第27話 アジトに突入

 12月24日、昼1時。僕達は、アジトへの入り口があると思われる場所に来ていた。

 現在僕達は、茂みに身を隠している。


「なぁカルターナ。入り口は一体どこにあるんだ? それらしいところがどこにもないんだが」


「僕が知りたいぐらいだよ。一体どこに隠しているんだ……」


 今僕達は、アジトの入り口が見つからないことに、焦りを覚えていた。情報が確かなら、この辺りに横穴があるはずなのに全く見当たらない。

 一体、どんな手品を使えばこんな芸当ができるってんだよ! それに加えて、草や木とかがたくさん生えているせいで、余計に見ずらい。視界は最悪だ。

 さすが、アジトに選んだ場所なだけある。と、言った方がよいだろう。悔しいけどな。


 目を凝らして周辺を見ていると、ヴィームが突然大きな声を出した。


「な、なぁ! あれ、入り口じゃないか?!」


「しー……音量下げてくれ。頼むから。それで、場所はどこなんだ?」


「あ、あぁ。あそこを見てくれ」


 するとヴィームは、10メートルほど先にある、背丈の高い草が立ち並んでいる場所を指差した。

 僕達は一斉に視線をそちらに集中させる。だけど、そこには特に何かあるわけではなく、というか何もなかった。


「何もないじゃないか、ヴィーム。焦りすぎて、つい口から出まかせ言っちまったかぁ?」


「いやいや本当だって。ほら、あの草々を見てくれ。背丈の多い草が密集しているところだ」


 ヴィームが指さした方向に再び視線を向けると、確かにそこには背丈の高い草が密集していた。

 でも、別に「いかにも怪しいぞ、ここ!!」っていうようなところじゃんない。同じような光景なら、この山の中ではそこら中で見ることができるからな。


「やっぱり、何もないじゃんない……!!!」


 いや、ちょっと待て。今、あの草々が、風に当たって動いたぞ! ただ動いたんじゃんない。あの草々は、!! 通常の草花ではありえない動きだ!!


「見えたか? あの草々、やけに背丈がきれいに整ってるなぁって思ったんだ。だから注視してたんだが、今、再び風が吹いたことで確信した。あれは、保護色に染められた布の壁だ! 布をくぐった先にアジトの入り口がある!!」


 ヴィームの言っていることは本当だ。僕も確信を持って同意する。


「アジトへの入り口は無事に見つけることができたわね。それじゃ早速作戦に移りましょう。ヴィーム、準備オーケー?」


「いいぜ。いつでも行ける」


「わかった。それでは、作戦開始!!」



 茂みから出た僕達は、二方向にわかれて移動することとなった。ヴィームは正面入り口から、僕とフェルンとニュイルさんは非常口からだ。


 非常口の場所は、だいたい検討がついている。だから、迷う必要はない。


 僕を先頭に、茂みの中をずんずんと進んでいく。進んでいくと、少々開けた場所に出てきた。この辺りの草は、周辺の草に比べて全体的に背丈が低いものが多い。

 外からはかなり見えづらいし、知っているものは、すぐに見つけることができる。ものを隠すにはうってつけの場所だ。


 顔を地面に近づけると、足元に布らしきものが被さってあるのを発見した。


 その布を取り去ってみると、そこには、とてつもなく急な傾斜の階段があった。階段は、下方向に見えなくなるまで繋がっている。


「見つけた……行くよ、2人とも」


「「了解」」



 下に降りていくと、やがて1本の通路に出た。そこは、松明以外の光がなく、土が落ちてくるのを防ぐための、支保が永遠と続いているだけだった。

 僕達は、慎重にかつ迅速に歩を進めていく。話し声は一切立てず、聞こえるのは土を踏みしめる足音だけであった。


 しばらくすると、開けた空間に出てきた。広さは決して広いものではないが、机と椅子が複数個置いてあり、部屋の中間部分と思われる場所には木の門があった。

 門の中央辺りには、向こう側に行くための扉があるが、鍵がかかっていて開くことができない。


「鍵は一体どこだ」


 それに気づいた僕達は、探せる範囲はくまなく探し回った。だが、支保の裏や机の細部まで探しても、どこにも鍵らしきものは見つからなかった。

 本当にどこを探しても見つからない。もう手が土まみれだ。爪の間に土が入って変な感覚がする。皆も同じような感じだった。一体鍵はどこにあるっていうんだよ。


 まったくもって見つからず、頭を抱えていると、扉の向こうから話し声が響いてきた。その瞬間、全員部屋の端っこに移動し、息を殺して会話の内容を盗聴する。


「いいよなぁあいつら。下で宴してよぉ。俺らなんかアジトの見回りだぜぇ? ちきしょぉぉ」


「まぁまぁ落ち着けって。どうせ宴は日付が変わるまでやるんだから。そう焦らなくてもいいだろう」


「まぁ。そうなんだけどさぁぁ。やっぱり最初から参加したいじゃん?」


「まぁ、そうだよなぁ」


 そんな会話が十数秒ほど続いた時だった。突然、別の方向から大声とともに、足をドタバタとさせる音が聞こえてきた。


「おいそこの2人!! 緊急事態だ!!」


「おいおいどうしたよぉ。そんなに息を切らして。まさか、宴が終わったとか言うんじゃないだろうなぁ?」


「そんなわけないだろう!! いいか、よぉく聞け。何者かがここを襲撃しに来た!! しかも1人でだ!!」


「な、なんだと!! 本当に敵は1人なのか?!」


「あぁ、1人だ。すでに何十人もの死傷者が出ている。お前らは応援に向かってくれ。俺はお頭に報告しに行ってくる」


「了解だ。行くぞ!!」


「おう!!」


 3つの足音は、それぞれ2方向に散っていった。これを聞いた僕達は、再び扉の前に集まる。


「どうやらヴィームのやつ、うまくいってるみたいだな」


「みたいね。私たちも早くしなくっちゃ」


「ですね。でも、鍵はどうするんですか? このままでは先に進むことができません」


「なぁに。鍵がないなら錠を壊せばいいだけじゃんないか。できるだけ隠密に行きたかったけど、仕方ない」


 僕は、腰から短剣を抜くと、錠目掛けて3連撃をかます。錠があった場所には手がちょうど入るぐらいの三角形ができた。


 そこに手をかけ、扉を強引に開けると、目の前には2つにわかれた通路が出てきた。左の通路は下に、右の通路は上に続いていた。


「行くよ、皆!!」


「了解!!」


 僕達は、大急ぎで左の通路を駆け下りていった。

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