第69話 革命のヒを絶やさぬように
「フェ、フェルン……? なぜここに……」
「ニゥイルの埋葬をした後すぐにあなたを追ってきた。どぉ? 嬉しい?」
「あ、あぁ……」
確かに、フェルンが来てくれてとても嬉しいと思う。でも……だからこそ……あのことを伝えなければ!!
すると王は、とんでもなく醜い顔で叫んできた。
「おん前ぇぇ……確か黄金の鏡の店主の娘だなぁぁ……貴様がなぜここにいる!!」
「そりゃもちろんあんたを殺るためさぁ。あんたの一言のせいで両親は死んだ。あんたらのせいでこの国はめちゃくちゃになった。改めて名乗っておくわ。私の名はフェルン・エクセルス。腐敗しまくった国を正す者だ!!」
フェルンはそう言い返した。その時の彼女の後ろ姿はとても頼もしく思えた。だから……言わなくては!!
「フェルン!! あいつは黄金の血とかいう絶対に死なない能力を持っている!! 来てくれたのは嬉しいけど、ここは早く逃げ……」
逃げろ! そう言おうとした瞬間、彼女の言葉が僕の言葉を遮った。
「大丈夫よ、カルターナ。すぐに終わらせる」
フェルンは、怒りと冷静。相反する矛盾した感情を併せ持った表情をしながら僕に言った。その後すぐに後ろを振り返ると、王を睨みつける。
「すぐに終わらせるか……なるほど。塵になりたいのだな?」
瞬間、王の力が強くなり、フェルンは刃越しに押さえつけられて膝をつきそうになった。
「無様に! そして醜く逝け!!」
「それはあなたの方よ! 行くわよ、最後の一発……時読、
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
世界が蒼くなった。
世界が蒼くなって最初に映った光景は、金から黒へと変色していく髪の毛だった。同時に、目の色が変わっていく実感もする。時読時間は一分といったところだろうか。
本当に……最後なんだな……。
私は、一度顔を天に向け、数秒経った後前方向に戻した。
「さて……殺るか」
直後、右手に持っていた短剣をさらに握りしめ、そのまま王の頭と胴体を切り離す。同時に、頭を完膚なきまでに斬り刻む。
間髪入れずに、今度は四肢と胴体を切り離していく。
面白いことに、血しぶきは一切ない。無血切断だ。医者が見たら驚くだろうなぁ……。
瞬きする間もなく、次は左肺と心臓を一直線に斬っていく。
そして、50秒が経過した。私はそこで右手の力を抜いた。
「カルターナ。あなたが居てくれたから今の信念がある。あなたが居てくれたから革命軍での日々がある。あなたが居てくれたからこれからの未来がある。あなたが居てくれたから……私が居る」
私は、再びやつを睨みつける。
「新たな時代がやってくる。自由で、切り開かれた世界へと旅立てる!!」
瞬間、私の髪と目は完全に黒へと変色し、世界の色が元に戻っていった……。
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
私が目を開けると、そこには目を見開いたカルターナがいた。
「フェ、フェルン!!」
ヤバい、フェルンの短剣が圧されている! このままでは、王の剣が彼女の刃を切断してしまう!!
加勢しなければ。しかし、心が
シャギリィィィィィンン!!!
と思った次の瞬間、突然王の頭部と胴体が切り離されていった。血しぶきが空気中を紅色に染めていく。
「アァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
王は、この世で最も醜い断末魔を上げていた。耳を塞ぎたい気分だったが、体が動かないのでできなかった。
憂鬱な気分にハマっていると、今度は頭がバラバラになっていった。残骸は、雨によって地面に叩きつけられ、泥水と一体化していく。
バラバラの次は四肢、最後は一直線に左肺と心臓が斬られていった。
一体何が起こっているのかはわからない。それに、前にもこんなことが起こったような気もするし、しない気もする。
だけれども。こんな僕だけれども……1つ……わかることがある。それは……王が死んだという事実だ。
僕とフェルンは、その場から動けなかった。なんと言えばいいのかわからない、複雑な感情を抱えながら。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「カルターナ……私達……成し遂げたんだよ……革命を!!」
「あぁ、そうだな……そうだな……そうだな……」
そう言った瞬間、フェルンが僕に抱き着こうとしてきた。彼女は両手を広げて迫ってくる。
正直悪い気はしない。だって勝ったんだし。王政打倒したし。これぐらいのこと、許されるよね? ねぇ、ご先祖様?
「へへへ……!!!」
頭が変になっていたその時、向こうからフェルンとは別の何かが近づいてくるのがわかった。それは紫色の
ッ! ……怨念の類か…………。
どうやらフェルンは気が付いていないようだ。見えているのは僕だけらしい。正体はわからない。目的もわからない。
目的はわらないが、おそらく僕はこいつに殺されるだろう。だって、さっきから悪寒が止まらないのだから。正体のわからない恐怖が体中を駆け巡って止まらないのだから。
根拠といえばこのくらいのものだ。直感にほぼ等しいと言えるだろう。だけど、運命と出会った時のような確かな実感を……僕は、体の奥底で感じ取っていた。
ここらが潮時か……。
紫の靄は、フェルンよりも圧倒的に速い速度で迫ってきている。目? のようなものは他所を向いているが、靄が通った道は全て破壊されている。通り道にいる僕もきっと壊される。
そして、靄が眼前に来た瞬間、
ブシャァァァァァァァァンン!!!
手のようなものが、僕の心臓を貫いていった。
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