第14話

 布団の中、目を開ける前に手探りでスマホを探し当て、その画面に表示された時間に驚いた。いくら休日とはいえ、正午近くまで寝ていることはめったにない。夜更かししてまでやりたいこともないし、母が車を出せと起こしにくることもあるからだ。

 いつもより寝ざめも悪いのは、嫌なことを思い出しながら眠ったせいか。スマホをいじる気力もないまま、重い目を閉じて昨晩考えていたことを反芻する。彼に見えている強さとはほど遠い、自らの過去のことだ。

 手芸部の先輩への想いを、自分でも認められずに引きずったままの大学生活。あの飲み会はゼミだったかサークルだったか、こんな自分にも興味を示す男性がいることが珍しくて、もしかしたらこんな機会二度とないかもしれない、と試せるところまで試すことにした。その結果は涼々に、以前から登録だけはしていた例のアプリで、初めて他の女性と会う決意をさせた。土気色の顔と生気のない目を心配されながら、涼々は自分を知った。あのときの気持ち悪さがよみがえってくるようで、布団の中で身体を丸める。

 ただ、ここにしか行きつかなかった。自分で探して選ぶ努力などせずに、ここに流れ着いただけなのだ。自分をちゃんと受け入れている、だなんて、誤解にもほどがある。

 そう、彼は何か、勘違いをしているのだ。涼々に助言を求めようなどと、お門違いもいいところだ。涼々よりもむしろ、自らの言葉で語り、自らの意思で選ぼうとしている彼の方が、よっぽど立派だ。納得できるものを選べば、などと、偉そうに伝えてしまったことを、今になって後悔した。

 二度寝をしようとしばらく試みたが、どこにも眠気は残っていなかった。そういえば腹も空いている。身体の声には逆らえないことは、もう嫌というほど思い知っている。涼々はのろのろとベッドから下り、顔も洗わずにまっすぐに階下のキッチンへ向かった。

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