第8話 昔語り

 回廊へ出て、紫苑や藍照の部屋のある場所から更に奥、坪庭のあるこじんまりとした一画に、碧映の書斎がある。碧映の許しがなければ立ち入りできない、いわば聖域のような場所だと聞いている。目下、無許可で出入りできるのは藍照だけであり、碧映不在の折は彼が室内の掃除などをしているらしい。もっとも、秋絢はそれを藍照の優位性を表すものとして、紫苑に対する嫌味の材料として使ってきたのだが。

「そんなに構えずとも良い。いいから、入りなさい」

知らず知らずのうちに身体をこわばらせていた紫苑に、碧映が苦笑する。ぎいっと重々しい音を立てて扉が開く。重厚な作りの室内は全て漆塗りで、姿が映るほどに磨き上げられている。敷居から一歩足を踏み入れると、人肌の温もりと白檀の香りに、ふわりと全身を包まれる。濃密な香りなので衣に染み付いてもおかしくはないのに、何故か、部屋の外では一切香りがしないという、不思議な香だ。

「さ、掛けなさい」

木目の目立つ、漆塗りの大ぶりな椅子は、ひんやりと肌馴染みが良い。文机の奥の椅子に、碧映が腰掛ける。不意に白銀の光が差し込み、文机を照らす。紫苑が光源を辿ると、右手の小窓棚に、斑入りの八重椿が一輪、凛と生けられていた。

「さてと。話した方が良いのか、それとも見せた方が良いのか――そなたはどちらが良いかな?」

碧映は机に肘をついて組んだ細指を遊ばせる。その姿は、紫苑に秘密を明かしたときの東克を彷彿とさせた。反応を愉しむような悪戯っぽさを感じた紫苑は、思い切って尋ねてみることにした。袂から例の玉佩を取り出すと、彼女は碧映に差し出す。

「この玉佩をとある男が宗主様宛に持ってきたんです。ご不在だとお伝えしたら、彼は私にこれを託したんです。その時藍照様もいらして、御自分も預かると仰ったんですが、男はそれを拒みました。どうやら、藍照様とその男の間には昔因縁があったみたいなのですが――それは一体何なのですか」

凛と澄んだ碧色の瞳は、紫苑を見つめたまま動かない。ずい、と玉佩を差し出してみても、組まれた碧映の長い指が解けることはない。紫苑の目に戸惑いの色が浮かぶ。

「あの――」

「どうして此方が受け取らないと思う?」

碧映が面白そうな目で紫苑を見た。紫苑が答えられずに黙っていると、碧映の手が徐に玉佩に伸びた。細い指先が乳白色の玉の表面に触れると同時に、形の良い眉がぴくんと跳ねた。碧色の薄い唇がつと開かれる。

「――彼は第四皇子。父である皇帝の命を受けて、一年前からちょくちょくここに来ている。鄭一族を味方につけることで、趙家の勢力を抑えること。それが彼らの魂胆だな」

碧映は反応を確かめるように紫苑の顔を覗き込む。碧眼の中に、見開かれた漆黒の瞳が映り込む。数呼吸分の間の後、碧映は紫苑から視線を外す。そしてやや剣呑な表情で遠くを眺めた。

「我が鄭家は今、再び朝廷の権力争いに巻き込まれようとしている」

「――再びとは」

「兄上、いや、そなたの父上から聞いてはいなかったかな?兄上が先代宗主の座を継いで間もなく、先帝に味方して先々代皇帝に譲位させ、その後、先帝の治世の安定に大きく貢献したということを」

凛とした低めの声で、淡々と言葉が紡がれる。紫苑は胸の内で、父・東克から聞き、見せられた話を思い返した。確かに、皇帝の思いつきで始められようとしていた西辺境への侵攻計画を頓挫させるため、当時の皇太子に一族を挙げて協力し、譲位させることに成功したと言っていた記憶がある。

「はい、翡翠の腕輪の件があってすぐ、父から聞いておりました」

「そうか。だがその折、鄭家内部がどんな状態だったかは聞いておるまい」

「詳しくは、何も。ただ、若輩の宗主としては何も良い思案がなかった、と」

紫苑が記憶の中の父の言葉を思い出して言うと、碧映は微苦笑する。彼女は手にした玉佩をそっと卓に置き、紫苑に向かって両手を差し出した。

「手を載せてご覧」

穏やかな口調に促され、紫苑は碧映の手のひらに自分の両手を重ねた。ひんやりとした体温に引き続いて、覚えのある感覚がなだれ込んでくる。父の黄金の瞳に見入られた時と同じ感覚――。

