠人には菜乃葉の不注意で手間をかけさせてしまったのだ。すると悠人は謎の空白時間の後突然「ぷはっ」と笑いを上げて菜乃葉の謝罪に反応する。

「何それ、菜乃葉らしい。全然いいよ」

 悠人は全く気にしていないようだった。その笑い顔を見て菜乃葉は悠人の無邪気な笑顔にときめく。悠人の無垢な笑い顔が可愛らしく、菜乃葉はそんな悠人に心を打たれながら「ありがとう」と口にした。

「あっ! そうだよプレゼント!!!」

 そこで菜乃葉はもう一つ重要な事を思い出す。悠人へ用意した誕生日プレゼントを渡さないわけにはいかなかった。

「用意してくれたの?」

「うん」

 悠人は菜乃葉の言葉に仄かに顔を赤らめる。嬉しそうなその表情がまた可愛らしい。菜乃葉は鞄のチャックを開いてプレゼントを取り出す。鞄は中まで雨で濡れてしまっていたが、中に入れた悠人へのプレゼントはラッピングの上からも念の為厳重にビニール袋で包んでいた。そのおかげか雨の影響は無さそうだった。菜乃葉はビニール袋から綺麗にラッピングされたプレゼントを取り出すと両手でそれを持ち、悠人へ差し出す。

「悠人くん、お誕生日おめでとう」

「……ありがとう」

 悠人は照れた様子でプレゼントを見てそう告げる。菜乃葉から手渡しでプレゼントを受け取った悠人は「開けていい?」と尋ねてきたので菜乃葉は明るく頷いてみせた。その言葉で悠人はゆっくりとラッピングを解いていく。

「サボテン……の置き物?」

「ふふ、実はそれね」

 あすかとショッピングモールへ行った際に、菜乃葉は悠人の誕生日プレゼントも探していた。悠人がサボテンを好きだと知った菜乃葉はサボテンに関する何かをプレゼントしたいと思っており、探し回っていたのだ。すると丁度プレゼントに相応しい物を見つけ、購入したのがこのサボテンモチーフの置き物だった。

「真裏のボタンを押すと光るんだよ! ライトとして使えるの」

「へー」

 悠人は真裏のボタンのスイッチを押すとサボテンが点灯する。サボテンの形をした置き物は本来チクチクしたサボテンの針部分も作り物の為、あえて丸みを帯びた仕様にされており、怪我をする危険もなさそうだった。そこまで大きくもないので邪魔にもならないだろうと菜乃葉は購入を決定したのである。それに何より可愛くて一目惚れだった。

「可愛いでしょ! 悠人くんサボテン好きって言ってたから喜ぶと思っ……」

『ちゅっ』

「!!!」

 途中で悠人から頬にキスを落される。突然の事に菜乃葉の顔は一気に赤く染まっていた。

「ありがと。大切にする」

「う、うん」

(ほっぺチューされちゃった)

 自身の中できゃ〜と叫んでしまうほどに菜乃葉は舞い上がっていると悠人の次の一言で更に気持ちは高まりをみせる。

「それと、明日デートなの忘れてないよね?」

「!」

 そうなのだ。明日は悠人と念願の初デートであり、菜乃葉が気合を入れるべき二日目である。

「も、もちろん!」

 忘れるわけないと菜乃葉は付け加えて答えると悠人は屈託のない笑みを躊躇いなく見せてから「良かった」と声を出した。その本当に嬉しそうな悠人の笑みに菜乃葉の顔は再び赤く染まる。

「そろそろ帰ろうか。家まで送るよ」

 玄関扉を少し開け、雨の様子を確認した悠人は雨も弱まってきたからと菜乃葉へ手を差し伸べる。「ん」と言われて差し出された手を菜乃葉は愛おしげに見つめながら「うん」と返答して恋人になった悠人の手を握りしめた。

 これまでの人生で、恋人という存在は楽しいものなのか、楽しいとして庭以上に楽しいと思えるのか、菜乃葉はずっと疑問だった。だが菜乃葉は今、間違いなく悠人と共にいる時間を一番幸せであると感じていた。とてつもなく幸せなのだと。悠人と両想いになれることがこんなに嬉しい事だと思わなかった菜乃葉は悠人と今いるこの時間がいかに貴重なものであるかを実感していた。

「そういえば」

 二人で道端を歩く最中に悠人は声を上げた。歩き始めた頃には雨は止んでおり、初めて手を繋ぎながら歩ける事にときめきを感じていた菜乃葉はその声でハッと我に返る。悠人の方を見て言葉を待つと悠人はそのまま菜乃葉を見つめながら言葉を続けた。

