第7話演劇部

僕は、高校時代、一番頑張っていたのは弓道部でありキャプテンであった。2段である。

美術部員でもあった。吉井淳二賞をもらった。

華道部員でもあった。池坊である。

最悪の黒歴史、演劇部員でもあった。学園祭で主役殺しの名脇役で、会場席から大爆笑をもらった。


僕は、意味の分からん台本を渡され、ただ、転ぶだけの役。

「ねえ、部長、こんなんで人笑いますかね?」

「羽弦君は、普段から面白いから、派手に転ぶだけで、楽勝だよ」

「身体を張ればいいんですね。で、セリフが『カエサル様~』だけでねぇ」

「頑張って、舞台で転ぶ練習していて!」

「はい」


学園祭の当日朝は、僕のセリフは一言なのに、発声練習。

『あえいうえおあお』

で、制服の膝が破れるほどの大転倒で大爆笑をかっさらったのである。

それで、よせば良かったのに地区大会に出場するとは。

バカな部長と、バカな歌舞伎大好き世界史教師の女顧問。


僕もマヒしていた。つまらん、女子校は宝塚になってるさし、笑いの無い大根役者ばかりの高校。

うちらの笑いで、最優秀賞をもらってやる!

僕はまた、「カエサル様~」と、言って、大転倒した。


客席から冷たい風が吹いた。

で、劇が終わるとカーテンコール。スタンディングオベーション。

役者になった気分だった。

結果、地区大会の成績は最下位。

なんじゃ、コリャ。

審査員の心は掴めなかったが、バカ進学校の名前は広まった。

スタンディングオベーションで、最下位は初めての快挙だと言われた。

もう、2度と人前で演劇をしない事を誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハヅル笑劇場 羽弦トリス @September-0919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