シリアルキラー
小川
シリアルキラー
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。また、犯罪を礼賛・助長する意図はありません。
ある薄暗いアパートの一室で誰かがいた。
それは額縁が並べられた壁を眺めている。
額縁には顔写真と名前と文字列が書かれた、履歴書のような紙が飾られている。
ごくごく平凡な人間だった。なんでも程々にこなせる器用さを持っていたが、本人はありきたりであることにコンプレックスを抱いていた。
個性を出したいとか言ったから、
「君は特別な人間だと思う」
とか
「私には君が必要」
とか言って信用させてから殺害した。
何でも程々にこなせる器用さはレアな個性なのにさ。
そもそも、コンプレックスなんて工夫次第で長所になりうるのだよ。
武道の全国大会で惜しくも優勝を取り逃がしてしまう。
「1位になれなかった自分には存在価値など無い」
と最期までふさぎ込んでいた。
最初は、自分に依存させて言いなりにさせて殺そうとした。
けれど、頑なに顔を上げようとしない頑固さには恐れ入ったね。
小さい頃から武道一筋で、優勝以外の価値観を見いだせなかったのかもしれない。
けど、準優勝でも結構凄いから落ち込むことはないのに。
それに結果とは関係なく人には存在価値があるのだよ。
来世はそれに気付けると良いね。
「あいつは俺のもの」
多分好きな人に振り向いてもらうために文字どおりあらゆる手を尽くした、モラルも倫理もガン無視で。
もちろんその結果殺された。
いくらその人が好きだからって、その人のよくないうわさを流して孤立させたり、自分に依存するよう仕向けるためにいじめを主導したらだめだよね。
苗字とは反対に、恋愛的な意味で重いよ、君。
それはボウルに、
「殺人はシリアルのようだ。ふにゃふにゃにしてから喰うもよし、サクッと喰らうもよし。」
『正にこれがシリアルキラー、ってね』
シリアルキラー 小川 @ogawayu
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