「オレの写真、菜乃葉の友達が見たって言ってたけど撮った覚えないから気になってた」

 菜乃葉はその言葉を聞いてああ! と声を出す。確かに悠人個人の写真は持っていなかったが、あすかに写真はないのかとせがまれた時にキャンプ合宿の集合写真を思い出したのだ。そして自宅に仕舞われていた集合写真に小さく写る悠人をあすかに見せていた。

「ふーんそっか」

 それを告げると悠人は納得した様子で声を返す。

「もしかして盗撮してると思った? でも流石に嫌でしょ」

 悠人への気持ちを自覚してから、悠人個人の写真が欲しかったのは事実だが、流石に無断で写真を撮るのは抵抗があった。菜乃葉は悠人に大胆ながらも尋ねてみると悠人は菜乃葉に目は向けずこう答えた。

「……そりゃ嫌だけど、菜乃葉だったら全然いい」

 そう答える悠人の台詞に菜乃葉は再び顔を赤らめ、悠人もそれから声を出さず仄かに顔を赤く染めるだけだ。そのまま暫く二人は沈黙しながら足を動かしていた。

 少しの沈黙の後、菜乃葉は悠人へ視線を向けるが照れ臭くなりすぐに視線を逸らしてしまう。すると今度は悠人からの熱い視線を感じた。しかし横目で悠人の方を見ると悠人の目線は道路の方へ移っており、目を合わす事はなかった。

(今、もしかして見られてた?)

 先程の悠人からの視線に心を弾ませながら菜乃葉は心の底から帰りたくないと思った。しかし数十分もすると菜乃葉の自宅付近まで到着してしまう。

「あたしの家、このマンションの五階なの」

「マンションだったんだ」

「そう」

 菜乃葉の暮らすマンションの近くまで二人でたどり着くとそのまま上を見上げながら二人で会話をした。菜乃葉は自宅の前まで悠人が送り届けてくれた事に嬉しい気持ちを募らせながらもそんな気持ちのまま悠人へ手を振って別れの挨拶をする。

「じゃあ……また明日! 悠人くん、送ってくれてありがとう」

 笑顔でそう言って背を向けようとすると「ちょっとまって」と悠人に呼び止められた。

「え?」

 不思議そうな顔で悠人を見つめる菜乃葉に悠人は近寄るとそのまま菜乃葉の右頬に『ちゅっ』とキスをした。一瞬で終わるそのキスの後、悠人は顔を赤らめたまま菜乃葉の顔は見ずに声を出す。

「じゃ、また明日」

「う、うん」

 悠人の顔を赤くなった顔で見つめた後、二人は背中を見せ合って自宅へと向かう。菜乃葉は悠人に対して心の中でもう一度大好きだと想いを伝えながら自宅のドアを開けて家路に着いた。

(もうホント、夢みたい)

 先ほど起こった全ての奇跡のような出来事に菜乃葉は幸せを感じながら明日へ向けて準備を始めた。








 翌朝も菜乃葉の緊張は一向に止まず、自身の格好がおかしくないか突然不安に駆られる。

「あたし……おかしくないかな?」

 今日は記念すべき悠人との初デートだった。菜乃葉はこの日のために師匠とも呼べるあすかから恋愛のノウハウを色々と教わっていた。勿論、ファッションについてもだ。あすかに言われた通りの髪型を毎晩練習してはコーディネートについてもあすかに助言してもらい、当日のメイクに関してもあすか直伝のおすすめメイクを教わっていた。あすか様様である。

 初めてヘアアレンジを練習した時、それはもう見るに耐えない出来上がりだったが、何度も練習を重ねたおかげか、今回は上手く纏まっていた。菜乃葉の髪の毛は頭の上で大きくお団子を作り上げ、顔周りや後れ毛をコテアイロンで可愛らしく巻き付けて今時と言われているこなれ感を演出する。耳には一度もつけたことがない花をモチーフにしたイヤリングを、首元にはパールのネックレスを飾り付ける。そして極め付けは服屋で一目惚れした可愛らしいワンピースだった。胸元に施された花の刺繍に腰から足にかけて繋がれたスカート部分は膝上までの短いスカートの上からチュール素材にラインの入った膝丈スカートが合わさり女の子らしさを強調させている。