 間もなく、紫苑はうら若い女性の横に立っていた。色白で整った、どこか中性的な美貌の彼女の頬には汗が滲み、額に施された飾り化粧も半ば崩れかけている。所々破けてぼろぼろになった長い裾を翻し、彼女は回廊を奥へとずんずんと進んでいく。頭に頂いた金銀のお飾りは今にも落ちそうで、彼女の歩みに合わせて揺れ、音を立てる。金銀の組紐で編まれた黒髪はほどけかかり、その根元では木蓮の蕾のような水晶の簪が踏みとどまっている。朱色を基調とした豪奢な衣装には吉祥物の刺繍が施され、その碧色の双眸との対比が際立って見える。程なくして彼女の目の前に、重厚な扉が現れる。扉の脇には、甲冑を纏い槍を携えた守衛が控えている。彼女が扉に近寄ると、壮年の守衛は槍を小脇に抱えたまま礼を取った。

「碧映様」

「宗主様は中においでになるんでしょ?会わせて頂戴」

「申し訳ございませんが、外部の方をお通しすることはできません」

「外部ですって!?私は宗主の妹よ、ここに入る権利があるわ」

「いいえ。碧映様は今朝をもって、白家の方になられました。ですのでここに立ち入る事はできません」

「どうしてよ!私は何も聞いていないわ。とにかく、お兄様に会わせなさい!」

礼を取ったまま頑なに動かない守衛に対し、彼女は頬を上気させ詰め寄る。二人がすったもんだしていると、重厚な音を立てて扉が開く。薄暗い中から現れた人影に、彼女は碧眼をきっと見開く。

「お兄様!」

長身の人影が白日の下に姿を現す。蔓草模様の入った濃紺の衣装を身に纏った同い年くらいの若者は、碧映とよく似た色白で端正な顔立ちをしている。口元には微苦笑のようなものが刻まれてはいるが、その切れ長の漆黒の瞳から、これと言った感情は読み取れない。わずかに少年っぽさを残した顔が、つと守衛と碧映それぞれを見やった。

「――深貫、どいてやれ」

若者の凛とした声が響き、守衛は通路を開ける。碧映は瞬時に若者に詰め寄ると、細身の胸倉を掴んだ。

「お兄様、これは一体何なの!朝目覚めて見たら、こんな格好をさせられて、馬車に乗せられて山道を登っていたのよ!」

彼女は声を震わせ、憤慨する。身体を前後に揺さぶられる若者の表情は、それとは対照的に冷静さを保っていた。為されるがまましばらくして、彼は胸倉を掴んでいる白い手の上に、自身の手をそっと重ねる。

「分かってくれ、碧映。これがお前のためなんだ」

「どうして勝手に決めるの?お兄様のために、そして一族のためにお役に立つんだって、何度も言ったはずだわ。なのに、こんなのってないわ!」

「――確かに、茶に眠り薬を入れて密かに連れ出したのは悪かったと思っている。でも、仕方がなかった。これしか、お前を護る方法が思いつかなかった」

「見くびらないで下さる?お兄様が覚醒される前は、私が次期宗主になる可能性だってあったわ。お父様だって、一時は本気で私に譲ろうと思っていらっしゃったくらいよ」

碧映は掴んだ手をわなわなと震わせる。切れ長の双眸から溢れる大粒の涙が、白粉と相まって襟元へと流れ落ちる。その様を、感情を排した漆黒の瞳が見下ろす。彼女が声を荒げても言葉は返ってこない。感情の爆発をこらえるように、彼女は顔を歪ませる。

 しばらくそうした後、濃紺の衣装を掴んでいた細腕から力が抜ける。泣き疲れて涙も枯れたのか、碧映は青白い頬でその場に茫然とへたり込んだ。若者は彼女の前に中腰になる。そして、黄金の瞳で碧眼を覗き込んだ。

「碧映、見るんだ――これから、帝位簒奪が起こる。俺たち一族は巻き込まれることになる。「予見」ができるとは言っても、絶対ではない。万一失敗すれば、俺は勿論、近しい人間は皆処刑されることになる。鄭家の血筋は絶えることになる。だが幸いなことに、宗主を継げる器を持った妹がいる」

「――嫌よ、見たくない。見ないわ!」

碧映はそう言って駄々っ子のように首を振る。すると若者は今度は彼女の両掌に自分の両手を重ね、力を込めて握る。次第に彼女の顔からは怒りの色が消えていく。そして最後は諦めと嫉妬の色が残った。

「お兄様、私がこうなるって分かってて、わざと私に読み取らせるなんて、やっぱり酷いわ」

「済まない――感情が昂れば自分より「力」の強い者が相手でも直接触れて読むことができる、という特性を利用したんだ。物体への残存思念だと、どうしても限りがあるから――済まない」

