ハイブト監獄襲撃編
第12話 団長、ここにありけり
7月3日の朝。僕達は迷奇森林でいつものように談笑をしていると、茂みの奥からフェルンが静かな目をしてやってきた。
「フェルン……」
「私……革命軍に入るわ。昨日決めたの。絶対にやつらを許さないって」
「そうか……わかった。それじゃん早速行こうか。革命軍本部へ」
坑道を進んだ先にある広々として部屋に着くと、そこには副団長ともう一人、初見の人がいた。
「こんにちは」
「あら、カルターナとヴィームじゃない。早かったわね。その子が新しい子?」
「は、初めまして。黄金の鏡で占い師をやっている、フェルン・エクセルスと言います。よろしくお願いします」
「あら、よろしくね」
フェルンが自己紹介をした時だった。机に座って必死に書類を片付けている男性が、体の動きを止めた。が、その瞬間を見逃さなかった副団長が、男性の頭を引っ叩く。
「こら! 手の動きを止めるんじゃない!!」
「ご、ごめんってぇぇ」
「あ、あの。その方は一体誰ですか?」
「あぁ言ってなかったわね。この人の名はティール・フォレスティア。革命軍の団長よ」
「えええ!!」
これは驚いた。この人が団長かぁ。……団長か? えらくこき使われているが……。
「あのぉ大丈夫ですか? 団長は」
「あぁ大丈夫よ。前回あなたが来た時、団長はなかなか帰ってこないって言ったじゃない? 日頃から私が代わりにやっている仕事をしてもらっているだけだから、何も問題はないわ。ねぇ、団長?」
「イ、イエースゥ」
ありゃまぁ。こりゃ完全に副団長の言いなりだ。見ているとだんだんとかわいそうに思えてきた。
憐みの目で見ていると、団長が僕達に話しかけてきた。
「よう、お前らぁ。会うのは初めてらしいな。俺はこの軍の団長をしているティール・フォレスティアっていうもんだ。よろしくな」
「「「よ、よろしくお願いします」」」
なんてパワフル漲る人なのだろう。まるで太陽と話しているかのようだ。
「ところでお前らぁ、十四日のこと聞いたかぁ?」
「い、いえ。まだです」
なんだろうか。一体十四日に何があるのだろうか。
「そうか。なら、俺から説明しよう。実はな、十四日にハイブト監獄へと攻めることが決定していてな。今、その前準備をしているところなんだよ」
なんだって! ハイブト監獄と言えば、この国の絶対王政の象徴だ。もともとは敵国の人を収容する監獄であった。しかし、今となっては、王国に仇なす者達を収容する監獄となってしまっている。
監獄を攻めるということは、本格的に革命を始めるということを意味する。
始まるんだ。いよいよ。
「この作戦に加わるということは、それまでの暮らしを捨てて反逆者になるということだ。それでも……行くか?」
確かにその通りだ。下手をすれば、身内が殺されかけない。たった一人の家族が、殺されるかもしれない。……でも、僕の覚悟は、すでに決まっている!
「「「行きます」」」
「そうか……わかった。では、計画は当日言い渡す。今日はもう帰宅しても構まわない。また当日に」
「あなたは、それまでに書類を片付けてください」
「イエッサー!」
僕達は、団長の言葉に従い、そのまま帰路へと着いた。
帰路の途中、僕達は次回の相談をしていた。
一番最初に口を開いたのはヴィームだった。
「なぁよぉ。今度三人で街を散策しねぇか? 親睦会も兼ねてよぉ」
「いいねぇその案。乗った」
「僕も賛成。で、いつする?」
「そうだなぁ。俺はいつでもいいぜぇ。二人はどうだ?」
「僕も基本的にはいつでも空いてるよ」
「私は……十一日が空いてるわ」
「おけい。じゃんその日に黄金の鏡前に集合な」
「「りょーかい」」
この辺りで三つに道が分かれると、それぞれ別の方向へと進んでいった。
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