第23話 「頑固おやじの正体はタカシの父だった(どうりで)」

明後日から、飛び石とはいえ連休だ。

私は久々に「何も予定がない連休」を前にして、どう過ごすべきか真剣に悩んでいた。


……いや、正確には一つだけ、どうしても優先しなければならないことがある。


それは、自分自身の身体の状態確認。

つまり――今もまだ面会できないのか?

そもそも、どうしてこんな事態になっているのか。


そこは、いい加減ちゃんと向き合わなければならない。


それ以外?

正直、特にない。


去年までの連休といえば、ひたすら休養。

仕事一筋で生きてきた私は、趣味らしい趣味もなく、旅行に誘える同僚もいない。

既婚者か、彼氏持ちか、そのどちらか。

独身女が気軽に混ざれる空気ではない。


結局、連休の定番は――

「家でゴロゴロ」。

それしか思いつかない自分が、ちょっと悲しい。


……毎日病院に行っても、意味ないよね。


そんなことを考えながら、家政科を見学した帰り道。

久々に、四人で一緒に帰ることになった。


ナナミはやたらと上機嫌で、テンションが高い。

まあ、理由は分かる。

この数日で、私たちの関係は驚くほど自然に、そして確実に良くなっていた。


誰かが仕組んだわけじゃない。

計算も、策略もない。

ただ流れに身を任せていたら、いつの間にかこうなっていた。


つい数日前まで「高校生なんて」と内心見下していた自分が、今では恥ずかしい。

彼らと過ごす時間は、確実に私を変えていた。


それに――野々花の存在も大きい。

この身体の中に眠る彼女の心。

日記という限定的な形ではあるけれど、気持ちを確かめ合える手段がある。

それだけで、「いつか元に戻れる」と信じられるのは大きかった。


「なあ、お前ら連休って何してんの?」


唐突に、ユウスケが切り出した。


「連休?俺はちょっと用事あるわ。悪ぃな」


意外にも、暇人代表だと思っていたタカシに予定があるらしい。


「アタシはバイト〜。学費稼がないとね」

「専門の?お前、ほんと頑張ってんな」

「タカシだって例の勉強でしょ?」

「例のって、花火か?まだオヤジさんとケンカしてんの?」

「ケンカじゃねえ!俺が見限ったんだよ!あんなクソ花火屋!」

「はいはい。ホントは仲直りしたいくせに〜」

「うっせぇ!微塵も思ってねえし!」


……え?


私だけ、話についていけていない。


花火?

お父さん?

ちょっと待って。

タカシって……花火屋の息子なの?


「ねえ、聞いていい?タカシの家って、花火屋さん?」


「はあ?今さら何言ってんだよ。俺のオヤジのことも忘れたのか?」

「確かに!オジサン、野々花にデレデレだったもんね!」

「だよな。俺らと態度ぜんぜん違ったし」


情報量、多い!


……その瞬間、頭の中で何かが繋がった。


この街に来るきっかけになった、花火工場。

あの日、取材に行って、門前払いされた――

佐藤煙火工場。


あの、眉間にシワ寄せた頑固そうな工場長。

妙にタカシと雰囲気が似ていた、あの顔。


まさか……?


「ねえ、タカシって……佐藤タカシ?」

「今さら何言ってんだよ。佐藤以外に何があるんだ?」


……ビンゴ。


「タカシ、しょうがないって。野々花、記憶ないんだしさ。佐藤煙火工場って地元でも老舗だろ?」


やっぱり。

あの怒鳴り声が、脳内で完全再生された。


でも――

野々花のことは昔から気に入っている、らしい。


……ということは。


四十五歳の私では話も聞いてくれなかったあの工場長が、

“お気に入りの野々花”相手なら?


もし協力が得られたら――

後夜祭の花火企画。

この地域で唯一の花火工場がバックにつく。


それって、文化祭の目玉どころか、切り札じゃない?


胸の奥で、小さくガッツポーズを決める。


文化祭の企画……

ひょっとして、本当に何とかなるかもしれない。

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午前3時のダイアリー 西瀧 睦 @tyurosukekun

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