「でも、それでもやっぱり私が白家当主の息子に嫁ぐことは変わらないのね」

「我々一族の源流たる家だ。石による治癒ができるのは彼らのみだしね。こういう時にこそ、直系同士での結びつきを強め、離反を防ぐという狙いもあった」

「――一応、そういうものだっていう理解自体はできるわ。でも、私は、それはちゃんと口で言ってほしかったわ」

「口で説明したとして、お前のことだ、絶対に頷かないだろ。だったら白家との婚姻という既成事実を作ってから、「力」を直接行使してもらった方が早いと思ったんだ。そうすれば、狙い通り家との繋がりを強め、かつ、お前自身も護ることができる」

若者が淡々と言葉を並べる。その口調は優しいがどこか画一的で、彼自身の感情を感じることは難しい。そう思ったのは紫苑だけではなかったようで、碧映もまた、青白い顔で若者を見上げた。

「お兄様は、すっかり変わっておしまいになったわ。前はこんな風ではなかった。もっと人の心を持った人だったわ」

彼女が恨みがましく言うと、若者は彼女から視線を外した。黄金の瞳で彼方を見据える白皙の面差しには年に似合わぬ老成した風合いが浮かんでいる。

「人の心、か――幼い頃から「力」に目覚めていたお前なら、そんなものがどれほど当てのないものか分かるはずだろう?」

「でも、私は実の妹だわ。幼い頃からの絆もある。「力」を使わなくても、言葉で説得することだってできたはずだわ」

言い募る碧映に対し、元の漆黒の視線が向けられる。強い、確かな意思が宿る瞳。その奥には底知れぬ深淵が隠されているように見える。彼は自嘲気味に嗤う。

「今の俺は、お前にだけ時間を割いてやるわけにはいかない。あれこれ言ってきている分家連中にも対処しなければならないんだ。奴らの中には俺の宗主位継承自体に異を唱えている者も多い。今回の政変に乗じて離反を企てる奴もいるかもしれない。機を逸せず対応するためには、「力」でねじ伏せた方が手っ取り早い」

若者が冷徹に言い放った時、回廊の向こうから具足を鳴らしながら数人の衛士がやってきた。先頭に立つ衛士が碧映の横に立ち、若者の前に膝をついた。よく見ると、装束のあちこちに血糊が飛んでいる。

「宗主様、終わりました。次のご下知を」

衛士が報告し終えた時には、若者の瞳は再び強い光を放つ黄金色に変わっていた。冷静沈着な表情には一片の迷いもない。

「ご苦労だった。では、この鄭碧映を丁重に白家に送り届けるように。帰路、残りを片付けろ」

「承知」

衛士は短節に返答すると、横に座り込んだままの碧映の腕をそっと取る。立ち上がりざまに、彼女の手が衛士の袖に触れる。その瞬間、彼女はびくんと身震いをした。碧眼がかっと見開かれ、黄金の瞳を見据える。

「まさか、伯父様を――」

「彼は父の存命中から次期宗主位を狙っていた。継いだ日には早々に刺客まで寄越してきたよ。生かしておけば近いうちにまた俺を殺しに来るようだった」

「だからって、あんな」

「見せしめだ。若輩者だからと舐めてかかったり刃向かったりすれば、同じ目に遭う、とね――さあ、そろそろ行くんだ」

若者が扶け起こそうと手を伸ばしたが、碧映は反射的に払いのける。ふらつきながらも自力で立ち上がると、彼女は先程の取り乱し様とは打って変わって、決然とした表情で若者に正対した。

「私のことは諦めるわ。お言いつけ通り、白家に参ります。だからお願い、従弟だけは殺さないで」

「駄目だ。後顧の憂いは断たねばならない。あれを生かしておけば、後々我らに禍を招くことになりかねない」

若者はそう言って有無を言わさず彼女の腕を掴もうとしたが、彼女はそれを跳ね除け、回廊の木の板に額を擦りつけるようにひれ伏した。

「宗主様――幼少のみぎりよりの縁に免じて、どうか、妹の願いをお聞き入れ下さいませ」

幾度も懇願し梃子でも動こうとしない碧映の様子に、若者の顔に初めて躊躇いの色が浮かぶ。彼はしばしの間逡巡していたが、結局返答することなく、控えていた衛士たちに手で合図をした。衛士たちは有無を言わさず彼女の肩と両腕を掴む。若者が後ろの部屋へと踵を返したのを合図に、碧映は半ば引きずられるようにして回廊から出て行った。扉の重厚な音が大きく響く――。

 ふっと、頭の中で回っていた情景が霧消した。紫苑が我に返ると、ちょうど碧映の指が紫苑の手から離れたところだった。

「今のは、一体――」

紫苑が半ば放心状態で呟くと、碧映はあくまで淡々とした声で応える。

「あれは、前に起きた政変の折の、此方の記憶だ。先の宗主である父の急逝によって、兄上は十六で後を継がされることとなった。だから、あの時の兄上は一族をまとめるために必死だったんだろうな。離反を企てる分家当主を見せしめに惨殺させたり――とまあ、血なまぐさいことも多くやっていた」

