第98話

 ギルドへ向かい、依頼書を受注する。受付の人から小さなツルハシを買っていけと言われたので仕方なく買ったわ。鉱物買ったおかげでスッカラカンなのに。


でも、こればかりは仕方がない。ハズレ鉱石が多いのに何故行くのかって?単純に興味本位なの。あわよくば良い鉱物採れないかな、位には思っているけれどね。


 教えてもらった通りにフルーツを一籠買って洞窟へ向かった。今回の依頼書はオレゴランの鉱物と洞窟内の薬草採取があった。暫く馬車で行き、途中からは歩いて洞窟に向かった。帰りは自力で走って帰ってこようと思っているわ。




 洞窟の前には注意書きの看板が目についた。私はライト魔法で洞窟を照らしていくのかと思ったけれど、どうやら魔石が使用されているようで洞窟内は明るかった。洞窟ってかなり広いのね。暫く道なりに歩いていると、オレゴランがいたわ。


入口付近だと植物を食べる方が多いのかしら。背中がまだら模様に緑色をしているわ。興味深いわね。試しにフルーツを一つ取り出し、口元に置いてみると、美味しそうに食べている。


「ごめんね、ちょっとだけ貰うわ」


私はそう声を掛けながら掌サイズの緑色の鉱物を採ってみた。匂いはないし、そこそこに硬い。ちょっと水晶のような形をしていて綺麗だわ。


装飾具としては使えそうね。オレゴランはフルーツをもらったお礼位にでも思ったのか怒る事は無かったわ。


 植物の生えていない場所にいるオレゴランを探している。先に進むと、川が流れていてその周辺は薬草が一面に生えていた。日の光が入らないこの場所で生える薬草はとても特殊よね。


生命力の高さが薬の効果なのかしら?


 疑問に思いながらも依頼書分の薬草を採取する。ここにもオレゴランはいて薬草を食糧としているみたい。先ほどより緑色が濃いわ。


「鉱物を少し分けてちょうだい」


 私は話し掛けながらフルーツを渡してみる。何となくだけれど、声を掛けながらするのが良いかもと思っている。野生動物も叫ぶと怖がって襲ってくるか、逃げていくの。経験上、落ち着かせるためにゆっくりと話す方法は有効なのよね。


 小さなツルハシで抱える位の塊が採れたわ。不思議な色ね。しっかりとオレゴランにお礼を言って更に奥に歩いていく。オレゴランにとっては痛くはないようだ。ちょっと安心する。


フルーツを持って落ち着かせる方法が広まれば今後採取ランクはD位まで下がるかもしれないわね。



 先ほどの薬草の生えていた場所とは打って変わって茶褐色の土に所々黒っぽいような色が付いている箇所が出てきた。地質なんて全然分からないけれど、この辺のオレゴランは土を食べているだろうから金属が採れそうよね。


 もう少し進んでみると、狭い分かれ道になっていた。上に上る道と下へ下る道。私は上に登る事にしたわ。大きなオレゴランはこの道を歩くのかしらとちょっと不安になりながら。


どうやら登り切った所で魔石の明かりは最終地点だと教えてくれている。見えづらいけれど、魔石の光が届かず暗くなっている部分は崖になっているのかしら?


 近くまで行ってみると、人ひとりが通れる程の穴があった。その先を魔法で照らしてみると奥には空間が広がっているみたい。


私はよいしょっと穴の中に入ってみた。すると、さっきまでの洞窟の雰囲気がガラリと変わって様々な鉱石が土から生えていたわ。


そして小さなオレゴランが沢山いるわ。私が出した魔法は小さな光だったけれど、何かに反射するように空間がぼんやりと明るくなっていた。


凄いわ。


 どう説明していいのか分からないけれど、神秘的で人が入り込んではいけないような、そんな場所に思えた。だからあえて魔石の最終地点はあそこまでだったのかもしれない。


私は持っていたフルーツを籠ごと取り出して沢山いるオレゴランにフルーツを小さく切って与えた。小さいといっても五十センチはあると思う。


「みんなの鉱物を少し分けて下さい」


 そう言って一匹から掌サイズの鉱物を採っていく。ニ十匹程から採れたわ。この中で良い物があるといいなぁ。


私はお礼を言って元の場所に戻る。


 ここは知る人ぞ知る場所なのよねきっと。目的は達成されたわ。後は身体強化を使って走って帰る。洞窟に入って2時間位経ったかしら。洞窟を出てからは道の脇を猛ダッシュで走り出す。


