第49話 信念と覚悟
現在進行形でカルターナ達は、ミントンカン邸入り口近くの茂みに隠れていた。近くといっても、入り口までの距離は15メートルほどある。
邸宅の広さは、縦500メートル、横700メートルであり、中にはホール、祈りの間、食堂、使用人の部屋、建物を所有する者の部屋、その他各部屋がある。
建物の材質は主に、木と石類で、たいして耐火性はない。
総部屋数300を超えるこの邸宅は、パカディーラ家が所有するペイダス王国一の建物だ。当然、そこら中に兵士がいる。
貴族と聖職者は、ここでパーティーをしているはずだ。反乱因子を潰したことにたいする祝賀会と言ったところか……ぶち壊してやる。皆殺しだ!!
「ついに来た……僕達は今日を持って、すべての決着をつける!!」
「私もよ……油を注がれた炎は、そう簡単に消えたりはしないわ!!」
「私はこの戦いで、神書の歴史を終わらせます!!」
みんなが、それぞれの決意を言葉にしたところで、僕達は動き出した。
作戦はこうだ。まず、持ってきた小型の爆弾を投げて、門番の注意を引き付ける。
その間に、門を全速力で潜り抜けて、敷地内に侵入する。侵入したら、貴族どもの集まるホール目指して、物陰に隠れながら突き進む。
ホールに着いたら窓越しで中覗き、貴族どもがいることを確認したうえで、窓から中に入る。後は、兵が来る前に皆殺し。以上だ。
僕は、鞄から小型爆弾と同じく持ってきた、小型の虫眼鏡で火を起こす。煙が白く、見えづらいうちに爆弾を点火し、即座に門から数メートル離れた場所に投げる。
バダガァァァァァァン!!!!!!
辺りに轟音が響き渡る。鳥は羽ばたき、動物は一目散に逃げていく。爆弾の音に反応した門番たちが、爆心地に群がっていく。
「今だ。いくぞ!!」
「「了解」」
僕達は、全速力で門を潜り抜け、中にある植物や岩の裏などに隠れていく。
「おいどうした!! 何があった!!」
隠れた瞬間に、轟音を聞きつけた100人以上の兵士たちが、ハエがたかるように門の辺りに集まっていく。中の警備が薄くなった隙に、僕達はどんどんと建物に接近していく。
数秒後、ついに邸宅の壁に触れることに成功した。壁は、材料に石を用いられている。石は、温度がよく変動する素材だ。
日差しに長時間当たれば石はあったかくなるし、逆に寒さの中にずっといると冷たくなる。
邸宅の壁に到着後、すぐさまホール捜索に取り掛かる。これに関しては、大音量で音や音楽が聞こえてくる部屋を探せばよかったで、1分もかからぬうちにフェルンが発見した。
僕達は、フェルンのいるホールがある部屋の壁に集合し、窓越しに中を確認する。中には、120人ほどの貴族と聖職者が集まっており、大量にある机の上には、たくさんの食事とワインがあった。
貴族や聖職者どもは、豪華な衣装を着て踊ったり、楽しそうに談笑したりしている。
今の光景を見て確信した。やつらは、勝利のムードに完全に浸っている。自分達は殺されるはずがない! と書かれた、生ぬるいことこの上ない顔をしている。正真正銘の畜生野郎どもだ!!
自然と拳に力が入る。血が煮えたぎる感覚がする。目力が強くなっていくのを感じる。
その時、隣にいたニゥイルさんが、突然話しかけてきた。
「カルターナさん。突撃する前に、1度深呼吸をすることを推奨します」
「え? あ、あ、はい……そうですね……その通りですね……ありがとうございます……」
突然話しかけてきたから、驚いて舌と頭がうまく回らなかった。
あ、危なかった。このまま行っていたら、間違いなく理性を失っていただろう。平静を取り戻せ、僕。確実に殺るために最も重要なこと。それは、冷静さだ!!
僕は、言われた通りに、深呼吸を何度か行った。余分な力が抜けていき、血の温度も下がっていくのを感じる。
僕が、深呼吸をしている時、なぜかニゥイルさんは、僕のこと凝視していた。
あと1分もしないうちに、戦いが始まる。そう考えながら私は、深呼吸をするカルターナさんを見つめていた。
彼は、やると決めたことは、必ずやる男だ。その有言実行っぷりには、いつも驚かされる。きっと彼の中には、何者にも決して折ることができない、ドデカい信念の柱があるのでしょう。
そう言えば神書に、こんなことが書かれてありましたね。
ログマルクの直系の子孫と、分家の子孫が約束の日を迎える時、国家の運命は大きく動き出す。と
本当にその通りでしたね。約束の日がいつかは知りませんが、神書の通りになっている。
神書には、もちろんついて行きます。ただ、それとはまた別に、カルターナさんが創りだす、新たな未来を見てみたい。そんな気持ちもあります。どちらかというと、後者の気持ちの方が強いです。
いつからか、私の生きる目標は未来を見ることになっていたようだわ。
見せてください。新世代であるカルターナさんとフェルンが創りだす……その先を。
カルターナさんは、深呼吸を5回ほどすると、覚悟を決めた目で短剣を握る。
「2人とも。突撃だ!!」
「「了解!!」」
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