碧映の言葉を聞きながら、紫苑は改めて先ほどの光景を思い出す。あの若者、つまり昔の父は、紫苑が知っている、娘を溺愛してやまない父の姿とはまるで違っていた。自らの目的を達するためならば、一族の人間を残忍な手段で排除することも厭わないという姿勢。だが少し考えてみれば、それは紫苑の「力」を封じようとあれこれ策を講じたことにも通ずるところはあった。

「知っているだろうが、兄上の「予見」では未来を見ることができる。無論、未来はその時々の選択によって変わり得るが故に、「予見」が必ず実現するとは限らない。だがそれでも、兄上が望む望まぬに関わらず、不可避の未来が見えることがあるそうだ。これだけは、どんなに回避策を講じても、必ず実現してしまう」

「その、不可避かどうかというのは、どうやって分かるんですか」

「こればかりは本人しか分からないようだが――その中の一つが先帝の即位だったと聞く。故にあれほどの大鉈を振るえたのだろう」

「そんなことがあったのですね」

紫苑は再び父のことを思い出す。普段は決して声を荒げることなどなく、穏やかな笑みを絶やさない人だった。だが碧映が来た時は様子が違った。恐らくあれが鄭家元宗主としての顔だったのだろう。どちらの顔が本来の東克なのかは分からないが。

「で、不可避な「予見」はまだあってね。それが紫苑、そなたの「力」の覚醒なのだよ」

碧映は卓上に軽く指を組んで、静かに告げる。

「そなたが強力な「力」を目覚めさせ、鄭一族の者として今後諸々に関わってゆくであろうことは、必ずや実現する未来なのだそうだ」

紫苑の頭に疑問符が浮かぶ。碧映の言葉を借りれば、父がどんな方法を講じようとも紫苑の中の「力」を封じることは不可能である。そしてそれを父自身も分かっていたことになる。ならばなぜ父は長年「力」の減殺のため様々な手段を講じてきたというのだろうか。

「どうにも解せぬといった顔だの」

碧映は憂いを帯びた顔で微笑む。

「ま、それこそが人たる所以ではあるな」

「と仰いますと」

「不可避の未来だと分かっていながらも、どうしても信じたくなかったのだよ。大事な娘が自らと同じ茨の道を歩むなど、とても受け入れられなかったのだろうね」

「そうだったのですね」

「ま、本当のところはもっと入り組んだ事情があるようだが」

碧映がさらりと投げ込んだ意味深な言葉に、紫苑の片眉が跳ねる。思わず訊き返そうとすると、碧映はそれをやんわりと制した。そして碧映は俄かに、紫苑が当初聞きたがっていた、藍照と屋敷にやってきた青年――第四皇子の間にあった出来事に話を戻した。

「藍照は元々、必ずしも「力」が強いというわけではなかった」

そうして彼女は藍照の「力」について話し始めた。鄭家の血を引く者は、一部の例外を除き、大なり小なり人心を透視する能力を有している。一口に透視と言っても程度や内容は様々で、その中で藍照は、視界内であれば一瞥で人心の傾向を識別できるという能力を持っている。例えば、皇帝が行ったとある施策に対して民心が肯定的なのかはたまた否定的なのか、といったようなことが瞬時に大別することができるという。

「使い方によっては非常に有用な「力」だが、これには弱点があってな。「力」を十二分に活用できるか否かは、藍照自身が関わってきた人間の数次第なのだ」

「どういうことなのですか」

「複数の人間の心を同時に読み取る、しかも大別するというのは、なかなか難しいことでね。例えば賛成か反対か、というような二択であれば楽なのだが、人の心はそんなに簡単なものではない。一口に賛成と言っても、その人間の生い立ちや現状などにより、その度合いは大きく異なるのだ。藍照自身が多様な人間と接した経験が多ければ多いほど、識別の精度も高まる。ゆえに此方の命で、宗主の担う仕事の一端を担わせているようにしているのだ。農民、商人、時には浮浪者や地方からの避難民まで――立場の異なる色々な者と関わる機会を設けてきた」

紫苑の脳内で、艶麗な微笑みを湛える藍照の顔が浮かんだ。見る者全てを虜にするであろう、涼やかで優しげな面差し。生来の美貌もあるだろうが、あの誰にでも好感を持たれる表情はもしかすると、多くの人間と関わらざるを得ない環境の中で彼なりに編み出した処世術なのかもしれなかった。紫苑自身、元来感情が面に出やすい質であったため分かるが、自身の胸の内を見せないようにするのは容易なことではない。知っている限り、彼が感情を発露させたことはほとんどなかった――あの玉佩を巡る一件を除き、だが。

