第三章 魔は蒼き夢の中で眠る⑤

 まさしく一瞬だった。


 女術士の左肩に食い込んだ血の刃は、斜めに入り込んで右脇腹を抜けて行った。


 ボロ雑巾のように横たわる少女はその光景を目にし、何事かを叫んだが声は出せずにいた。


 ただ。その後のことは誰も知らない。


 世界の誰もが彼ら彼女らの『その後』を記憶していなかった。


 もし知っている者がいるとするなら。


 それは、一人の魔導師だけだ。

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