第48話 一握りの強者だけが、勝利の縄を手繰り寄せる

 彼らは、建物内目掛けて勇猛果敢に突撃していく。怒号を上げ、鉛玉フェスティバルの中をライオンのように進んでいく。


 建物内では、部屋の奥の方から、大声で命令する王妃の声が響いていた。


「ちょっと! さっさとあいつらをぶちのめしなさい!! 討伐までの時間が遅すぎるわ!!」


「そ、そんな無茶なぁ……」


「口答えはいいから早くやりなさい!!!」


「「「は、はいぃぃ!!!」」」


 先程よりも連射速度が飛躍的に上がり、より一層、革命軍かれらは鉛玉フェスティバルを食らうこととなる。


 団長は、防御態勢を、より強固に固めながら思った。


 くそ!! さっきよりも玉の数が増えていっている。それに比例して、こちらの被害も増していっている。このままではマズい!! 今よりも速度を上げなければ!!


「ぬぅぉぉぉぉぉぉ!!!」


 団長を筆頭に、彼らの進行速度もまた、飛躍的に上がり、より一層の怒号とともに突進を継続してくる。


 そんな異様な光景を前に、国王側の兵は、逃げ惑うネズミのようにうろたえ始めた。


「な、なんなんだこいつらぁ! 撃っても撃っても止まらねぇ! 止まるどころか進んできやがる!!」


「ふ、不死身だ……こいつらは悪魔だぁぁ!!」


 中には、武器を捨てて建物の奥の方へと逃げていく者まで現れた。これを受けた王妃は、怒り狂った形相でさらに暴れ始める。


「お前らぁぁ!! 何をしとるんじゃぁぁ!! やつらをこの建物内に入れたらただじゃおかんぞぉぉぉ!!!」


「「「ひ、ひぃぃぃ!!!」」」


 口調がどえらい変わっている。誰もがそう思った時、頭上から何かが頭に落ちてきた。

 ふと不思議に思った兵の1人が、首を上に向ける。見るとそこには、どす黒い色の雲群と、サァァァと降る雨どもがあった。


 雨は、秒数を重ねる度に強くなっていき、ついには土砂降りを超えた雨となって、地面をにじませていた。


「!! 雨か!! こいつぁついてる。お前ら、このまま進むぞぉぉ!!!」


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」


 革命軍はついに、公園の中央にある噴水の目の前にまで進んでいた。この時、革命軍の総数は5,000人ほどになっていた。


「何をしておる!! ちんたらせんとはよせんかぁぁぁ!!」


「む、無理です王妃様!! 川をひっくり返したような豪雨のせいで、銃がすべて動かなくなってしまいました!!」


「な、なんだとぉぉ!! じゅ、銃が使えなければ、建物内の物を投げつければよいではないか!!」


「そんな無茶な!!」


「無茶でもやれぇ!!!」


「「「は、はいぃぃぃ!!!」」」


 兵たちは王妃の無茶ぶりを受け、悲鳴を上げながら建物内に入った時だった。


 ドパガラジャシャァァァァン!!!!!!!


 広場の噴水が、轟音とともに大爆発を引き起こした。瓦礫は、大小関係なく各地に散らばり、溢れ出る水は水龍となって、そこら中をかき乱していく。


 建物と噴水の間にいた革命軍は、噴水の爆発の影響をもろに受けることとなる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 大きな瓦礫により、100名近くの人が潰れ、現場を散々かき乱した水龍は、水位が膝以上の高さになった辺りで、その動きをゆっくりとしていった。

 団長は、その状況を前に、一瞬足を止めた。


 な、なんてこったぁ……ここの噴水は、パルソン川の水をそのまま引いているのを忘れていた。きっと、この豪雨で氾濫した川の水が大量に流れ込んだことで、噴水が水圧に耐えきれなくなったんだ!!

 ちきしょう、足が重い。体が岩石のように重い!! それでも、それでも俺は、前へと進むんだ!! 守るべき家族のために、信念をたぎらせろ!!!


「こなくそぉぉぉぉぉ!!!」


 革命軍かれらは臆することなく突き進む。自分たちが信じる思いに従って、重い足を必死に回転させて突き進む。

 その姿はまさに信念の進軍。強き信念が、集団となって流動する龍の雄叫び。この場にいる誰1人として、彼らの精神こころをへし折ることはできなかった。


 そしてついに、団長の手によって、その瞬間が訪れた!!!


「はぁ……はぁ……やっと……扉を……はぁ……はぁ……掴んだ……ぞ……!!!」

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