第66話 最終決戦
ザドドドザドドドザドドドザドドド。
僕と王は、ほんの少しの間、構えたまま動かなかった。
ただひたすらに相手を見つめ続け、虚無の空間を創りあげていた。そこに、打ち付ける雨の音が入り込む余地は一切なかった。
ズダァァァァァァァァァァ!!!!!
「「ッ!!」」
大量の水が瓦礫の山を突き破った瞬間、僕とあいつは同時に走り出した。雨を切り裂き空を切り。光のごとき速さで突き進んでいく。
「そのブレスレット返してもらうぞぉぉぉ!!」
「渡すものか!! 我の物を奪う者達はすべて斬首刑だぁぁぁ!!!」
次の瞬間、お互いの信念が激しくぶつかり合った。周囲の雨は霧散し、鈍い轟音が辺りをどんどんと侵食していく。
攻撃を防がれた瞬間、僕は体を高速で回転させながら首元を狙う。王はそれを粗削りな剣筋で防ぐ。
「ぬぅぅぅ」
「防ぐのか。なら、これでどうだぁぁ!!!」
僕は流れに乗って腕、脚、心臓、頭と、休む間もなく連撃していく。こいつは、完全には防ぎきれずに少しずつ傷は負っているが、致命傷は確実に避けている。
くそ……まだ倒れないか……!!
心に一瞬だけ焦りが生じ、剣筋が少しブレてしまった。直後、やつはニヤリと笑うと、それまで何もしていなかった足を踏み込んだ。
「
首元にあった剣を光速で走らせ、獰猛な兎を描きながら攻撃してきた。
その攻撃はとても変則的で、以前監獄襲撃作戦で戦った監獄長の技とは比べ物にならなかった。
「これは絶対にマズい!! ッ!!」
獰猛な兎を、僕は王の股の間を滑り込んでなんとか初撃を避けることに成功した。
「はぁ……はぁ……なんとか避けぇぇぇぇぇ!!!」
がしかし、振り返ると獣はまだ足を止めておらず、進行方向を反転させて追いかけてきた。僕は足を踏み込むと、必死になって走っていく。
「ぜぇ……はぁ……はぁ……あぁクソっ!! どんな原理してんだよあれぇぇ!!」
僕は瓦礫の山へと大きめの石を1つ拾いながら走っていく。山に着くなり残骸を踏み台にして王の頭上へと飛び跳ねる。
「これでも食ってろ!!」
到達した瞬間、こちらの方を向いていた王の顔面に石を投げつける。
「フン。くだらぬことを」
「それはどうかな?」
石は獣によって瞬殺されたが、それを攻撃した一瞬の隙を突いて体を光速回転しながら短剣を振るう。
「
燈赫一閃とは比べ物にならないほどの速さでやつに斬りかかる。
光と光が花火を散らせながらぶつかっていく。
一瞬だけ、辺りがほとばしる感覚がした。
「はぁ……はぁ……全力だして互角ってかぁ?!」
「いいや、互角ではない。圧倒だ」
次の瞬間、王は歯を食いしばると、僕の短剣を吹き飛ばしてきた。体が瓦礫に向かって放物線を描きながら飛んでいく。
し、しまった!! 空中だ!!! 速く地面に!!
そう思って目線を下げると、王は足を踏み込み、剣を構えていた。
さっきの構えだった!
「こ、こいつぅぅぅ!!」
「今度こそ倒す……鳴兎雷!!」
再び光る獣が僕を襲いにかかってきた。先程よりも段違いの速さでこちらに向かってくる。
まだ速くなるのか! 迎え撃つにも慣性の方向が逆だから光赫一閃が使えない。
あれは、全筋力・光速回転・超速度。そのすべてが重なって初めてできる技。このままでは対応できない。あれでないと太刀打ちができない!!
どんどん獰猛な兎が迫ってくる。僕の体は、だんだんと降下していき、あと十秒ほどで瓦礫に触れるかというところまできていた。
着陸準備のため後方を確認した時、僕は驚愕した。なんと、僕が着陸するであろう場所の近くに、逃げている団長達がいたのだ。
彼らは背を向けて走っているため、こちらに気づいていない。
これはマズい。このままだと団長達は獣の攻撃に巻き込まれて死んでしまう……やるしかないのか? もう考える時間は無い。よし、腹ぁ決めた!
「光赫一閃!!」
後方の空間に一閃をし、慣性の方向を逆転させる。向きを反転させると、そのままやつに向かって突撃していく。
「ぬぅぅぅおぉぉぉぉぉ!!!!!」
「死に急ぐな、反逆者よ。我がきっちりと嬲り殺してやる。もう少し待て」
あいつはそう言った瞬間、飛び上がった。王は、放物線を描きながら襲ってくる。雷のごとき速さの剣が視界の正面に入った直後、僕は短剣を横に振った。
「こんのやろぉぉがぁぁぁ!!!」
ギャギィィィィィンンン!!!!!
短剣が心臓の前を通ろうとした時、刃と刃がぶつかり合った。火花が起こり、今まで聞いたことのないような轟音が耳を貫いていく。
刃がぶつかったのと同時に僕は体を一回転させ、王の手元目掛けて短剣を振るう。
「どぉぉぉれしゃぁぁぁぁぁ!!!」
スパァァァァァァァンン!!!
今この時を持って、やつは左手を失った。僕は転がりながら地面に着地する。
体中泥まみれになりつつも立ち上がり、左腕を押さえる王を見る。あいつは、体を震わせていた。
「こんのキチガイのクソブタがぁぁぁ……」
「どうだ! これが痛みだ! てめぇにはまだまだ味わってもらうぜぇぇ。究極のフルコースだ!!」
そう言った時、僕の左足に激痛が走った。
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