「菜乃葉ー朝ご飯できたけど」

 鏡を見て自身の姿を確認していた菜乃葉に突然母が声を掛ける。母はそのまま菜乃葉の部屋まで入ると菜乃葉のいつもとは違う姿に「あら」と声を溢す。

「あんた、デートでもするの?」

 母は両の指を合わせてかわいーじゃない! と笑みを向けてそう告げてくる。菜乃葉はその言葉でようやく母の姿に気が付いた。

「あ、お母さん」

 照れ笑いをしながら菜乃葉はぎこちない笑みを母へ向けると母は「いつもと全然違うじゃない」と嬉しそうにそう問いかけてきた。菜乃葉は自分でもこんな格好をするとは夢にも思ってもいなかったため、母に自分が変ではないか聞いてみる事にした。すると母はそんなわけはないという顔で菜乃葉の格好を褒めてくる。

「全然よっ! いつもより良いじゃない!」

「良かった……」

 菜乃葉はその言葉にホッと胸を撫で下ろすと鞄を手に取り部屋を出ようと母に声を掛けた。

「それじゃあ行ってきます!」

「あらもう行くの?」

 母はキョトンとした様子で菜乃葉の方を見る。

「うん! ご飯作ってくれたのにごめん」

 菜乃葉は申し訳なさそうにそう謝ると母は気には留めていない様子で「いいわ、行ってらっしゃい」と温かく見送ってくれる。そのまま背中を向けて自宅の扉を閉める菜乃葉の背中を母は嬉しそうに眺めて小さく呟いた。

「植物しか興味のなかった子が……」








* * *

 悠人と菜乃葉は、昨日の帰り道の間で翌日のデートの待ち合わせをどうするか話し合っていた。

「待ち合わせは菜乃葉の家でいい? 迎えに行くよ」

 悠人は菜乃葉にそう提案したが、菜乃葉はそれを断った。そして待ち合わせ場所は庭にしたいと口にしたのだ。

「いいけど理由でもあるの?」

 悠人は何故庭を待ち合わせ場にしたいのか分からなかった。直接理由を尋ねてみると菜乃葉は嬉しそうに空を見上げてまるで当然のようにある言葉を口にする。

「うん……だって私たちを出会わせてくれた庭だから、初デートの待ち合わせはここがいいの」

 その言葉を聞いて悠人は納得をする。そして同時にそんな菜乃葉を改めて愛おしく感じた悠人は顔を赤らめながら菜乃葉を見つめた。



 翌朝を迎えた悠人は約束の時間の十五分前に庭へと到着する。早めに来たのは菜乃葉を待たせたくなかったからである。悠人はプルオーバーにスタジャンを羽織り黒いキャップを身に付けた格好で初デートに臨んでいた。そのまま菜乃葉の姿を待つ。

 待ち合わせの五分前になると門の開く音が聞こえた。悠人はすぐに顔を門のほうへ向けると思いもよらない彼女の姿に目と心、いや五感のすべてを奪われた。

「……っ」

 目の前で照れたように微笑みかける彼女の姿はどうしようもないほどに愛らしくて美しく、彼女と目が合うだけで気がおかしくなりそうだった。それほどまでに素敵な女性が、目の前に立っていた――。

* * *







(これからあたし、デートするんだ……悠人くんと…)

 慣れないヒールで歩きながら菜乃葉は胸を高鳴らせる。コツコツと聞き慣れないヒールの音を地面に響かせながらいつもの庭へ到着した。門をキィ……と開くと庭の中で佇む悠人がこちらを振り向く。悠人はすぐに「菜乃…」と名前を呼ぼうとするが何故か急に声は小さく掠れ、最後に「は…」と呼びきった時には菜乃葉の事を目を見開いて注視していた。

「おはよ。悠人くん」

 菜乃葉はいつもと違う自分を見せる事に少なからず羞恥心があった。あすかや母には背中を押されたが、悠人はどのような反応をするだろうか。そんな事を考えていると気恥ずかしさと不安が同時に溢れてくる。

「今日天気良くて良かったね」

 菜乃葉は精一杯の笑顔で悠人へ微笑みかけると右手を上げて小さく手を振ってみる。しかし悠人は顔を真っ赤に染めたまま、押し黙ると急に後ろに顔を向けてしまった。

「え?」

 その様子を見て菜乃葉は不安に駆られる。悠人の顔が赤い事は目に留まっていたが、悠人が無言でそっぽを向いてしまったことに気が入ってしまっていた。

(え、やっぱり変かな!?)

