第5話

自問自答をしていると、携帯に三件の連絡が来た。

 一件目は、美麗が誘拐された場所の地図だ。俺の家から15分位の所らしい。

 二件目も美麗からで、俺の家の前に調査用の機材一式を届けたらしい。

 最後は、俊が誘拐された場所に、社章のような物が落ちていたという報告だ。写真も添付してある。


 仁)幸、機材が届いたから早速調べて欲しい事がある。この社章についてだ。


 幸)うん、何か分かったらすぐに共有する。


 仁)オッケ、じゃあ俺は、俊の手伝いしてくる。流石に一人で三箇所は申し訳ない。


 その後、俊と合流して、周辺の捜査を進めると、次々情報が出て来た。


 俊)俺が誘拐された現場には、社章の他に俺のタオルが落ちていて、幸が誘拐された現場には、幸のストラップが落ちていたよな。


 仁)あぁ、多分二人とも誘拐されない様に抵抗したから、所持品を落としたって事か。だけど、美麗が誘拐された現場には何も無かった。不自然だよな、美麗は抵抗しなかった?


 俊)抵抗する間も無かったとしても、犯人と美麗の痕跡が一つもないのは...


 もしかして、美麗が裏切り者なのか?

怜夜に協力を?確かに、美麗は金持ちだし、

辻褄は合うが、そんな簡単な事か?


 俊)うーむ、考えても分からん。とりあえず、幸と連絡取ろうぜ、何か掴んでいるかも。

 

 仁)そうだな、幸に結果聞かないとだし...


 幸に連絡するために、スマホを開くと三件のメッセージが来ていた。

 一つ目は、社章の会社の名前と、親会社、子会社などの関係図だ。

 二つ目は画質は荒いが、怜夜と思わしき人物の写真。一部を拡大しており、胸元に社章らしき物が付いていた。さらに補足説明には、


"社章の会社は〇〇社で、美麗の父が経営している会社の子会社である"


"ダークウェブ経由で見つけたあの日の怜夜を映した動画の一部に、この社章と一致するものが映っている"と。


 つまり、二つの情報を整理すると、怜夜は美麗の父の子会社の社員で、美麗と繋がる決定的な証拠だ。美麗はほぼ黒と見て間違いない。


 三つ目は、一言だけ


 「たすけて」


と短い文字が並んでいた。これが幸のSOSなら...


 仁)俊、急用が出来たから家に戻る。後で

合流しよう。


 俊)俺も行くか?


 仁)俺一人で行く、代わりに俊は美麗の家を訪ねて、本人がいるか確認してくれ。分かったらすぐに連絡を!


 俊に伝言した後、走って家まで戻ると、そこには美麗がいて...


 美)仁、遅かったね。やっと分かった?怜夜と私の事。


 仁)あぁ、美麗と繋がりがある事が分かった、俊と幸の協力でな。次は俺が質問するぞ。幸はどうした?


 美)...まだ言わないわ。それより、私に対してどう思ってる?


  憎い? 悲しい? 怒り?


 仁)...まだ分からないけど、幸に何かした事に関しては怒ってるぞ!


 美)やっぱり、仁は友達思いで、家族思いね。だから私は好きになった、どうしようも無い位に。好き過ぎて、私以外を見ているのが許せない。例え母親でも、親友でも。


 仁)だからあんな事を?友人か母親、どちらかを確実に消す為に。


 美)えぇ、あの状況なら、仁は片方を見捨てるしか無い。それに私は分かっていたわ、二つを天秤にかけた時、人数の多い方を選ぶと。


 仁)自身の手は汚さず、傍観してたってわけか。つまり、怜夜はただ操られていただけ。ゲームの後、あいつはどうした?

 

 美)まあ、情報漏洩しないようにしたわ。

今は、幸が掴んだ情報が厄介だから、後処理に来たの。


 仁)幸は生きているのか?教えてくれ。


 美)今の所は生きているわ。ついでに俊の身柄も預かっているの。さっき、家に訪ねてきたらしいから、一旦確保したわ。


 仁)二人を解放してくれ!


 美)それは仁次第。"一生私の物になる"っていう願望を聞いてくれるなら、解放するわ。


 仁)...物?言っておくが、俺は誰かの所有物になるつもりは無い。


 美)あら、残念。それなら仁を殺してでも、側に置いて置きたいわね。


 言い終えた次の瞬間、美麗は隠し持っていたナイフを取り出して、襲い掛かる。


 仁)うぉっ、危ねっ。


 驚きはしたが、頬に掠っただけで、かわすことが出来た。例えナイフを持っていても、男女の身体能力には差がある。ナイフさえ取り上げれば...


 美)避けられちゃったかー、なら次はー


 そう言うと、今度は腕を狙ってきた、しかし、俺も狙いは同じ。美麗の腕を抑え、何とかナイフを取り上げる事が出来た。


 美)取り押さえて、どうするの?私を殺す?


 仁)いや警察に突き出す、刑務所行きだ。


 美)それは嫌だから...こうするかな。


 美麗は隙をつき、奪い取ったナイフを自分の胸に刺した。


 仁)何、やってんだよ、その傷...本当に死ぬぞ。


 美)良いのよ、私の想いが届かなかった時は、仁を殺すか、自殺する気だったの。心配しないで、後で二人は解放するわ。...友達、だからね。


 その後、美麗は亡くなり、二人は解放されて、俺達は日常へと戻った。けれど、心の中にはあの日の出来事が残り続けている。

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キズナ・エラビ 一ノ瀬 夜月 @itinose-yozuki

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