「それで、第四皇子とも?」

「我が一族である限り、皇家とは嫌でも関わることになるからの。彼らがどんな者たちなのか、知っておく必要がある」

碧映の言葉に、紫苑は前に読んだ史書の内容を思い出す。『丁一族が皇家を助けた』という文言。人心を見通せる力など、為政者としては喉から手が出るほど欲しい能力だ。鄭家との結びつきが強まるのも必然だろう。

紫苑がそんなことを思っていると、ふと、碧映が意外なことを問いかけた。

「時に、例の腕輪は持っておるか」

「腕輪?」

「ほら、あの翡翠の腕輪のことだ」

そう言われて、紫苑は腰帯に結んだ錦の巾着を外す。父の屋敷での一件以来、巾着に入れて携帯してはいるものの、取り出すことのなかった腕輪。久々に陽の目を見て嬉しかったのか、それは紫苑の記憶にあるよりもずっと澄んだ深緑色をしていた。碧映に渡すと、彼女はそっと手のひらに載せ、矯めつ眇めつ眺める。しばらくして、彼女の薄い唇に笑みが刷かれた。

「順調に快復しているようだな」

碧映は腕輪を返す。紫苑は小首を傾げ、受け取った腕輪を改めて見つめて尋ねる。

「快復って、腕輪がですか?」

「ああ。我々はその「力」ゆえに、兎角人の気を受けやすい体質なのでな。だから貴石を用いてそれを浄化したり、悪影響を受けにくくする。ほら、例えば屋敷の門にある水晶なんかがそうだな。来訪する者の穢れをある程度祓ってくれる。此方が着けている腕輪も、今そなたが髪に挿している簪もそうだ。効果の高い、一級品ぞ」

紫苑は後頭部の簪に触れる。そして、父が以前、自分の「力」を封じるため、数々の貴石の簪を頻繁に買い与えていたことを思い出した。

「石によっては、「力」を弱めたりすることもできるのでしょうか」

紫苑の問いかけに、碧映は少し眉を上げ、次いで苦笑した。

「その答えは半分正解といったところかの。如何に珍重な石であっても、「力」自体を弱めることはできぬ。――兄上がやろうとしていたのは、より強力な魔除けの石を身に着けさせてそなたの身体の周りに結界を築き、「力」がそなたの身体の外に漏れ出ないようにする、ということのようだ」

「そんな事が、可能なのですか」

「ああ。だが兄上だけでは叶わぬこと。早い段階から白家の人間に連絡を取り、協力させていたはずだ。簪を運んできた、あの商人が伝令役か――夏家は白家の分家の一つだからな」

紫苑の眼前に夏良起の顔が浮かぶ。よく日焼けして屈強な身体つきの、商人らしからぬ風貌の彼に、そんな一面があろうとは思いもしなかったが。

「話を戻そう。腕輪に使われている翡翠はな、非常に貴重なものだ。採掘権は鄭家が独占しているのだが、採掘量は非常に僅少で、状態の良いものが採れたら吉祥の現れとも言われる程でな。一般的に、稀少価値が上がれば上がる程、石自体の奇特な力も大きくなる。で、この翡翠は最も強力な魔除けの効能を有していて、これを所持している者には周りに大きな結界が貼られる。ゆえに、我らの「力」の通りが悪くなり、透視がしづらくなるのだ」

「そんな力がある石だったのですね」

「さて、ここから何を連想する?」

思わぬ碧映からの問いかけに、紫苑は面食らいつつも思考を巡らせる。皇家との繋がり、人心を読める能力、その「力」を通しづらくする特別な石――。

 ふと紫苑の脳内に、あの青年が身に着けていた石飾りがよぎる。深山を思わせる澄んだ深緑の石は、紫苑の腕輪のそれと酷似していた。皇子ならば貴重な品を普段使いしていても不思議ではない。仮にあの石飾りが特別な翡翠だとすれば、採掘権が鄭家占有である以上、彼は鄭一族を通じてそれを手に入れたことになる。ではどのようにして?