 菜乃葉は不安げな声で「ゆ、悠人くん? どうしたの?」と問い掛けてみると悠人はその声ですぐにこちらを振り向いた。先程の真っ赤な顔は消え、いつもの悠人が菜乃葉の瞳に目を合わせる。

(あ、こっち見た)

 悠人と目が合い、安心すると共に悠人の目線に射抜かれた菜乃葉はドキッと動悸が速まっていく。すると悠人はまた顔を赤らめると急にとんでもない事を口にしてきた。

「……めちゃくちゃかわいい」

「えっ!?」

 突然のその褒め言葉に菜乃葉の動悸は更に加速する。

「あ、ありがとう…」

 心底安堵するもののストレートすぎるその悠人の発言は恋愛経験値が限りなく低い菜乃葉には耐え難い恥ずかしさがあった。そのまましばらくお互い黙って顔を赤らめていると悠人は帽子のツバを右手でぎゅっと引っ張りながら再びとんでもない発言をかましてくる。

「……………お姫様みたい」

 ボソッと呟くように、しかし菜乃葉にははっきりと聞こえたその台詞に菜乃葉は動揺する。そして同時に『ドッキーン』と聞いたこともないような胸の高鳴りが身体中に響いていた。

(お、お姫様!?)

 そんな事は人生で初めて言われた言葉であり、一生言われる事もないと決め付けていた台詞だ。まるで童話の中のお姫様にでもなったかのような気分を味わった菜乃葉は緊張のあまり言葉を詰まらせながら声を出す。

「ゆ、悠人くん、そこまで大袈裟に言わなくても」

 嬉しい気持ちは大きかったが、恥ずかしすぎてなんと答えたらいいのか分からない菜乃葉はあははと馬鹿っぽい笑いで照れ隠しをしながらそう返す。そんな菜乃葉に悠人は逸らしていた目をもう一度合わせるとやけに真剣な眼差しで声を出した。

「大袈裟に聞こえる?」

「えっ」

 その視線は冗談と言うにはあまりにも不釣り合いな程真剣で、菜乃葉はそんな悠人に圧倒される。すると突然悠人は距離を縮めてきた。

「オレ、嘘は言わない。お世辞も」

「ひゃっ!」

 ズイッと菜乃葉の顔の近くまで身を乗り出す悠人は僅かに頬を赤らめながらも真剣な顔つきで菜乃葉の両腕を優しく掴み出す。そんな悠人の一挙一動に菜乃葉の赤面は止まらなかった。

「菜乃葉が本当に可愛いから言ってる」

 悠人に触れられた両腕は異常に熱く、菜乃葉はそのまま真剣な眼差しの悠人に胸をときめかせながら目線を合わせていると悠人も菜乃葉をじっと見据えながら「信じた?」と尋ねてくる。そして菜乃葉も素直に気持ちを伝えた。

「うん……信じた…」

 そう返すとそのまま悠人の顔は更に近付き菜乃葉の唇を奪っていく。

「……っ」

 菜乃葉は真っ赤に染まる顔でそのまま目を閉じると悠人との口付けに気持ちを巡らせた。

 悠人の唇が菜乃葉から離れると二人はそのままお互いの足元を見やり、沈黙する。数秒が経過すると悠人はキャップを被り直して「行こう」と声を発した。

「そっそうね! ご、ご飯食べよ!」

 菜乃葉は気恥ずかしさを飛ばすかのように「お腹もすいたし」と付け足して悠人の意見に同調する。すると悠人は不思議そうな顔をして菜乃葉に目を向けた。

「? もしかして食べて来てないの?」

「あっ」

 そこで菜乃葉は失態を犯したことに気が付いた。悠人に寝坊してしまったと思われているかもしれないからだ。慌てた様子で菜乃葉は悠人の目を見ると必死に声を出し始める。

「ね、寝坊したわけじゃないのよ!?」

「……」

「ホントに!」

 本当に寝坊はしておらず、むしろ早朝の四時に目が覚めてしまった程には早起きをしていたのだが、準備に時間がかかりすぎていつの間にかご飯を食べる余裕がなかったのだ。しかしこんなに必死に悠人へ訴えかけているのは逆に怪しい上に言い訳がましい気もしていた。悠人はそんな菜乃葉の様子を静かにじっと見つめている。

