3秒だけ目を閉じて

@rrrrr0705

1話完結



7月3日

7:15 凛と張りつめる冬の朝、なかなか離れてくれない羽毛布団をどうにか剥がし、横にあるストーブのスイッチを入れる。昔から早起きは苦手だ。ましてや冬の朝は特にだめ。

だけど今日は目覚めがいい。窓を開けて白けた空をながめる。思ったよりも風が冷たくすぐさま窓を閉める。部屋の暖かさが身体に染みる。


10:50 いつもはだらだらと一日を過ごすが、今日は違う。寒いのは嫌だという自分の体を、脳を黙らせて外へ繰り出す。ディズニーランドにでも行こう。この前友達に

「死ぬ前に最後に行きたい場所とか見たいものってある?」

って聞かれた時に

「ディズニーランドかなぁ。いや、、、。」

って言ったほど好きだ。

まぁ、金もないし、中には入れない。いつもリゾートラインとやらに揺られて一周してから入口の前にあるベンチで1日を過ごす。これだけでシアワセなんだ。今日もそうして暇を潰そう。人生は死ぬまでの暇つぶしだって言うしね。もう大学は半年以上行っていない。まぁいいか。今日で終わりだし。


19:45 夜ご飯まで食べて帰った。帰りに彼女にLINEを入れた。"今日うち来れる?"と。

彼女は"22:00ごろになるけどいい?"って。

今日はいい事が多い。気分がいい。


20:30 まずい。急いで家に帰り、準備をする。天井からぶら下がった紐を横目に部屋の片付けを進める。鼻歌を歌いながら皿を洗いモップをかけ窓を開けた。夜の匂いが心地よい。


21:45 正直緊張していた。初めてだからだ。ここまで準備を進めてあとはやるだけだが、。ここに立つと恐怖心が込み上げる。そういえばこの前友達が

「死ぬ前に最後に行きたい場所とか見たいものってある?」

って聞いてきた。俺は

「ディズニーランドかなぁ。いや、でも最後は好きな人を目に焼き付けながら死にたいなぁ。」

「お前やべぇやつだな!」

とか笑いながら話したなぁ。


22:15 足音が近づき部屋の前で止まる。俺は目をつぶり3秒数える。3...2...1.....。いつも鍵が空いてることを知る彼女は部屋に入ってくる。

"ガチャ"

俺は目を開き、入ってくる彼女を見ながら足元の台を蹴った。

・・・・・


7月5日

17:05 私は何故か記憶が戻った。天国ってこんなところなのか。いや、違う。生きてる。死ねなかった。死ねなかったんだ。


17:10 。。。


17:20 .........


17:30 しばらく何も考えられずにただ呆然としていると、"ガチャ"とドアが音を立てた。彼女が驚いたような顔でこちらを見ている。だが瞬きをして、また彼女を見ると顔がぐちゃぐちゃに崩れ泣き叫び私に抱きついた。そしてひとこと"良かった"と。


17:33 そこで俺は目を覚ました。いみがわからない。横に彼女はいない。"ガチャ"。彼女が入ってきたのか?俺は笑顔で迎えようとした。しかし入ってきたのは医者だ。何故だ。彼女はどこだ。医者が言う。

「なぜ生きた。彼女は死んだのに。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

3秒だけ目を閉じて @rrrrr0705

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