 紫苑は謎かけを愉しむかのように煌めく碧眼を見やる。翡翠を所持している者に対しては透視が効きづらくなる、と碧映は言っていた。人の心を見通せることが鄭家の最大の強みであり、他者からしてみれば最大の脅威である。皇家は鄭家の力添えによって帝位に就いた。そして父・東克はじめ歴代の宗主は治世を影で支えてきた。皇家としては鄭家の反抗を恐れるはずだ。何らしかの警戒措置をとると考えるのが自然だろう。とすれば――。

「鄭家から皇家に、翡翠を献上しているのではありませんか」

紫苑が恐る恐る答えると、碧映は満足気に破顔した。

「ご名答。忠誠を示すと言う理由で、鄭家は定期的に皇帝に対して翡翠を献上している」

「定期的に?一度だけではだめなのですか」

「ああ。如何に強力な作用を持つ石でも、やはり年月が経てば溜め込んだ穢れで力が弱まってしまう。だから大抵皇帝の代替わりに合わせて新たなものを献上するようにしているのだ」

「古くなったものはどうするのですか」

「状態によっては清めさえすれば、以後も使用可能な場合がある。過去そうなったことは稀だな。何せ皇城はあらゆる人の念がうようよしているから。――ああそういえば。今の皇帝の手元にある石飾りはまだ旧物のままだったかの。本来なら新たなものを献上せねばならないところだったのだが――皇家内部でひと悶着あったせいでうやむやにせざるを得なくなってしまった」

そうして碧映は、朝廷内での権力争いと立太子を巡る動きについて語り始めた。本来であれば、鄭家としては現皇帝の即位に合わせ、改めて石を献上するのが通例である。だが実権を有するのは父である皇太帝と、その権力基盤を支える趙家であった。鄭家はこれまで、あくまで皇帝に直接仕えるという形を堅持してきた。仮に石を献上したとしても皇太帝に吸い上げられ転用される可能性の大きい情勢下では、従来維持してきた一族の在り方が崩れてしまいかねない。従って一族の立場を護るため、碧映は敢えて献上を控えたそうだ。

「そもそも皇帝個人に翡翠を献上してきたという事実は、歴代皇帝と鄭一族、そして翡翠の加工や浄化を担う白家の中で限られた人間しか知らないことだからの」

碧映の話に耳を傾けつつ、紫苑の頭の中では先ほどから引っ掛かっていた疑念が再びむくむくと湧き出していた。碧映の説明通りだと、例の翡翠を所持しているのは基本的には皇帝本人ということになる。となれば、あの第四皇子が着けていた石飾りは一体何だというのだろうか。しばし逡巡の後、紫苑はその疑念を碧映にぶつけてみることにした。案の定、碧映は少しく驚いた顔になった。手を出すよう言われ、紫苑は碧映のひんやりとした白い手に自身の両手を重ねる。袖口から水晶の腕輪がきらりと覗いた。碧眼を縁取る長い睫毛が下ろされる。

「ほお、皇帝もまた思いきったことを」

小さく感心したような呟きを落とすと、彼女はゆっくりと瞼を開けた。

「やはり、あれは腕輪と同じ翡翠なのですか?」

手を戻しながら紫苑が尋ねると、碧映は苦笑いをして後頭部で纏めた髪に手をやる。さらりと指で一梳きすると、小さく吐息を漏らした。

「その通りだ。浄化もされないまま先帝から引き継がれたものだから、随分と消耗してはいるようではあるがな。でなければ、此方がこうして透視することはできまい」

そう言うと碧映はまた一つ、静かにため息をついた。

「全く、因果なものだな――十年近く前、一旦は皇帝への献上も考えて準備させていた翡翠をそなたが有しているとはね」

「皇帝に差し出すはずの翡翠を、私がですか」

「先ほど、敢えて皇帝に献上しなかった、と言っただろう?正確に言えば、採掘自体はさせていた。そして近年稀に見る高品質なものが採れたと報告も受けていた。だがその後、白家に加工させている間に、あれはひび割れが入った低級品でとても献上できる品ではなかった、という連絡が入ったのだよ。加工の段階で格付けが変わることはよくあることだ。それに先に述べた通り、皇帝への献上自体躊躇していた時期であったゆえ、あの時はさほど気にも留めなかったのだ。――だがよもや、兄上に偽情報をつかまされていたとはな」

最後の辺りは、語気がやや興奮気味になっている。常に飄々としている碧映のこのような様子は珍しく、紫苑は内心冷や汗をかいた。目的のためなら手段を選ばないところがある父だが、まさか皇帝への献上用の品にまで手を出しているとは思わなかった。