「嘘じゃないわよ!」

 そこまで言うと悠人は堪えていたのか、急にぷはっと吹き出すと楽しげに言葉を漏らした。

「別に疑ってないよ。もし寝坊してても気にしない」

 口元に手を当てて笑うその姿は出会った頃の悠人とはまるで別人で、菜乃葉は悠人の楽しげに笑うその姿に再び心を奪われた。

「オレは菜乃葉の事、よく知ってるつもりだからそんな慌てなくても大丈夫だよ」

 笑みを零しながら悠人はそう言うと菜乃葉の方へ手を差し伸べる。菜乃葉は「う、うん……」と返しながら悠人の愛おしい笑みをじっと見つめる。菜乃葉は改めてこれがデートなのだと体感する。気分は最高潮と言っても過言ではない程昂り、まだ待ち合わせ場所から動いていないにも関わらず一日を満喫したかのような充実感を得ていた。しかし、デートはこれからなのだ。その事に更に嬉しさが増す。

「何食べたいの?」

「えーっとね……」

 二人は初めて恋人繋ぎをしながら道端を歩き始める。目的地のショッピングモールまで徒歩で向かう間も二人は笑顔を絶やす事なく幸せそうに足を進めていた。








* * *

 まるで天使のようだなんて、誰かに思う事などなかった。しかし菜乃葉にだけは何度でもそう感じる。一度だけではなかった。それは悠人が、菜乃葉を自分が思っている以上に特別な存在である事を示唆していた。

「おはよ。悠人くん」

 目の前の天使は小さな手をひらひらと振りながら世界で一番可愛い微笑みを悠人へ向けてきた。悠人は真っ赤に染まった顔で口をひらけず押し黙る。あまりの可愛さに言葉を失う悠人はそのまま左腕で顔を隠しながら後ろを向くと、そこで固まった。

(え? 菜乃葉、なんか今日一段とめちゃくちゃかわいい。なんかいつもとちがう)

 心中では可愛すぎる彼女を何度も可愛いと感じ、ただそんな菜乃葉を直視できない自分がいた。菜乃葉が可愛すぎるのだ。

「ゆ、悠人くん? どうしたの?」

 しかしその声で悠人は菜乃葉の方へ身体を戻した。

(落ち着け)

 自身にそう言い聞かせながら真っ赤な顔を封印させる事に成功した悠人は菜乃葉と目を合わせると可愛すぎる彼女の顔が赤く染まるのを間近で目にする。物凄く可愛い。

「……めちゃくちゃかわいい」

 素直に思った事を告げると菜乃葉は驚いた様子で悠人を見て気恥ずかしそうにお礼を言ってくる。そうしてしばらく沈黙が続く。

(やっぱダメだ)

 可愛いと素直に無難な褒め言葉を告げて終わりたかったが、あまりの可憐さにそれだけでは満足できなかった。感情表現が不得手な悠人にとって頭の悪そうな発言をするのは抵抗があった。しかしそんな抵抗さえも簡単に吹き飛ばしてしまう程に、目の前の彼女が可愛すぎた。

「……………お姫様みたい」

 しかしあまりの可愛さでぼそっと控えめな声になる。だが近距離にいる菜乃葉にははっきりと聞こえたようであまりにも可愛い菜乃葉の顔は更に赤く染まり、抱き締めてしまいたくなるほどの表情を見せる。しかし菜乃葉はようやく口を開くと何故か自分を下げるような言葉を口に出す。

「ゆ、悠人くんそこまで大袈裟に言わなくても」

 あははと笑いながら真っ赤な顔でそう告げる菜乃葉はとてつもなく可愛かったが、悠人は内心ムキになる自分がいる事に気付く。贔屓目に見ずとも目の前の彼女は誰に劣ることもなくとんでもない可愛さを持ち合わせているのに、何故謙虚な発言をしてくるのだろうか。悠人は如何に菜乃葉が可愛らしく、自分が心の底からそう思っているのかを分かってほしかった。

「大袈裟に聞こえる?」

「えっ」

 悠人は真剣な眼差しで菜乃葉へ近寄ると彼女のヒールに自身のスニーカーが『コツン』と音を立て、僅かだが当たるのを認識する。悠人はそのまま菜乃葉へ身を乗り出し彼女の黄緑色の瞳に目を合わせると嘘偽りのない言葉を並べ立てた。

「オレ、嘘は言わない。お世辞も」

「ひゃっ!」

 可愛らしい声で小さく悲鳴をあげる彼女の声が悠人の心に刺さってくる。悠人はそのまま菜乃葉の両の腕を優しく掴むと続けて言葉を放った。

「菜乃葉が本当に可愛いから言ってる」

 菜乃葉は照れていながらも悠人へ目線を合わせてくれる。そんな彼女の顔は自分から距離を詰めたとはいえ、あまりに近く、悠人の心臓は高鳴りを始めた。

「信じた?」

「うん……信じた…」

 見つめ合うこの空気感があまりにも甘くて落ち着かなかった。しかし悠人はこの空気が、嫌いだったはずのこの空気感が、今はどうしたことか好きだった。悠人は菜乃葉へ更に一歩ずつ近付くとそのまま彼女の柔らかい唇を奪いに行く。菜乃葉は小さい声を上げながら悠人の唇を受け入れた。

