第14話 決意を固めて
シャリムさんの家は、ただ轟々と鳴り燃えていた。家の一部は辺りに飛び散り、家の柱が次々と折れて倒れていく。
「あぁ……あぁ……私達の家……が……」
「お母さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
叫換地獄だ。この王妃は大糞だ。なんつぅことをしやがったんだ! 何もかもが無くなったぞ!
「ゲベラゲベラゲベラァァ!! う~ん、実によい光景ですわぁ。壮観と呼ぶにふさわしい」
今すぐにこいつを殴ってやりたい。顔面をタコ殴りにしてやりたい。だが、できない。今そんなことをしたら、さらなる大惨事へと繋がってしまう。ここはこらえるんだ。
僕は、拳を極限まで握りしめた。
「ゲベラゲベラァ……ふぅ。疲れたわ。今日のところはもう帰……ん?」
王妃が馬の向きを変えている途中、僕の目の前で突然止まった。
「そなたの銀のブレスレット……どこかで見たことがあるぞ? その二点の錆……どこかで……」
どうやら僕のブレスレットについて言っているようだ。確かに、僕のブレスレットには不規則に丸い小さな錆が二つある。叔母が言うには、代々家に伝わってきている物らしい。でも、なんで王妃なんかがこのブレスレットに見覚えがあるんだ? 一体、このブレスレットにどんな秘密があるって言うんだ。
「……まあいいですわ。考える時間が勿体ないですもの。行きますわよ」
「「「はーい」」」
そうして国王一家は、嵐のように去っていった。現場を大いに破壊していきながら……。
僕はしばらくその場から動くことが出来なかった。ただ、何もない空を眺めているだけであった。
そんな状態でいると、後ろから瓦礫を片付ける音が聞こえてきた。振り返ってみると、シャリムさんとウリンがせっせと手を動かしていた。
何もしていない、することが出来なかった自分を責めながら、僕はシャリムさんのところへ向かう。
「あ、あの! お手伝いします」
「ありがとうございます」
シャリムさんの目の奥は、キレキラと輝いていた。まるで、太陽に向かって激走するライオンのようである。
しばらくの間、黙々と作業を続けていると、シャリムさんがゆっくりと口を開いた。
「カルターナさん。私ね。人間は死にたいと叫ぶ時、心の中では生きたいと叫んでいると思うんです。私がそうでした。数年前、夫の死体を見つけた時、死のうかと思いました。でも同時に、子供のために生きたいとも思いました。不思議ですよね。だから、人間はこんなにも長く生きることができているのだと思います。そう考えていると、家がなくなったぐらいでは凹まなくなるんですよ。次第に、どんな環境でも立ち直ってみせる! って思うようになっていくんです。……つまりですね。私は大丈夫です。あなたが凹むことはないんです。前に進んでいってください!」
「……ありがとう……ございます」
僕は、一言しか……この一言しか……言うことが出来なかった。僕は、あまりにも無力だ。敵を目の前にして……あの惨状を見て……何もすることが出来なかった……あまつさえ慰められてしまった……心が……はち切れそうだ……。
僕は唇を、血が流れ出るまで噛み締めた。痛みなんて感じない。僕は、この日を忘れない。絶対に忘れない……変えてやる……革えてやる! 腐りきったこの国を!!
革命の……
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