第22話 キスくらい
佐々木さんを見送ったあと、僕は自分の家の玄関に鞄だけを置いて、隣の蓮華の家に行く。
さっき佐々木さんにも言われた通り、蓮華の不機嫌をフォローしておかないとね。
「あのー蓮華さん、怒ってらっしゃいます……?」
僕が声をかけるも、蓮華は無言のままだ。
ほっぺたを膨らませて、まゆげを曲げている。かわいい。
僕の問いかけを無視するように、蓮華は別の話題を持ち出した。
「ねえ、さっきのなに?」
「え……? さっきのって?」
「佐々木さんとキスしたの……?」
「は……!?」
もしかして、さっきの佐々木さんとの会話、全部きかれていたのか……!?
だとしたら、この幼馴染どんだけ地獄耳なんだ……。
「し、してないよ……! してないしてない!」
「じゃあさっきの会話はなんなの!」
「えー……っと、キスはされそうになったんだけど、していないんだ。僕が拒んだからね……」
そう慌てて弁解する。
だがそれでも蓮華は僕を疑っているようで……。
「本当かな……?」
「ほんとだよ! だって僕がキスなんかできるわけないじゃないか! ヘタレだから……!」
「……うん、そうだよね……。カズくんがキスに応じるわけないか。ヘタレでもんね……」
「うんそうだよ僕はヘタレだよ……!」
「カズくんがヘタレでよかったぁ……」
なんとか信じてもらえたけど、なんだか複雑な気分だ。
「ねえカズくん、カズくんは本当にもう佐々木さんには気はないんだよね?」
「だから、何度もそうだって言ってるじゃないか!」
「じゃあ、証明して!」
「ど、どうやって……?」
「ん……」
「ん…………?」
蓮華は、目を瞑って、僕に唇を差し出してきた。
まさかこれって……キスしろってことなの……!?
「あ、あのー蓮華さん……これはどういう……」
「佐々木さんとはキスできなかったんでしょ? でも、彼女である私になら、キスできるよね……?」
「えーっと……で、でも……彼女っていっても、振りでしたよね……?」
そう、僕たちは対外的には付き合ってることになっているけど、それはあくまで振りなのだ。
目的はあくまで、佐々木さんからのアプローチをかわすため。
だから今や、二人きりのときに彼女だというふりをする必要はない。
「ふ、振りでも恋人なんだから、キスくらいするでしょ!」
「するんだ……」
「ほら、早く……!」
「えぇ……!?」
僕はキスをねだられるけど、正直まだ僕にははやいというか……こんなの恥ずかしすぎてできないよ!
「れ、蓮華さん……! ま、また今度おおおおおお!!!!」
「あ、ちょっとカズくん!」
僕は逃げるようにして蓮華の家の階段を降りていった。
「もう……ヘタレなんだから……」
蓮華のそんなつぶやきが聞こえた。
そう、僕はヘタレだ……。
オタクに優しいギャルがいなかったので、とりあえず僕に優しい幼馴染の地味子をギャルにしてみた~なぜか僕を振ったはずのギャルやクラスの陽キャまで僕に寄ってきて学校生活が充実しはじめました~ 月ノみんと@世界樹1巻発売中 @MintoTsukino
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