 悠人は昨日から立て続けに起こるこの奇跡に幸福感以外の感情をすっかり忘れていた。それほどまでに、菜乃葉との時間は特別で、生涯大切にしたいと思えるものだった。

* * *







 菜乃葉と悠人は有名な大型ショッピングモールへ足を運ぶとハンバーガー専門店に向かう。菜乃葉は朝食代わりにハンバーガーのセットを注文し、悠人はドリンクを単品で注文した。席へ座り幸せそうにハンバーガーを頬張る菜乃葉は思わず「おいし〜」と声を漏らす。そして菜乃葉は悠人にも食べてもらおうとハンバーガーを目の前に差し出すと悠人は照れながらも菜乃葉の持つハンバーガーを一口齧った。いかにも恋人らしい事をした二人は上気した顔を時々見合いながら目の前の料理を口の中に入れた。



 映画館に行った記憶がないと悠人に聞いていた菜乃葉は最近テレビで大々的に取り上げられている有名なラブロマンス映画を一緒に見ようと提案する。悠人は二つ返事で了承すると早速チケットを購入して一緒に映画を見る。全年齢の内容ではあったが、恋愛に疎かった菜乃葉からすれば中々甘い内容のストーリーに菜乃葉は顔を赤らめながら映画に集中していた。そんな菜乃葉の隣に腰掛ける悠人は彼女の手を握るタイミングを見計らっていた。



 映画が終わると悠人の提案で二人はショッピングモールの中庭へ足を運んだ。そこには小さなフラワーパークが広がり、旬の花々が花壇にたくさん咲いていた。菜乃葉はひとつひとつの花に目を輝かせながら「この花壇やばい!!!」と声を上げる。悠人はそんな菜乃葉の興奮ぶりに笑みを零しながら「好きだと思った」と口に出すのであった。



 悠人との初めてのデートは菜乃葉の心をどんどん潤していく。大好物のハンバーガー、映画、そして菜乃葉にとって欠かせない存在の庭や植物も全て、悠人と一緒に行動する事で何倍も何十倍も楽しく感じられていた。こんな気持ちは本当に初めてであった。

 その後もしばらく二人でモール内を歩いていたが、二人は再び中庭へ足を向けていた。少し人気の少ないエリアに来たところで悠人は突然足を止める。

「菜乃葉」

 悠人の足に合わせて菜乃葉も思わず足を止めると「ん? どうしたの?」と問い掛けた。

「足、疲れてない?」

 すると悠人は菜乃葉のヒールに関して言及してきた。

「菜乃葉がかかとの高い靴履いてるの珍しいから、無理しないで」

 悠人のその言葉に菜乃葉の心は温かくなる。菜乃葉は照れた顔を見せながら悠人へ「ありがとう」とお礼を言うと「そしたら少し休みたいな」と悠人の言葉に甘える事にした。実のところ、人生で初めてのヒールは思っていた以上に歩きにくく、靴擦れこそしなかったものの足に意識をむけすぎて疲れていたのだ。しかしそれを苦に思わなかったのは悠人とのデートがとてつもなく楽しいものだったからであった。

 悠人は菜乃葉の要望に「うん、そうしよ」と答えると辺りを見回してどこか座るところがないか探し始める。菜乃葉はそんな悠人の言動で、初めて会った頃の悠人を思い出していた。

 悠人に初めて会った時は、正直冷たいイメージを感じていた。しかしそれは、悠人の性格なのだろう。おそらく悠人は特別な人物にしか心を開かない。だからこそ、出会った当初は冷たいと感じたのだ。

 だが、こうして今の菜乃葉を気遣ってくれる事や何より菜乃葉自身を好いてくれたということは、菜乃葉の事をとても大切に思ってくれているのだと自惚れてもいいのだろうか。

「あそこ座ろ」

「うん」

(なんて、調子乗りすぎかな)

 悠人が指差す先にはガーデニング仕様の椅子とテーブルが並べられていた。悠人は菜乃葉を誘導して菜乃葉は悠人の後ろをついていく。頭の中で悠人の気持ちに自惚れかけていた菜乃葉は胸を高鳴らせながら目を伏せて今がとてつもなく幸せであることを改めて実感した。

