第7話堕ちたオトナ

「もうじき、夏休みじゃない?栞さん」

「そうですよー。おねーさんが夏休み中ずぅーっとラブホに連れて行ってくれるんですかぁー?」

「連れていきません、そんなとこに。いくら掛かると思ってんのよ、破産よ破産。栞さんにそんな貢ぐなんて無理よ!死んじゃうわ!」

「えぇー。酷いなぁ、おねーさんは。乾涸びそうですよー、そんな言われされたらぁー。週一なら良いんですかぁー?」

「良くありません。そろそろラブホから離れなさいよ、栞さん」

「頑なですねー、おねーさん。でも、今どこで寛いでるんでしたっけ〜おねーさん?」

「……っ!うっ……ら、ラブホ……」

「そうです、ラブホです。バレなきゃ良いんですよ、バレなきゃ。おねーさんこそ、私の身体を求めてるくせして強がるなんて良くありませんよ〜!」

「私はそんなつもり……」

「じゃあ、私が誘ったとき、何で断らずに着いてきたんです?」

「そ、そそっ、それは、その……」

 ベッドに仰向けで横たわる藤野伊に痛いところを突かれ、上手く返せず言い淀む私。

 彼女の言うとおり、強がっているのだ。

 ベッドから足を下ろし、ベッドの縁に腰を下ろした体勢の自身の裸体を見つめたまま返答に困った。

 十分前に瞳が捉えた藤野伊の恍惚とし、勝ち気な表情がよみがえる。

「おねーさん、もう一度、シます?おねーさんの身体は正直に応えてくれると思いますけど、嫌ですか?」

 栞のこういうとこが、ズルいっ!

「……っ。うっ……」

 彼女がむくりと身体を起こし、背後から両腕を私の腹に回した。

「シましょう、おねーさん。おねーさんもまだシ足りないでしょう?」

 耳もとで多めの吐息を含んだ艶っぽい声で、囁き耳を攻めてきた彼女だった。

 私の腹に回された彼女の両腕の指先がさわさわとへその周りを撫でてくすぐったくもあって、短く喘ぎ声が漏れる。

「……うっ、あっああっんうっ!……あぁっんっ!」


 そして本日二度目の営みが始まった。

 私は、もう藤野伊栞かのじょに逆らえなくなってるのだと、改めて自覚した。


 私が彼女の発言を咎められる大人では、なくなったのだ、とも。


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ワンナイトで求めるものをはき違えてる 闇野ゆかい @kouyann

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