幸いな事に道を通る人に出会わず村に帰る事が出来たわ。ギルドよりも先に鉱物屋へ向かった。


「お姉さん、もう行ってきたのか?」


少し驚いたように聞いてきた。


「えぇ。ギルドでいい話を聞いたのですぐに採る事が出来たわ。鑑定してもらいたいのだけれどいいかしら?」


「どれ、見せてくれ」


 私はリュックから掘りたての鉱物を受付の台に乗せていく。男の人は一つ一つ鑑定していく。


「この緑が混じった物は全く使えない。アクセサリーにでもするんだな。深緑の鉱石は武器や防具には使えないだろうな。だが魔力は通しやすそうだ。


何かには使えるかもしれない。他の鉱物は色々な鉱石が混ざっているようだ。中々に使えそうな物もあるな。鉱石の含有率を教えるか?」


「んー聞いても分からないから遠慮しておくわ。この中で武器に向いている鉱石を教えて頂戴」


「それもそうだな。こいつとこいつとこいつ。大きな物を作るには材料が足りないだろうがその辺は鍛冶屋がなんとかしてくれるだろう。後の鉱物はまぁ、普通の武器か家庭用の包丁行きだな。鑑定代は銀3枚だ」


「有難う。助かったわ」


 私は代金を支払って鉱石を仕舞い、ギルドへ向かった。私はいつものように薬草と依頼のあった分の個物を出して受注完了させた。


他の依頼を覗いてみるけれど、Aランクの討伐以外は特に問題のありそうな討伐はないようなので宿に帰る事にしたわ。


「先生、具合はどうですか?」


「ロア、お帰り。もうすすっかり良くなったよ。明日には鉱山へ向かえる」


「良かったです。今日は一人で気になる魔獣の調査に行ってきたんですよ?オレゴランって知っています?」


「あぁ、背中に鉱物が生えている魔獣だろう?あれがどうしたんだい?」


私はリュックから鉱物を取り出した。


「王都には出回っていない代物のようです。鉱物屋の人に聞くと、配合の具合で国宝級の武器が出来るようですよ?


いくつか調査してきたのですが、食べ物によってこの緑色の結晶のようになったり、純度の高い鉱石が出来たりと物によっては価値が上がるのではと思っています。ね?面白いでしょう?」


 先生は鉱物を手にとってじっくり眺めているわ。その横で紙とペンを取り出して報告書を書いていく。私が注目しているのは薬草を食べているオレゴランなのよね。何かは分からないけれど、使えそうな気がするの。


治療魔法の魔石とか?魔獣は光魔法や聖魔法を使う事はもちろん出来ないので魔石に魔力を貯めても治療に使う事は出来ないのよね。けれど、薬草を食べて成長したこの結晶なら何か治療の役に立つのではないかと考えているわ。安直だけどね。


 持ち帰った鉱物を魔法便で送るには重さでアウトになりそうなのよね。とりあえず持っておいて報告書だけ送ればいいかしら。


鉱物の研究は誰がするのか分からないので送るとなれば時間が掛るので団長の指示を仰ぐ事にするわ。報告書を書いていく側から先生は読んでいく。


「面白い。もしかしたら魔術師棟から研究者が送られてくるかもしれない」


「鉱物はどうしますか?」


私は緑の結晶を先生に持って見せる。


「これは魔術師が来たら渡すといいかな。どうせもう少ししたら王都に帰らないといけないだろう?その時に提出すればいいよ」


「分かりました。今度王都に帰るのが楽しみです。新しい武器を作ろうかなって思っていて今からウキウキします」


「私も欲しいな。明日、私も連れて行って欲しい」


 先生もやはり良い武器は欲しいよね。報告書を団長に送った後、食事を取ってのんびり過ごす事ができたわ。



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やらかしました。。゚(゚´ω`゚)゚。

99話と98話が公開日が反対になってました。ご指摘ありがとうございます。(*´ω`*)

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