「菜乃葉。こっち座りなよ」

 顔を上げると悠人が椅子を引いて菜乃葉を呼ぶ。菜乃葉は悠人へお礼を告げながらその引いてくれた椅子に腰を掛けた。

(よく見ると素敵な場所……ガーデニング意識してるなー)

 菜乃葉は頭の中が悠人でいっぱいだったが、ふとあたりを見渡すと、今いる場所が花や植物で溢れている事に気が付いた。素敵な雰囲気のその場所に気持ちを昂らせていると正面に腰掛けた悠人が頬杖をついて菜乃葉をじっと見つめたまま声を出す。

「……ひとつ聞いてもいい?」

「う、うん」

 悠人の口角は上がっていた。そんな悠人の顔が愛おしくて菜乃葉は突然の問い掛けに思わず口ごもりつつも頷いてみせる。

「菜乃葉はどうして植物が好きなの?」

 この質問はされそうでされなかった質問だった。菜乃葉は顎に手を当てうーんと声を漏らすと思考を始める。それは菜乃葉にも理由がなかったからだった。悠人から聞かれた事で、初めてどうしてだろうと自分でも疑問を抱き始めていた。

「植物を見ると……なんか安心するのよね、悩みがあったらいつも植物見てた」

 物心ついた時から菜乃葉は植物が好きだった。両親から毎年誕生日プレゼントを貰う時も決まって植物の種や図鑑などばかりねだっていた記憶がある。それは高校生になった今でも同じだ。

「へえ、なるほどね」

 あまり明確な答えは出せなかったが、悠人は納得したようだった。しかし菜乃葉は悠人からの質問が嬉しく、素直に気持ちを表した。

「でも悠人くんから質問なんて嬉しい。あんまり質問好きじゃなさそうだから」

 えへへと笑いながら菜乃葉はそう告げる。現にキャンプ合宿で悠人に質問が嫌いだと言われたことも覚えていた。すると悠人は視線をテーブルに向けながら口を開いた。

「……うん、オレも自分でびっくりしてる」

 そうしてもう一度菜乃葉の方へ顔を向けると言葉を続ける。

「菜乃葉といると苦手だった事、全部克服できそう」

 そしてまた視線を外して「冗談じゃないよ」と念押しをしてきた。悠人は僅かに頬を赤らめ照れているようだった。その悠人の一連の言動に菜乃葉は気持ちが大きく動く。

(え!?)

「それは良かった……」

(そうなの!? すごく嬉しい……)

 悠人の今の言葉は嬉しい以外に言葉が見つからなかった。菜乃葉は悠人の傷が自分の存在で癒せるならという考えは、烏滸がましい事だと今まで思っていた。いくら好き同士であっても、どうにもできない事だってあるからだ。だが、今の悠人の言葉をそのままの意味で受け取るのなら、受け取っても良いのなら、菜乃葉でも悠人の傷を癒せるのだろうか。菜乃葉はそんな考えを巡らせると居ても立っても居られなくなった。

「ねえ悠人くん」

 菜乃葉は席を立ち、未だ照れたようすで首筋に手を当てた悠人を見据えると前のめりになる形でテーブルに手をつき悠人へ言葉を放った。

「写真とろう!」



 二人は席を立ち、一番綺麗だと感じる花壇の前に立つとスマホを構えて自撮りモードで撮影に挑む。

「悠人くん、カメラ見てね」

 撮るよ〜と言って悠人の側へ近付く菜乃葉に「う、うん」と告げる悠人は珍しくも動揺したようだった。そんな悠人が可愛らしいと感じながら菜乃葉はシャッターボタンを押す。

「バッチリ撮れてる!!」

 そこには悠人に顔を近づけウインクした菜乃葉と仄かに顔を赤らめた無表情の悠人が映っていた。何とも初々しいその写真に満足した菜乃葉は笑顔で「待ち受けにしよっと」と言って喜ぶ。悠人も笑みは見せないが、嬉しそうな様子だった。

 そんな悠人をちらちらと見つめながら菜乃葉は自身の動悸が速い事にも構わず悠人へ声を掛けた。

「悠人くん、耳かして」

「耳?」

 菜乃葉はそのまま悠人へ近付くと悠人の左耳へ顔を近づけ内緒話をするような仕草で口を開く。

「今日、すごく楽しかった。ありがとう。大好き」

 悠人へそう告白すると菜乃葉はすぐに悠人の左頬へキスを落とす。『ちゅっ』と小さな音を立てて、呆気に取られている悠人を真っ赤な顔で見つめていると、悠人は何をされたのか瞬時に理解して顔を菜乃葉以上に赤くさせる。菜乃葉は一歩下がり、口元に両手を当てて恥じらいを見せると悠人は真っ赤な顔で責めるように菜乃葉を見てきた。

