第15話 監獄襲撃作戦開始
7月14日。午前5時25分。僕達はハイブト監獄前に集まっていた。
突撃まで残り五分。さすがに緊張する。心臓がバックバクだ。
「ふぅぅぅ……」
今回の目的は、監獄にある武器の回収と同志の救出だ。一部屋一部屋見ないといけないと考えるとなかなかの仕事量だ。
そして、監獄組とは別に廃兵舎組がいる。廃兵舎組の目的は、武器の回収のみだ。そちらの組には、ミューマさんがいるらしい。
一方で僕達は監獄組にいる。副団長も一緒だ。団長は本部防衛任務についている。副団長が不気味な笑顔で教えてくれた。
そして、このハイブト監獄は、幅三メートルの堀と約八メートル七十センチの塀に囲まれた国内最大規模の監獄だ。中の建物は三階建てで、一階いっかいがとんでもなく広いらしい。中に入るには、表と裏に一つずつある吊り橋を渡る必要がある。表は僕、ヴィーム、副団長が。裏はフェルンが担当することになった。表で大多数を引き付けた後、裏の人達が主に任務を遂行するしていく手はずだ。
現在、仲間である二人の男性が、壁をよじ登って侵入している。さっき壁を登り終えたところが見えたからもう少しだ。
僕は、腰につけた刺突攻撃重視型の短剣を握りしめる。体内時計が、カチコチと世界の流れを進めていく。
ドクンドクンドクンドクンドクン
ちょうど五分が経った時、目の前の吊り橋がものすごい勢いで架かった。轟音と同時に号令が聞こてきた。
「突撃だぁぁぁぁぁ!!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」」」
勇ましい雄叫びと同時に、僕達はどんどん中へとなだれ込んでいく。壁を潜り抜けてまず最初に目に入ったのは、ばかでかい建物だった。わかっちゃいたが、ものすごくでかい。豪邸を二百個集めたぐらいの大きさだ。
ほどなくして、建物から兵士が百人ちょい現れた。見事なまでのフル装備だ。数では圧倒的に優位だが、質の面では圧倒的に不利だ。防具もよくて革の装備である。でも、まぁなんとかなるだろう。
そう思った瞬間だった。突然、建物の屋上から不思議な言葉が聞こえてきた。
「……プリント('フレイム')!!!」
「なっ!!」
僕は目を疑った。なんと、空から無数の炎の玉が飛んできたのだ。大きさはサッカーボールほどで、大して大きくはなかった。だが、僕にとっては太陽が空から落ちてくるのとそう変わりはなかった。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
着弾した。そこら中から悲鳴が聞こえる。そういえば昔、叔母から昔話として聞いたことがある。昔、ネゾントという者が魔法言語なるものを創り、街を脅かしていた悪魔を撃退した。というものだ。
真偽は不明だが、昔話の通りならば、あれは魔法言語だ。最後の言葉を聞くに、プリントという言葉が発射の合図らしい。これはマズイ。極上のマズだ。頭上から一方的に攻撃されるなんてのは最悪のパティーンだ。幸い、再発射までに何分か間が空く。この隙に中へと入るんだ!
「行くぞヴィーム!!」
「応よ!!」
僕達は全速力で入口まで走る。向かい風が吹いているが、そんなことは気にしない。
監獄の入り口が見えてきた!! 残り二メートル! 一メートル! 来た!!
門をくぐる直前だった。目に移りこんできた光景は、監獄の中の景色ではなく、首が跳ねる自分の姿だった。
体が反射的に動いた。腰の短剣を首元に移動させると、耳元で轟音が鳴り響いた。
「ふぅぅぅ!!!」
「ほう。今のを防ぐか……本能というものだな」
「離れやがれこんちきしょうめがぁ!」
僕は、短剣を思いっきり振ってなんとかその男から距離をとる。
「大丈夫か! カルターナ!」
「あぁ大丈夫だ。一瞬、死のビジョンが見えたがな」
こいつはただもんじゃないぜ。全長七十センチ弱の剣を、可憐に舞う蝶のように振り回していやがる。髪は緑、目は焦げ茶色、身長は百六十九センチといったところか。
大岩のように門の前に立ちふさがっているなぁ。鬼門だぜぇこいつは。
「おいおっさん。そこどいてくんない?」
「そういうわけにもいかん。これでも監獄長なのだよ、私は」
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