「その、父が、申し訳ありません」

「そなたが謝ることではないのだから、気に病むでない。それよりもあの様子では、我らもいい加減覚悟を決めねばならぬな」

「何か起こるのですか」

「ま、それは見てのお楽しみというところかな」

碧映はそう言うと意味深な笑みを浮かべた。焦れた気持ちを抑えきれない紫苑は、何か答えに繋がる糸口がないかと記憶を漁った。

「では、白家とは一体何なのですか?先程お見せ下さった記憶の中では、宗主様の嫁ぎ先ということでしたが」

思い至った紫苑は碧映に、尋ねてみた。却って清々しい顔になった碧映はさっぱりした笑みを見せただけだった。

「さて何だろうね。焦らずとも、時が来ればそなたも否応なしに知る事になるだろうよ」

紫苑はそれでも聞き返そうとしたが、彼女はもう一度微笑み、仕事の時間だからと退室を促した。気付けば、差し込む西日で室内が黄金色に変わる頃だった。

 書斎を出て自室へと回廊を進みながら、紫苑は頭の中で碧映の話を反芻する。ふと、はじめに聞きたかったこと――藍照と第四皇子との関係、そして彼がどうして翡翠の石飾りを持っているのかについて、直接的な回答は何も得られていないことに気づく。もしかするとこれも、『否応なしに知る事』なのだろうか――そんなことを思いながら、彼女は庇から西の空を見上げた。茜色と、黄金色と、雲間の藤色と。以前に父が取り寄せた高名な絵師の画集にも同じような幻想的な空が描かれていた。屋敷に閉じ込められていた時は、その画集を眺めたり模写したりして、あの空の果てには何があるのだろうとよく夢想したものだ。今、こうして外の世界に触れられるようになったが、ここに来て、「力」の存在の大きさを実感するようになった。鄭一族として天与の「力」を有していることは確からしい。だがそれを発揮できない限り、いくら宗主の姪ということで遇されようとも、本当に一族の人間であるとは言えない。現に、先ほどの碧映の話は全て「力」ありきの話だった。どれほど紫苑が鄭家や「力」に関する知識を身に着けても、自らそれを扱い感覚的に理解できない限り、ここで飛び交う話の本質は分からないだろう。

 普通の人間ではない、かと言って真に鄭一族とは言えない、千切れ雲のような存在。風に吹かれるまま、着着点も分からず寄る辺なく漂う。そんなどこにも居場所のない状態は嫌だ、と本気で思う。でも藍照母子はいざ知らず、碧映でさえも、「力」の覚醒に関してこれと言ったやり方は教えてくれなかった。時が来ればおのずと分かる――度々言われるこの言葉も、ここに来てひと月近く経った今となっては、焦燥感を高める素材でしかない。勉学ならば書を読めばよいし、書画は名画・名蹟を真似れば良い。苦手な刺繍とて、やり方自体は知っているのだから、根気強くやれば完成させられる。しかし、こればかりはどうしようもない。気持ちが逸るばかりで、動くに動けない現状に対する苛立ちを、一体どこにぶつければ良いというのか。紫苑は彼方の雲間に向かって大きくため息を吐いた。


 紫苑が去った後、碧映は独り静かに薄日の差す書斎に佇む。ふと指先が壁に触れた。途端に「自分のものではない」映像が流れ込んできて、彼女は眉間に皺を寄せる。自分と酷似した容姿をした別人。刻を同じくして相次いで生まれたその人間に、自分は翻弄された。恨んだこともあった。けれど、それ以上に彼の運命が過酷なものであったのも、また事実だった。

「兄上――」

彼女はそう呟く。そして一旦は離した手を、今度はしっかりと壁につけた。

――

 俺が出来損ないであることは、何となく分かっていた。対象自体を見たり、ないし所有物に触れたりして、当該人物の思考や来歴を読むこと。それが一族に受け継がれた天与の力だ。だが、俺は――。

「透碧様。朝餉の支度が整いましてございます」

扉越しに深貫の声がする。

「分かった、今開ける」

俺はそう応えて立ち上がると、文机の側に置かれた紗付きの頭巾をやや乱暴に被る。気持ち悪いお前の瞳など見たくはない、父上に言われたから仕方ない。こんなもの邪魔で仕方ないが、別の使用人に見られて告げ口でもされたら大目玉を食らう。

 頭巾を被って重い扉を開けると、深貫とその子飼いの少年が大きな鍋一式を抱えていた。

「どうしたんだよ、これ」

俺が訊いたら、深貫は嬉しそうな顔で口を開きかけた。その時だ。

「お兄様!」

元気な甲高い声が飛び込んできた。俺より少し背が低い、色白で同じ容貌をした実の妹。父上に冷遇されここに閉じ込められた俺のところに、彼女だけが元気いっぱいの笑顔を見せにきてくれる。

「碧映、お前、なんでいるんだ?父上に来てはだめだと言われたはずだろ?」

「平気よ。父上なら少なくともあと半刻は起きてこないわ。さっき布団の端をこっそり触ってきたもの」

「全く、お前はもう」

いつもの如く父の身辺の物品に触って、彼女はあれこれ読んでくる。

「ね、一緒に朝餉を取りましょうよ。離れで独りだなんて寂しいわ」

「だめだ。父上に知られたらまた怒られるだろ」

「大丈夫よ、その時はまた父上の心を読んで驚かせればいいわ」

妹はそう言って跳ねるようにして中に入ってくる。強い輝きを放つ碧眼――これが俺にとってどんなに眩かったことか。わずか八歳にして父の力を超え、その行動を読んで見せた彼女のような力があれば、どんなに良かったことか。

