第35話 合流
監獄襲撃作戦後からの日々で、私は、黄金血殻について調べまくった。それによって、なんとかわかったことが1つある。
それは、黄金の靄を1か所に一極集中すると、集中させた部分の能力が、通常の5倍から10倍にまで膨れ上がることがわかった。
例えば、黄金の靄を拳に集めると、岩程度なら簡単に壊すことができるようになる。
また、目に集中させると、視力がとてつもなく上昇する。
「ふぅぅぅぅぅ……」
今、私の目の前には、蒼く光り輝く世界が広がっている。
あの時から私は未来を視る時間を延ばすため、隙間時間があれば、ただひたすらに未来視の練習をした。
すると、少しずつだが成果が出始め、現在では10秒先の未来まで視ることができるようになった。私は、未来を視るというこの行為を、
私は、奴が突進しながらレイピアを前に出し、私の心臓をピンポイントで刺してくる景色が視えた。
視えた時点で時読を解除する。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
時読通り、やつはレイピアを前に突き出しながら突進してきた。
私は、レイピアが体に触れる直前に横へと体を移動させる。
しかし、やつは時読にはない予想外の行動をしてきた。なんと、私が避けた瞬間にレイピアの進行方向を急旋回してきたのだ。
あまりにも速い行動に、理解と行動が間に合わなかった私は、左脇腹に攻撃を食らってしまった。攻撃をされた場所には小さな穴が空き、血が流れ出ていく。
「ぬぅあにぃぃぃぃぃ!!!!!」
一体こいつはどんな手品を使ってきたんだ。まさか、こいつも未来が視えて……。
レイピアを振り払って血を飛ばすと、やつはゆっくりと話し出す。
「我輩わねぇ。生まれたころから常人を超えた異次元の反射神経を持っているのだよ。棒が手の領域に入る前に手を握ったせいで勝負に負けたことだってあるし、人に殴られた瞬間に、コンマ単位で殴り返したことだってあった。
最近は年を取ったせいか、能力が衰えてきてはいる。それでも、常人よりもはるかに優れた反射神経を持っている。それが我輩だ。あなたがどんな手を使って攻撃を避けてきたとしても無駄です」
な、なんということだ。私はこいつには勝てない。あまりにも相性が悪い。今の私では、攻撃方法を瞬時に変えてくるこいつには勝つことができない!! 一体どうすれば……。
その時、通路の方から男性の声が聞こえてきた。最初は盗賊だと思ったが、数秒後には答えが導き出された。
「おぉいフェルン!!! 助太刀に来たぜぇぇ!!!」
「ヴィ、ヴィーム!! 無事だったのね!!」
「応とも!! 2,000人以上の盗賊と幹部1名、生き埋めにしてきたぜ!!」
やった!! ヴィームが来てくれた!! 彼とならこいつを倒すことができる!!
「ヴィーム、早速だけど助太刀よろしく!!」
「りょーかい!!」
私とヴィームは、やつの前に並んで立つ。
「ふむ。そう来ました。いいでしょう。どこからでもかかってきなさい」
「んじゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。フェルン、援護頼む」
「わかった」
私が小さくうなずくと、ヴィームはイノシシのように走っていく。私は、左手で水晶玉に触れて彼への援護の準備をする。
「実に勇ましいな。少年よ」
「そいつはどうっも!!!」
剣と剣がぶつかり、戦いのゴングが辺りに響き渡る。それと同時に、私は時読を発動させる。
「右斜め上から薙ぎ払いがくる!!」
2秒後、やつは私が言ったことをする。だけど、おそらくまた……。
その言葉を聞いたヴィームは、レイピアを叩き落としにいく。だがしかし、やつは剣がぶつかる直前にレイピアの進行方向を右に変えてきた。
「どんなことをしようと、我輩には無に等しい!!」
ヴィームの胴体に、強烈なる突が襲い掛かってくる。
マズい。このままだと、私の二の舞になってしまう!! それだけは防がなくては!!
近くにあった石を、やつ目掛けてぶん投げようとした時、ヴィームが目を疑うような行動をした。
なんと、剣を右斜め上に振り上げるのと同時に、右足でやつの腹を蹴り抜く。
「ドフォラァァァァァァァ!!」
あいつは、部屋の壁端まで吹き飛んでいく。
「おん前、反射神経が化け物だな。直前で攻撃の向きを変えてきやがった。マジでビビったぜぇ」
君も、たいがいやばいことしていたけどな。剣を振り上げながら片足を地面から離すって……一体どうやったらそんなことができるんだよ。
でも、やつの異次元の反射神経を封じることには成功した!! あとは順当に倒していくだけだ!!
「まさか、この我輩の速度についてくるものがいたとは……これは、本腰を入れなければならないようですね」
そう言いながら、ゆっくりとやつが起き上がった時だった。
ジャラバキャァァァァァンンン!!!!!
突然、天井に1つの穴ができた。支保や土が大量に落下し、とてつもない砂埃を引き起こす。
「ゲフォ!! ゲフォ!! ガフォ!! 一体誰?!」
砂埃が落ち着き、視界がクリーンになっていくと、穴のすぐ下には全身から血を流している男がいた。
「デレスカフ!! 無事だったのか?!!」
「当たり前よ!! ぜぇ……ぜぇ……1度は埋まられやしたが、穴を掘って脱出してきたぜ」
こいつ、なんてやつだ。もしそれが本当なのだとしたら、生命力や体力が人間のそれを超えているぞ!!
「元気ならよかった。まだいけるか?」
「あぁ……いける……ぜ……はぁ……はぁ……」
2対2のダブルスになってしまった。あいつらを倒すことはできるだろう。確信を持って言える。
だがしかし、部屋が持つだろうか。今だって、空いた穴を中心にどんどんと支保に亀裂が入っていく。そう長くは持たないだろう。
私は、隣にいるヴィームに、小さな声で話しかける。
「ヴィーム、おそらくこの部屋はじきに崩壊する。そうなった場合、私は真っ先に水晶玉を抱えて逃げ出す。時読で援護はするけど、直接的な戦闘はすべて任せてもいいかしら?」
「あぁ、いいぜぇ」
ヴィームはこくりとうなずく。私も、うなずき返す。
「それでは行きますよ、デレスカフ」
「あぁ、いつでも……いいぜ……」
次の瞬間、天井に空いた穴を中心に部屋の崩落が始まった。
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