第42話 逆転への策略
はぁ……はぁ……思ったよりきついな。状況と地理的条件が悪すぎる。このままでは時期に全員潰れてしまう。確実にそうなってしまう!!
「む、無理だこんなもん。逃げろぉぉぉ!!!」
「君たち、待ちなさい!!」
最近革命軍に入ってきたものを中心に、とうとう逃げ出すものが現れ始めた。彼らはどんどんと奥に向かって散り散りに逃げていく。
これはマズい。ただでさえ不利だった状況が、より一層悪くなった!! こうなったらやるしかない。予定よりも早いが、作戦を発動させるしかない!!
僕は敵を斬りつけながらヴィームとフェルンに話しかける。
「2人とも!! 今から作戦を開始する。手伝ってくれ!!」
「了解だ。で、何をするんだ?」
「あぁ、それはな……逃げろ!! 団長室まで逃げるんだ!!」
「わかったわ。一体何を考えているかはしらないけど、あなたを信じるわ!!」
「ありがとう!! それじゃぁ行くぞ!!」
僕達は、団長室に向かって全力で走り出した。僕達が走り出した時には、すでにほとんどのものが奥の方へと逃げていった。
こればかりは仕方がないと言える。なぜなら、守備組は、そのほとんどが戦い慣れていないメンバーで構成されている。戦い慣れている者達はみな、宮殿組に組み込まれている。
守備組の中で戦い慣れているのは、僕、ヴィーム、フェルン、ミューマさん、副団長ぐらいだ。
全力ダッシュをぶちかましていると、後ろから咆哮のような声が聞こえてきた。
「皆の者ぉぉ!! 敵は我らに恐れをなして逃げていっているぅぅ!! 今がチャンスだ!! 進めぇぇ!! 進軍せよぉぉぉ!!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」」」
あいつらが、獰猛な獣のように追いかけてきた。まぁ、当然の行為だし、作戦通りの動きをしてくれている。
いいぞ。このままだ!!
「3人とも!! バラバラになって走るぞ!!」
「「「了解!!!」」」
僕達はそれぞれ別の方向へと進んでいく。その中で、僕は右斜め下の通路へと入っていった。
後ろからは、600人ほどの敵が後を追ってくる。防具がぶつかり合う音が、常時通路中と耳に響き渡っていく。
あまりにもうるさいので、一瞬耳をふさごうとも思ったが、それだと防御ができなくなるのでやっぱりやめた。
「ふぅぅぅ……」
今僕が走っている通路は、3つの食糧庫を経由しながら団長室へと繋がっている。団長室は、どう考えても5,000人以上の人を収容させることはできない。そうなってしまえば、僕が今考えている計画に、甚大なる支障がでてきてしまう。
それを防ぐには、ここで敵を減らしておかなければならない。減らすといっても、最低限再起不能にさせることが出来ればオーケーだ。
どうやって減らしていこうか……。
走りながら考えていると、目の前に1つ目の食糧庫にたどり着いた。
僕は、流れるように部屋へと入っていく。
中はいたってシンプルな構造をしており、それなりの広さである。
13個ほどの棚の中や上には、種類豊富な保存食が置かれてあったり、水でいっぱいの樽が複数個置かれてあったりしていた。
「敵が部屋に入っていったぞ!! 追えぇぇぇ!!」
600名ほどの敵が、部屋の中になだれ込んでくる。奴らは鎧を着ながら走ったせいか、息が絶え絶えになっており、中にはその場に倒れこむ者まで現れていた。
追ってきた群衆のリーダーと思われる人物に、部下が報告をしにいく。
「組隊長!! 敵がいません!! どこかへと消えてしまいました!!」
「はぁぁぁ?!!! 敵が消えただとぉぉ?? そんな馬鹿な話があるものか!! やつが何かしらの特殊体質を持っていない限り、そのようなことは、断じて起こりえない!! 情報には、奴は特殊体質ではないと書かれてある。どこかに隠れているはずだ!! 探し出せぇ!!」
「はっ!!」
すると、王国軍による草の根をかき分けるほどの捜索が始まった。連中は現在、血眼になって僕のことを探し回っている。
では、僕は一体どこに潜んでいるのか。それは、樽の中だ!!
……別にふざけてなどいない。本当に樽の中に隠れているのだ。外の状況は木と木のわずかな隙間から見ることができている。
もちろん、やつらは樽のことも調べるだろう。だが、僕はその作業は最後の方ですると踏んでいる。
人間というものは、1度、「絶対にない!!」と決めつけると、その考え方を変えるのは、容易なことではない。俗に言う、灯台下暗しだ。
故に、僕は今、彼らの心の隙間に隠れていると言い換えてもいい。それほどまでにも、僕の中では確固たる確信があった。
やつらは、部屋の手前から順当に捜索をしている。だが、限りなく隅っこにあるこの樽に、誰も見向きもしない。僕の予想があったのだ。
まだだ……まだ引き付けるんだ……あいつらの大半が部屋の奥に行くまで耐え忍ぶんだ……!! あともう少し……あともう少し……。
僕は、息を殺し、微動だにせずにただその時を待つ。
あと十数センチ……来た、ここだ!!
時が満ちた瞬間、僕は短剣で樽を破壊し、姿をさらす。
この音に反応し、振り向いた組隊長と呼ばれる人物は、驚愕の表情をしている。
「な……そこにいたのか!! 一体なぜ誰も調べていないのだ!!」
「す、すみませんでした!! まさかそんなところにいるとは思わず……」
「言い訳はいい!! さっさと追いかけろ!!」
次の瞬間、部下どもが必死の形相で追いかけてきた。だがしかし、その時すでに僕は部屋の出入り口に着いていた。
「すべてが鈍いですよ、あなたたち。特に、心の動きがね。それじゃ、バイバイ」
ザジュルゥゥゥゥゥ!!
僕は、出入り口を支えていた支保を短剣で切り裂いた。それまで支えられていた土が、地面に向かって落ちようとしていた。
「くそ!! だがな。そこが崩れると同時に、周囲一帯の天井も落ちてくるぞ!! 共死に狙いか!!」
「あいにく、その手のものは起こらないように設計されている。2年前に、大崩落を経験したもんで」
ドラガラジャバァァァンン!!!!!!!
これにてやつらは外に出ることは、永久になくなった。これで作戦の成功率も上がったというものだ。
先を急ごう。皆が待っている。
僕は、団長室に向かって再び走り出した。
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