――

 碧映は目を見開いて固まった。壁から手を離すと、その手のひらを目の前に広げる。自分自身もすっかり忘却に追いやっていた、子供時代の記憶。「予見」が覚醒する前、冷遇されていた彼の離れに、自分はこうしてよく遊びに来ていた。当初は純粋な子供心で。だが相反して透視能力が強まり、父や周囲が自分に寄せる期待が高まるにつれ、次第にそれは醜い優越感へと変わっていったのだった。

「私もなかなか、酷い人間だったということか」

自嘲するように呟くと、不意に軽く眩暈がした。ここ数日、多くの人の気にさらされて、疲労が抜けていないせいだろう。碧映は座り込むと、今度は床に手をついた。すると、先ほどよりもずっとどす黒い、濁った情念が手に伝わってくる。

――

「くっ。お前など、白の長が逸材だと言わなければ、とうの昔に廃嫡にしておるわ」

「――父上」

「その妙な目で父と呼ぶな!ろくな力も使えぬくせに、全く」

父は憎々しげに舌打ちをしながら吐き捨てると、乱暴に扉を開けて出ていった。俺はその場に茫然とへたり込んでしまった。そこへ父と入れ替わるように深貫が飛び込んできた。

「透碧様、大丈夫ですか」

ああ、と心の中では俺はちゃんと返事をしている。でも、声にならない。声帯を震わす気力すらない。そんな俺の様子を、深貫は少しの間躊躇うように見ていた。けれどそれも束の間、次の瞬間、大きな固い手が肩にしっかと掛けられていた。氷の魔物に鷲掴みにされた恐怖を優しく融かすような温かさ、とでも言うのだろうか。気付けば、その大きな手は小刻みに震えていた。

「深貫、なんで泣いてる」

「透碧様――これまでよく耐えてこられましたね」

「急に、どうしたんだ」

「もう、泣いていいんですよ。悲しいなら、その気持ちを吐き出していいんですよ」

「泣く――」

この動詞を使うのも聞くのも、どのくらいぶりだろう。「鄭家嫡男たるに相応しくあれ」。父からどんな仕打ちを受けても、父を恐れた使用人たちから空気のような扱いを受けても、嫡子である自分には泣くことなど許されなかった。妹の碧映が父の膝で甘えても、自分はただ見ていることしか許されなかった。父が声を掛ける時といえば、自身の印章を握らせては「読んでみろ」ということだけだっだ。俺の目の色は徐々に緑色が薄くなって、父からも使用人たちからも気味わるがられる一方だった。あったはずの透視能力さえ、弱まっていってしまった。逆に妹の方は強まるばかりで、いつしか「読んでみろ」と言われることさえもなくなってしまった。「出来損ないの嫡男」の存在を隠そうと、病気で療養中という建前で離れに閉じ込められても、自由な振る舞いは許されず、あくまで嫡男としての面目を保つことだけを求められた。唯一許された読書だけを楽しみに生きること早二年。力が使えないのなら、せめて官吏にでもなって外で生きようと科挙の勉強をしていたが、それも父に知られるところとなった。人生の希望自体が断たれた瞬間だった。

――自分の生きる道など、果たしてあるのだろうか。生きていて、何の意味があるのだろうか。

俺の中で、何かが叫んだ。胸が痛い、喉が詰まる。次の瞬間、その悲痛な叫びと呼応するかのように、何か生温かいものが頬を伝っていくのが分かった。遠い昔に捨て去っていたはずの感覚。その感覚を取り戻したんだ、と理解したと同時に、俺の奥深くで眠っていた何かが堰を切って溢れ出してきた。

――

映像が終わるとともに、碧映は力なく床に横になった。書斎のいたるところに染み付いた兄の記憶。人の記憶は、それが強い情念を伴うものであればあるほど、何年経とうが残り続ける。普段なら触っても感応しないよう跳ね除けることもできる。だが今のように疲弊している時は制御が難しくなるのだ。

「兄上――」

運命に翻弄され、苦しんだ点は自分と同じかそれ以上だろう。だが能力が完全に目覚め父の後を継いでからは、彼は一族を駒のように差配し、掌握した。まるで人が変わったかのように。実の妹たる自分に対しても、それは例外ではなかった。宗主位を継いだあとになって、あの時の兄の行動は自分を護るためだったのだと分かっても、それでもあの強引なやり方にはわだかまりを禁じえない。

 ふうっと長い溜息をつくと、彼女は手のひらを上にしたまま目を閉じた。





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