王政打倒編
第40話 森の中での再会
メルネイ盗賊団が壊滅し、闇の世界の勢力図が大きく変わってから2年と7か月強。
1792年、8月3日の昼下がり。ペイダス王国の首都、カルガラから数キロ離れた場所にある迷奇森林の中で、僕は丸太の上で読書をしていた。
「……」
読んでいる本の名前は「人間の心理」。人間の心についてが書かれてある本だが、内容は哲学に近い。でも、非常に興味深いことが山のように書かれてある。勉強になる。とても。
周囲の風で木がなびく音や、虫が飛ぶ音。さらにはページをめくる音さえも聞こえない状況で本を読んでいると、突然肩をたたかれた。
最初は微動だにもしなかった。だが、だんだんと叩く威力が強まっていったので、思わず後ろを振り返った。
「もう! 誰だよ!! ……って、お前かぁ」
「よっ! 久しぶりだなカルターナ。2か月ぶりぐらいか?」
「いや、1か月と23日ぶりだよ。久しぶり。元気にしてた?」
「あぁ元気元気。ばり元気。ここに来る途中に、フェルンとニゥイルに会いにいったんだけど、あいつらも相変わらずばり元気だったぜ。それよりもお前は元気なのか?2か月前、本を読みまくるって言ってからずっと引きこもってたじゃんないか」
「あぁ、元気だよ。知識を得るのと同時に、筋トレやストレッチを欠かさずやってたからね」
「そうか。ならよかった。引きこもってたってことは、お前、あの作戦のこと知らないだろ?」
「あの作戦? 一体何のことだい?」
「それはな、国王一家捕縛作戦のことだ」
「!! ついにやるのか。動き出すのか」
ついに革命軍が動き始めたか……いよいよだな。
この国は、何年月日が経っても変わることはなかった。相も変わらず増税を繰り返し、裕福な生活を続ける上流階級ども。我がままばかりを言い続け、国を混乱に貶めている王妃。王妃の意見に、ただ首を縦に振るだけの国王。
そんな政治情勢を打開すべく、僕達革命軍は、こつこつと力を蓄えていった。こちらの攻撃に対応する暇をも与えない起死回生の一撃を放つために。必死に耐えて耐えて耐え忍んだ。
物価の価格は依然高騰し続け、諸外国の魔の手も忍び寄ってくるようになったこの国を革えるには、この手ですべてを変える必要がある。
「作戦の内容は?」
「まず、宮殿に攻める組8000人と、本部を守る組2000人に分かれる。俺達は後者の本部を守る組だ。んで、あとの詳しいことは現地で話すらしい」
「なるほど。了解した。それで、決行日はいつなんだ?」
「あぁ。決行日は、1週間後の8月10日。朝の6時に、宮殿組は国王のいるサルサ宮殿前の大聖堂に、守備組は本部に朝5時半に集合だそうだ」
サルサ宮殿。それは、カルガラから少しばかり離れた場所にある宮殿だ。国王一家は、2年前に市民によってそこに強制連行されて以来、市民に監視されながら暮らしている。
1度逃げ出そうと試みたようだがあえなく捕まり、辛うじて一定数あった市民からの信頼は、完全に失墜した。
「了解だ。それまでに、戦いの準備をしないとだな。ヴィームも一緒にするか?」
「そうだな。せっかくだから一緒にするか」
「よし来た!! それじゃ今すぐ始めよう」
「応よ!!」
まぶしい太陽を背中に浴びながら特訓に励んでいく。1週間後の決戦に備え、僕達は僕達を磨いていった。
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