第67話 抉れ!!
目線を下に向けると、そこには木の枝が貫通した左足があった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だから言ったであろう。キチガイのクソブタが、と」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そんなバカな!! あの瞬間に僕の足に枝を刺す時間なんてなかったはずだ。あいつは確かに……攻撃で両手が塞がっていたはずなんだ。
刺さっている木の棒を抜こうとした時、やつは喋りだした。
「自惚れるなよ小童がぁぁ。生きてきた年数、経験、身体的能力。我は、すべてにおいて貴様を圧倒しているのだ。もう一度言おう。自惚れるなよ小童がぁぁぁぁぁ!!!」
その瞬間、王は僕に向かって走り出した。やつは腰部分に剣を構えながら迫ってくる。あいつが何をしてくるのか。今の僕には見当もつかない。対処はできるのだろうか。
でも……やるしかない!
僕は、前に出した右足を踏み込み、短剣を構える。
「どこからでもかかってこい!!」
「ふむ。そうか。なら、お望み通り攻撃してやろう」
やつは、僕との距離を数メートルまで縮めた瞬間、地面に向かって剣を振り抜いた。
「
ズヴァドガラァァァァァ!!!
直後、地面に十字の線が刻まれた。次の瞬間、地べたが抉れて大穴ができた。僕は、穴の陥没に巻き込まれながら落ちていく。
こ、こいつマジか! 実質腕一本で足元抉りやがった。化け物か? マジモンの化け物なのか? クソッ!! また空中か!!
と思ったその時、視界に空中で剣を構えようとしている王の姿が飛び込んできた。
こぉれぇはぁマズイ。今食らったら即死してしまう!
直後、僕は反射的に左足に刺さっている木の棒を抜くと、態勢を崩した状態でやつ目掛けてぶん投げる。
「やらせるかぁぁぁぁぁ!!!!!」
投げた棒は雨を切り裂きながら突き進み、王の右脇腹を貫通していった。彼は、突然の激痛に思わず脇腹を押さえた。
「ッ! き、貴様ぁぁぁ……」
「うるせぇぇ! こちとら皆を背負ってんだよぉ!
僕は、短剣を振り抜いて飛ぶ斬撃を光速で飛ばしていく。
スパァァァァァン!!
斬撃は王の胴体に命中し、首から右足までの間に曲線ができた。曲線からは、血が流れ出ている。
そしてやつは、体を震わせていた。
「ゲフォ! はぁ……はぁ……我の……我の気高き神の体が……よくも傷つけおってぇぇ……!!」
「何言ってんだてめぇ。さっきも傷ついてただろうが」
抉れた地面に着地した僕は、煽り口調でそう言ってやった。そうするとあいつは、より一層体を怒り色に染め上げていった。
「!!! ふざけるなよおん前ぇぇぇ!! ¥%&$#$#%$&!!」
怒りのあまりか、とうとう言葉すらもまともに話せなくなったようだ。ざまぁねぇなぁ。
とぉ思っていたら、何やら不穏な雰囲気を醸し出しながら王は独り言を言い始めた。
「はぁ……はぁ……どうする……左手は無いし右脇腹は穴が開いているし……はぁ……はぁ……どうしよう……どうしようぅぅ……」
突然やつは弱気になり始めた。出る言葉出る言葉すべてがネガティブだった。ついには、頭を両腕で抱え、顔が見えないほどうずくまり始めた。
僕はその隙に、左足を少し引きずりながらあいつの元に接近していく。
「なんだなんだぁ? 燃料切れかぁ? 僕は全然切れてないね。なんならまだ火力が上がっている最中だぁ……だからよぉ……」
王の眼前に着いた時、僕はこいつを睨みつけた。そして、短剣を強く握りしめる。
「そろそろ終わらせようぜぇぇぇ!!!」
心臓めがけ、短剣を横方向に光速で振り抜いたその時、頭を支えていた腕の間からこちらを睨みつけてくるおぞましい視線が光った。
「あぁ、そうだな。本当に……その通りだ……この鼻ッ垂れがぁぁぁ!!!」
瞬間、こいつの頭突きが僕の頭を強襲した。突然であまりにも強力な威力を持つそれを受け、僕は一瞬意識が飛びかけた。
一瞬体がぐらついた時、今度は左腕に強烈な痛みが走った。
辛うじて開けていた目の中には、僕の左腕を右肘で叩きつける王の姿が映った。
バギボギリィィィィィ!!!!!
「グァァァァァァァァァ!!!」
ほ、骨がぁぁ……骨が割れる音がするぅぅ!!
「痛かろう。痛いだろう! まだまだ味わってもらうぞ……極地の痛みをぉぉ!!」
すると王は、肘を振り落とした時の勢いをそのままにしながら拳を叩きつけてきた。
バギバギギガギィィィィィ!!!!!
「アァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
い、今、完全に骨が折れた音がした! 音を聞いた限りじゃ確実に複雑骨折だ! あ……が……アァァァァァァァァ!!!
「うるさいぞ。耳障りだ!」
「ゲフォォォ!!」
骨を折られた直後、王の右足が僕の腹を強襲した。その勢いは凄まじく、そのまま僕は数メートル後ろまで蹴り飛ばされしまった。
不着地の衝撃と左半身の激痛が体を駆け巡っていく。
「あぁ……が……」
はぁ……はぁ……どうゆうことだ……なぜ肘と拳の強打だけで骨が折れるんだ……はぁ……はぁ……常識では考えられない……普通じゃありえない!!
くっそぉぉぉ……!!
何秒か経って首が動かせるようになり、右手を使ってなんとか頭を上げることに成功した。
すると、視界に脇腹を押さえながら歩いてくる王の姿が入ってきた。
「はぁ……はぁ……終幕にはぁ……まだ早いぞ……反逆者よ……」
「ゼェ……ゼェ……こっちもだよ……はぁ……はぁ……まだ……究極のフルコースはぁ……終わっちゃ……はぁ……はぁ……いねぇぇぇぇぇ!!!!!」
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