信仰方正Ⅱ

それでもやっぱり、母の神様に向けられる深い信仰と愛の大きさと同じくらいか、それ以上のヘイトを此の身に受けてきた僕は、

弱くて逃げてばっかりだった僕は。



曇天の空模様だった或る日、ヒトゴロシに罹った。

或る人の一言がなかったら僕はまだこの世界に居続けていたかもしれない。

見えない星空の下静かに赤い花を片腕に、冷たくなる体温と、吐き気と耳鳴りを感じながら朽ちゆく命を感じて碌でもない人間だったことを謝りながら空を仰いでいた。


次は”普通”に溶け込めるように、次は別の世界でありますように。


次に目を覚ましたとき僕は殺風景な壁の部屋にいた。僕を囲む白衣の大人と黒いスーツの大人を見て僕はまだこの世界にいるんだと悟った。

喉が詰まる感覚と心臓を近くに感じてどうしようもなくなって笑いが溢れてしまったその時、

目を覚ましたことに気がついたスーツの大人は何も聞かずに汚いものを見るような目で睨みつけ、ビニール手袋をした手でいくつかの書類を差し出して来た。まだふわふわした意識の中で書類を覗き込むとそれは血縁関係絶縁書類やら退学届やら様々な場所から立ち去るための手続書類だった。

淡々と言われたように書いて提出し、名前も家族も何もかも手放した僕は代わりに新しい名前ばんごうと僕の部屋にあった衣類や筆記用具が詰め込まれたカバンをもらい、本当に大人にとって異物はごみと同じだったんだなと思いながら無人運転の飛行機に乗せられて、今日は晴れている空から街を眺めていたらあっという間に隔離場所に捨てられてしまった。



未遂ではあったが病魔に侵されたぼくはついに本当に世界から居場所を失った。

まだ13だった僕はその日背負う名前を失い血縁者を手放し世界から存在を消された。



名前は01_2512。

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タイトル未定 @Suzaku_Fuuse

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