シチリア島を巡って始まったローマとカルタゴの戦い、第一次ポエニ戦争。数多の激突で、一進一退の攻防を繰り広げていた両国だが、いよいよ雌雄を決する時が来た。第一次ポエニ戦争の起点から終結までをじっくり描いた歴史短編小説。一万文字以内とは思えないような、激動の時代を読むことが出来ます。現代から見ると、戦いの勝敗はあっさり決まってしまっているようにも思えます。しかし、当時の人たちは、内外の事情に振り回され、時に自分を鼓舞しながら、勝利を目指していたのだと感じました。
時は紀元前。シチリア島を巡るローマとカルタゴの海戦が描かれる。序盤、劣勢に見えたローマが勝機をつかんだ理由は?男たちの友情や知略に胸が熱くなる。そしてまた二千年以上昔の話でありながら、内政と戦争も含めた外交のバランスや、兵站確保の重要性など現代に通じる部分もある。古代にロマンを馳せながら一方で、シチリア島がクリミア半島に見えなくもなかったり……科学だけ進歩して二千年やそこらじゃ本質の変わらない人類に、諦観を抱いたりもする。読後、様々な思いが去来する本作。ぜひ読んでみては!?