第22話 三つ目の仕掛け
一体どうすれば……。
外から入ってくる冷たい風が、僕の体を包み込む。そこに温風が入ってくる隙間はなかった。
頭をフルフル回転させても、この状態で出てくる解答といえば、わかりきったものばかりだ。
とにかく……挑戦だ!!
「……やってみる」
僕は、ゆっくりと前に進む。
この中で一番可能性があるのは僕だ。一番背が高いからな。だがどうする。このまま凸るか? ……いや、このまま行こう。今回の場合、無策で挑んだ方がいいと、僕の勘が言っている。
このまま行こう。自分を信じるんだ。信念を信じるんだ!
2足歩行で立てる限界値に着いた僕は、右手で机を押さえて手を伸ばしていく。押さえるといっても、添える程度である。
あと……もう少し……あと……もう少しなんだ……。
5センチ……4センチ……3センチ……2センチ……1センチ……来た!! 物体に触れた!! このまま……このままぁ……。
一瞬の出来心だった。もう一歩ぐらいいいだろう。そういう慢心だった。
右足が、ドガラァァァンと落ちていく床の一部とともに空へ出る。
「カ、カルターナァァ!!」
ヴィームが右手を差し伸べてくれた。だがしかし、僕はあえてその手を取らなかった。
このまま取ってしまうと、ヴィームも被害を被ることになる。もし、ヴィームがそうならなかったとしても、3つ目の仕掛けは一生解くことができなくなってしまう。
僕は、机を押さえていた右手で全体重を支え、左手で物体を押し上げにいく。
「ツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!」
これまで感じたことのないような激痛が、右手を震源地として全身にほとばしる。
マジで痛い。まるで大型動物の全体重が右手にのしかかっている感覚だ! 今すぐにでも絶叫したい! でも、そんなみっともない真似はしたくない!
こらえるんだ!! 例え骨が肉の壁を通過してきても、僕はこの任務を遂行する!! やるんだぁぁぁ!!!
「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ガッシャラリィィィィィィィンン!!!!!!!!!
や、やった! 成功した! 押し上げることに成功したぁ!!
上では、机があった付近が皓々と光っている。どうやら仕掛けを解くのには成功したようだ。あとは……僕だなぁ……。
絶賛自由落下を続けている僕は、あと数秒で地面に着陸するだろう。下は尖がった瓦礫だらけ。中には鋭利な木だってある。非常ぉぉぉにマズイ。
人間、たかが数メートルぐらいの高さから落下しても死にやしない。だが、今の状態だと、死ぬだろう。崩壊したせいで、周りには引っかかれるような壁がない。
だがしかし、大丈夫だ!!
「ッッッッッラァァァ!!!」
僕は、机を足場にして横方向に慣性の向きを変える。このまま行くと、建物の1階に突撃することになる。
しかし、体が大変なことになってしまう。地面から20度ほど頭が浮いているとはいえ、建物内の壁、もしくはモノに当たることで首が折れるだろう。
そこで鞄だ。ショルダーテープを鞭のように使い、壁に打ち付けて体を廊下に対して垂直にする。
これで着地する!!
建物内に突入した。今だ!!
「のりゃさぁぁぁ!!」
ビタァァァンン!!! と、左手で鞄を壁に打ち付けると、予定通り、体が廊下に対して垂直になる。
そのまま無事に着地。ゴロゴロゴロォォォ!! と、転がっていくと広い部屋の真ん中で停止した。
「ふぅぅぅ……なんとかなったかぁ……」
とはいっても、体はボロボロだし、右手はぐちゃぐちゃで重症だ。なんとかしないとな。
両足と左手を使ってなんとか立ち上がると、奥の方からドタバタ走りの2人がやってきた。
「死んじゃいねぇようだな。安心したぜ」
「ねぇねぇねぇねぇ大丈夫なの?! ねぇ大丈夫なの?! 生きてるよねぇ? 死んでないよねぇ?!」
「大丈夫だよ大丈夫。心配してくれてありがとな」
その時だった。突然、3方向から光の筋が集まってきた。やがてそれは、僕達の近くの床に結集し、1つの光る正方形を作り出した。
正方形は、徐々に光を失っていき、完全に消えると、そこには地下に通じてそうな入り口が現れた。
おそらく武器庫への道なのだろう。それしか考えられない。進もう。進むしかない!!
扉を開けてみると、予想通り階段が続いており、途中にはなぜか等間隔に松明が置かれてあった。
慎重に降りていくと、目の前に巨大な石の扉が現れた。扉の中央にはどデカい1本の線が引かれてあるだけで、鍵とか錠とか、そういう類のものが一切なかった。
「おいおいおいおい……どうゆうことだよこりゃぁ。開ける方法が一切ないじゃないか!!」
「確かに……一体どこに開ける方法が……!! こ、これは!!」
僕は、扉の右の壁を見て驚愕した。その壁の下半部のところに、丸が上、長方形が下にくっついたような形をしたうっすい線があったのだ。
今までの仕掛けと酷似していたそれは、紛れもないある事実を……僕達の中に駆け巡らせた。
「「「鍵は……もう1つ必要だったのか……!!」」」
「4つ目って……一体どこにあるの?!」
「それは俺が聞きたいぐらいだよぉ!」
なんてこったぁ。この4つ目の鍵は、3つの仕掛けを解かなければ知ることができないような仕組みになっているのだろう。事前情報に4つ目がないのはある意味当然。
だとどうする。4つ目の鍵はどこだ。建物内はあらかた探したから、これ以上はおそらく見つからないだろう。労力の無駄だ。
そうなると、残る選択肢は1つ。それは……外にいる数100人の中から、鍵を持っている人を探し当てることだ。
この手はあまりにも無謀に近い所業だ。林の中から特定の枝を探し当てるようなものだ。
最後の最後まで、その手段はとりたくない。なんとかして探し出さなければ。
「2人とも! もう一度建物内を捜索してみよう! ダメもとでやってみるんだ!!」
「「あぁ、わかった!!」」
4つ目の鍵の存在を知った僕達は、再び建物内をくまなく捜索し始めていった。
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