「菜乃葉……ずるい」

 甘酸っぱい空気が漂う中、上目遣いで見つめてくる悠人と大胆な行動に恥ずかしさを見せる菜乃葉がしばし見つめ合う。すると悠人は菜乃葉へ一歩近付くともう一度声を発した。

「この後される事もちゃんと考えた?」

「!」

 その言葉に驚いたと同時に悠人はすぐ菜乃葉の顔へ近付いた。キスをされると覚悟して、思わず目をギュッと閉じる菜乃葉の顔に刺激を与えたのは唇ではなくおでこだった。悠人の被るキャップのつばが、菜乃葉のおでこに直撃したのである。痛みはなかった。

 菜乃葉は帽子のつばをそのまま見つめ、悠人はバツの悪そうな顔でつばを上げて帽子を取るとそのまま菜乃葉の唇へ唇を合わせる。

「!!!」

 もう少し後に行われると思われた突然の口付けに菜乃葉の動悸は高鳴る。悠人の唇が離れると菜乃葉は赤面した顔で悠人を見つめる。

(心臓飛び出そう)

 すると今度は何も言わず悠人が角度を変えて再び唇を重ねてきた。唐突な二回目のキスに菜乃葉は動揺するが、それ以上に悠人と口づけを交わせることが嬉しかった。悠人の両手は菜乃葉の背中へとまわり、優しくも力強い手の感触が菜乃葉の鼓動を更に加速させる。そして先程よりも唇の重なる時間は長かった。普段より煩くなった心臓の音は一向に止まなかったが、菜乃葉の頭は心臓の音ではなく、目の前にいる悠人の事しか浮かんでこなかった。

(ああもうあたし完全に……悠人くんの虜だ)

 二回目のキスが終わり余韻に浸るようにまだ顔の近い二人はそのまま互いの足元を見る。そして菜乃葉は小声で呟いた。

「昨日より長い……」

 そう口にした菜乃葉に悠人はもう一度軽いキスを菜乃葉へするとすぐに離れて悪戯っ子のように舌を出して声を出す。

「だって菜乃葉がかわいいから。オレをその気にさせたよね」

 そう言って菜乃葉のひらひら舞う顔周りの髪の毛を手に持って優しく梳いてくる。そんな悠人に菜乃葉は目を合わせると悠人は優しい目をして菜乃葉に口を開いた。

「菜乃葉、さっきの言葉嬉しかった。オレも大好き」

「うん……」

 それから悠人は菜乃葉の頬を愛おしげに触り、そんな悠人の右手を菜乃葉は両手で包み込むように掴んだ。二人は互いに笑みを零し、幸せな時間が二人の間で流れていく。

 この先もこの男の子と幸せに過ごしたい。そんな事を心の底から願いながら菜乃葉は幸福すぎる初めてのデートを終えた。






 悠人との出会いは菜乃葉にとって大きな影響を生み出していた。そしてそれは悠人にとっても同じであった。悠人があの日、あの時間に菜乃葉の姿を見つけた事は奇跡に近かった。学年は異なり、学校も別、自宅も決して近くはない二人が出逢うことは本来有り得なかった。庭の存在がなければ、二人に変化が起こることはなかっただろう。だが、菜乃葉が庭を見つけ、悠人が庭で菜乃葉を見つけたその時から二人の出逢う運命は決まった。偶然ではあったが、その偶然こそが運命なのだろう。

 


 他人に興味を示さず、常にドライな態度を見せる一人の男子中学生。植物観察以外に興味がなく、交友関係の少ない一人の女子高校生。そんな二人が運命的に巡り合い、恋人になった。

 晴れて恋人同士となった菜乃葉と悠人は、今後も様々な発見と愛しさと出会いを繰り返して愛を深めていくだろう。

 二人に障害があろうとも、この二人ならばきっと乗り越えていくはずだ。それは恐らくという不確かなものではない。

 なぜなら二人は互いを、誰にも理解出来ぬほどに想い合っているからだ――。今この瞬間。そして、まだ見ぬ先の未来でも。確実に。










           end






            

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すばらしき人 星分芋 @hoshiwake

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